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第4章 焔の中の怪物
第8話 宣戦布告
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「きみたちに、戦争を申し込む」
スロウの発言で、街の内外に衝撃が走る。何となく予想はついていたが。どちらかと言えば、律儀に戦争を申し込んで来たことが驚きだ。しかし、そうなると気になるのが、スロウがこちらを攻撃する大義名分だ。僕達はあくまでゴーレム達の襲撃から防衛しただけ。別にこちらが向こうの領地に侵入したわけでもない。
「スロウ、説明してもらいたい。俺達はあくまで攻撃された側だ。俺達が宣戦布告をするならまだしも、何故君が俺達に?」
雪ダルマさんも同じことを考えていたようで、僕が言うより早く聞いてくれた。普通、攻撃してきた側が戦争を仕掛けるのなら、攻撃する前に宣言するのが普通。後出しで宣言をしていいのは、被害を被った側のはずだ。
「何故って?愚問だねー。きみたちはぼくの大切な兵士達を100体も破壊してくれたんだ。戦争を申し込むには十分すぎる被害でしょ?」
「ふざけないで!攻撃してきたのはそっちでしょ!?」
「誰が攻撃を仕掛けたなんて言ったのかなー?ただ街の方に移動していただけのゴーレムたちに、襲われたと勘違いして攻撃したのはそっちだよねー?」
くっ、そう来たか。確かに、あれだけのゴーレムが集団でこちらに移動しているのを見れば、街を襲いに来たと見ても不思議ではない。しかし、実際奴らは一回もこちらを攻撃しては来なかった。というのも、僕達に攻撃が届く前に全滅させたせいなんだが。ともかく、そういう理屈で来られると反論のしようがない。完全に嵌められた。
「もう異論はないよねー?じゃあ決まり。3日後、ここに攻め込むからそのつもりでよろしくー。あっ、ちなみに攻めても無駄だから。特別な結界で開戦までは誰も入れないよー。精々、がんばって守りを固めておくことだね」
それだけ言い残すと、スロウは以前のように、またどこかへ転移してしまった。
「クソッ、まんまと術中に嵌まっちまった……!」
テラナイトさんの声を皮切りに、各々の顔が暗くなる。戦争が起こることに対する不安でも、ましてそれに負けるかもしれないという不安でもない。ただ、この街を攻撃する大義名分を相手に渡してしまったこと、それが悔やまれるのだ。
「……街を出よう」
不安から何も言い出せず沈黙が続いた中、それを破ったのは雪ダルマさんだった。
「えぇ?街を出ようってあんた……」
「いいか?今回の件は俺達が原因なんだ。街を巻き込み、無駄に人を動かし……今度は俺達のせいで街が攻撃されようとしている。それなのに、これ以上この街を、ここに住む人達を戦火に晒すのは……俺にはできない」
雪ダルマさんがユノンさんの肩に両手を置き、自分に言い聞かせるように諭す。まあ、確かにそうだよな。結果的に僕達が勝手にちょっかいをかけたことになっているわけだし、それをどうこう言い訳して街に居座って、結果的に危険が及ぶなんてあってはならない。
「……はぁ、ほんと無駄に正義感強いんだから」
やれやれ、という風にユノンさんが溜め息をつく。その直後に、確かに口元に笑みを残して。
「いいわ、やってやろうじゃないの。ウチらが街を救う英雄だってこと、思い知らせてやるわ」
「ありがとう。お前もそれで良いか?」
「構わん。俺はお前に着いて行くだけだ、ダルマ」
ああ、なんか良いなぁ。ああいう信頼関係って、ゲームだけではなかなか結べるものではない。きっと、長い間一緒にやってきた仲なんだろうな。素敵なことだ。って、感傷に浸ってる場合じゃなかった!
「あの!僕達も行かせて下さい」
危なかった。もう少し遅れていたらそのまま出発されるところだった。
「それは勿論ありがたいけれど……これ以上、君達を巻き込むわけには」
「ゴーレム達を焼き払ったのは僕達の方です。それに、スロウが関わっているとなれば、僕達が出ないわけにはいきません」
スロウには借りがある。それに彼らには申し訳ないが、さっきのカンナさんの話を聞く限りでは、今このゲーム内で、スロウに最も有効なのは僕達だ。あくまで結果論だが、僕達はスロウに対抗できる装備やスキルを取り揃えている。個々の実力は大したことはなくても、4人で戦えば間違いなく、一番スロウとの相性は良い。
「……そうだな、すまない。やっぱり君達も来てくれ。そして……スロウを頼む」
雪ダルマさんから認めて貰えた……ってことで良いのかな?これは。ともかく、これで僕達も参加できる。出発は20分後にするそうだ。何でも、雪ダルマさん達は街の人達に挨拶に行くようだった。やっぱり、責任を感じているようだ。その背中はどこか暗かった。
「やはり、お主も行くんじゃな」
「ぐ、グスターヴさん!?」
思わず素っ頓狂な声が出た。背後から突然話しかけられたので振り返ると、そこにいたのはグスターヴさん。雪ダルマさん達が挨拶に行ってまだそれほど時間は経っていない。その間にこの距離を歩いてきたのか……?
「どうしてここに?」
「いや何、ただの老いぼれの勘じゃよ……」
目線を逸らしつつ、低めの声で呻くように溢す。だとしたら怖いな、その勘。要するに雪ダルマさんの挨拶を聞く前に、予測してここまで歩いて来たということだろう?流石に今時のゲームでNPCがワープするとは考えにくいし。
「して、プレアデスよ。お主はここに来て日も浅いんじゃろう?一つ、重要なことを教えておいてやろう。役立つかは分からんがの」
「是非、お願いします」
「うむ……向こうに大きな山が見えるじゃろう?」
そう言ってグスターヴさんが指し示したのは、街の南西に位置する一際大きな火山。ウルヴァーニという名前らしい。フリーディアより南側はいくつかの活火山が連なった山脈になっていて、その中で最も大きなその山の頂は、ゲーム内で最も高い場所とも噂されている。
「あの山は『封印の山獄』と言われておっての。それはそれは恐ろしい化け物が眠っているそうじゃ」
「恐ろしい化け物……」
「うむ。お主は訪れ人じゃったな?それならば、この地に伝わる神話について、話さなければならんの」
それから出発まで、僕はフリーディアに伝わる神話と、そこに出てくる魔物について大まかに聞いていた。要約すると、どうやら災害級の神話生物が、ウルヴァーニの最深部に封印されているらしく、その封印が解かれることの無いよう、常に強力な結界が張られているのだとか。
「プレア殿、そろそろ行くよ」
「うん。じゃあ……行ってきます」
「気をつけるんじゃぞ。大切な商売相手に何かあっては困るからのう」
ほっほっほ、と笑いながら、グスターヴさんの背中は街の中に消えて行った。大切な商売相手……か。それは僕にとっても同じことだ。そして僕達プレイヤーとは違い、NPCは死んだら蘇らない。何度死に戻っても、この街には指一本触れさせない。それが、戦争を呼び込んだ僕達の果たすべき責務だから。
「お待たせしました。行きましょう」
そうして僕達はフリーディアに背を向けて歩き始めた。絶対に誰も傷つけさせない。そう胸に誓いながら。
【桜花壊塵撃】消費MP:200 クールタイム:3時間
無数の桜の花弁と蒼粒石を飛ばし、触れた全てを斬撃と爆発で連続攻撃する。奔流は使用者の半径30m以内であれば自由に操作できるが、その分消滅が早まる。
プレアデス Lv.31
種族:ホムンクルス/職業:宝石技師Lv.21
HP:500→550(+250)
MP:170(+360)
STR:50→75(+50)
VIT:40→50(+50)
AGI:0(+30)
INT:50(+120)
RES:0
DEX:30
LUK:30
SP:35→0
頭…なし
胸…バトラースーツ
右手…噴炎する恐牙の戦槌
左手…-
脚…バトラートラウザーズ
足…執事の革靴
特殊…蒼穹のタリスマン
特殊…レイジ・オブ・イフリート
特殊…空間機動ベルト
所持金:23700G
満腹度:90%
装備効果:物質特効(200%) 《出血》付与(高) 【吸血】攻撃(低) 付加(火炎) 《火傷》付与(高) HP回復(5/秒) MP回復(1/秒) 《火傷》耐性
称号:《試行錯誤》《伝説を導く者》《読書好き》《宝石採集者》《伝説を錬成する者》《岩砕き》《破壊者》《無慈悲なる一撃》《石工職人見習い》《木工職人の一番弟子》《宝石技師》《禁忌の扉》《炎纏いし者》《運命の赤い糸》
生産スキルセット(7/12)
【統合強化】【金属探知】【分解】【精錬】【拡大鏡】【簡易調整】【宝石融合】
戦闘スキルセット(7/12)(装備中)
【硬化】【宝石片弾】【ジェットファング】【付加:陽炎柱】【脆弱化】【ジェノサイド】【精霊喚起】
チェインスキル:【連鎖爆破】【バーストスマッシュ】【桜花壊塵撃】
スロウの発言で、街の内外に衝撃が走る。何となく予想はついていたが。どちらかと言えば、律儀に戦争を申し込んで来たことが驚きだ。しかし、そうなると気になるのが、スロウがこちらを攻撃する大義名分だ。僕達はあくまでゴーレム達の襲撃から防衛しただけ。別にこちらが向こうの領地に侵入したわけでもない。
「スロウ、説明してもらいたい。俺達はあくまで攻撃された側だ。俺達が宣戦布告をするならまだしも、何故君が俺達に?」
雪ダルマさんも同じことを考えていたようで、僕が言うより早く聞いてくれた。普通、攻撃してきた側が戦争を仕掛けるのなら、攻撃する前に宣言するのが普通。後出しで宣言をしていいのは、被害を被った側のはずだ。
「何故って?愚問だねー。きみたちはぼくの大切な兵士達を100体も破壊してくれたんだ。戦争を申し込むには十分すぎる被害でしょ?」
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「誰が攻撃を仕掛けたなんて言ったのかなー?ただ街の方に移動していただけのゴーレムたちに、襲われたと勘違いして攻撃したのはそっちだよねー?」
くっ、そう来たか。確かに、あれだけのゴーレムが集団でこちらに移動しているのを見れば、街を襲いに来たと見ても不思議ではない。しかし、実際奴らは一回もこちらを攻撃しては来なかった。というのも、僕達に攻撃が届く前に全滅させたせいなんだが。ともかく、そういう理屈で来られると反論のしようがない。完全に嵌められた。
「もう異論はないよねー?じゃあ決まり。3日後、ここに攻め込むからそのつもりでよろしくー。あっ、ちなみに攻めても無駄だから。特別な結界で開戦までは誰も入れないよー。精々、がんばって守りを固めておくことだね」
それだけ言い残すと、スロウは以前のように、またどこかへ転移してしまった。
「クソッ、まんまと術中に嵌まっちまった……!」
テラナイトさんの声を皮切りに、各々の顔が暗くなる。戦争が起こることに対する不安でも、ましてそれに負けるかもしれないという不安でもない。ただ、この街を攻撃する大義名分を相手に渡してしまったこと、それが悔やまれるのだ。
「……街を出よう」
不安から何も言い出せず沈黙が続いた中、それを破ったのは雪ダルマさんだった。
「えぇ?街を出ようってあんた……」
「いいか?今回の件は俺達が原因なんだ。街を巻き込み、無駄に人を動かし……今度は俺達のせいで街が攻撃されようとしている。それなのに、これ以上この街を、ここに住む人達を戦火に晒すのは……俺にはできない」
雪ダルマさんがユノンさんの肩に両手を置き、自分に言い聞かせるように諭す。まあ、確かにそうだよな。結果的に僕達が勝手にちょっかいをかけたことになっているわけだし、それをどうこう言い訳して街に居座って、結果的に危険が及ぶなんてあってはならない。
「……はぁ、ほんと無駄に正義感強いんだから」
やれやれ、という風にユノンさんが溜め息をつく。その直後に、確かに口元に笑みを残して。
「いいわ、やってやろうじゃないの。ウチらが街を救う英雄だってこと、思い知らせてやるわ」
「ありがとう。お前もそれで良いか?」
「構わん。俺はお前に着いて行くだけだ、ダルマ」
ああ、なんか良いなぁ。ああいう信頼関係って、ゲームだけではなかなか結べるものではない。きっと、長い間一緒にやってきた仲なんだろうな。素敵なことだ。って、感傷に浸ってる場合じゃなかった!
「あの!僕達も行かせて下さい」
危なかった。もう少し遅れていたらそのまま出発されるところだった。
「それは勿論ありがたいけれど……これ以上、君達を巻き込むわけには」
「ゴーレム達を焼き払ったのは僕達の方です。それに、スロウが関わっているとなれば、僕達が出ないわけにはいきません」
スロウには借りがある。それに彼らには申し訳ないが、さっきのカンナさんの話を聞く限りでは、今このゲーム内で、スロウに最も有効なのは僕達だ。あくまで結果論だが、僕達はスロウに対抗できる装備やスキルを取り揃えている。個々の実力は大したことはなくても、4人で戦えば間違いなく、一番スロウとの相性は良い。
「……そうだな、すまない。やっぱり君達も来てくれ。そして……スロウを頼む」
雪ダルマさんから認めて貰えた……ってことで良いのかな?これは。ともかく、これで僕達も参加できる。出発は20分後にするそうだ。何でも、雪ダルマさん達は街の人達に挨拶に行くようだった。やっぱり、責任を感じているようだ。その背中はどこか暗かった。
「やはり、お主も行くんじゃな」
「ぐ、グスターヴさん!?」
思わず素っ頓狂な声が出た。背後から突然話しかけられたので振り返ると、そこにいたのはグスターヴさん。雪ダルマさん達が挨拶に行ってまだそれほど時間は経っていない。その間にこの距離を歩いてきたのか……?
「どうしてここに?」
「いや何、ただの老いぼれの勘じゃよ……」
目線を逸らしつつ、低めの声で呻くように溢す。だとしたら怖いな、その勘。要するに雪ダルマさんの挨拶を聞く前に、予測してここまで歩いて来たということだろう?流石に今時のゲームでNPCがワープするとは考えにくいし。
「して、プレアデスよ。お主はここに来て日も浅いんじゃろう?一つ、重要なことを教えておいてやろう。役立つかは分からんがの」
「是非、お願いします」
「うむ……向こうに大きな山が見えるじゃろう?」
そう言ってグスターヴさんが指し示したのは、街の南西に位置する一際大きな火山。ウルヴァーニという名前らしい。フリーディアより南側はいくつかの活火山が連なった山脈になっていて、その中で最も大きなその山の頂は、ゲーム内で最も高い場所とも噂されている。
「あの山は『封印の山獄』と言われておっての。それはそれは恐ろしい化け物が眠っているそうじゃ」
「恐ろしい化け物……」
「うむ。お主は訪れ人じゃったな?それならば、この地に伝わる神話について、話さなければならんの」
それから出発まで、僕はフリーディアに伝わる神話と、そこに出てくる魔物について大まかに聞いていた。要約すると、どうやら災害級の神話生物が、ウルヴァーニの最深部に封印されているらしく、その封印が解かれることの無いよう、常に強力な結界が張られているのだとか。
「プレア殿、そろそろ行くよ」
「うん。じゃあ……行ってきます」
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ほっほっほ、と笑いながら、グスターヴさんの背中は街の中に消えて行った。大切な商売相手……か。それは僕にとっても同じことだ。そして僕達プレイヤーとは違い、NPCは死んだら蘇らない。何度死に戻っても、この街には指一本触れさせない。それが、戦争を呼び込んだ僕達の果たすべき責務だから。
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【桜花壊塵撃】消費MP:200 クールタイム:3時間
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プレアデス Lv.31
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HP:500→550(+250)
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STR:50→75(+50)
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AGI:0(+30)
INT:50(+120)
RES:0
DEX:30
LUK:30
SP:35→0
頭…なし
胸…バトラースーツ
右手…噴炎する恐牙の戦槌
左手…-
脚…バトラートラウザーズ
足…執事の革靴
特殊…蒼穹のタリスマン
特殊…レイジ・オブ・イフリート
特殊…空間機動ベルト
所持金:23700G
満腹度:90%
装備効果:物質特効(200%) 《出血》付与(高) 【吸血】攻撃(低) 付加(火炎) 《火傷》付与(高) HP回復(5/秒) MP回復(1/秒) 《火傷》耐性
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