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第7章 広がる世界、集う仲間
第3話 労いの盃①
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「えーそれでは皆さん!お手元のグラスのご準備を………………第1回アルケミオス、お疲れ様でした!!かんぱーい!!」
『かんぱーい!!!』
各所でグラスとグラスが、小気味良い音で大合唱を奏でる。その直後、皆一斉に飲み物を口に含み、一瞬の静寂が現れる。そして、口々にその喜びを表現する。ここまではもはや、宴会の様式美といったところだ。
「…………美味しいな、このドリンク」
赤ワインのように見えるそれは、何とも不思議な味の、でも確かな果実の甘みを感じさせるジュースだった。ゲームの中とはいえ、流石に未成年者はノンアルである。
ちょっと、飲んでみたい気もするけど…………この前、フリーディアの宴会で見たNPC達のだらしない姿を思い出すと、ああはなりたくないな、と首を横に振ってしまう。
今日は、アルケミオスの打ち上げ。雪ダルマさん達が企画して、冒険者ギルド1階の大食堂を貸し切っての宴会だ。結構広い食堂のはずなのに、それでもかなりの混雑具合。流石トッププレイヤー、やることが派手だ…………これだけのプレイヤーを集められるのは、やっぱり顔の広い彼しかいない。
「あの、プレアデスさん、ですよね……?」
「ん、はい。そうですけど…………」
「きゃー、本物だ!!」
「アルケミオス優勝、おめでとうございます!サインください!!」
「あっ、抜け駆けずるいぞ!俺にも!!」
「あたしにも~!」
「えっ、えっ!?」
僕の脳が処理しきる前に、たちまち周囲は人でごった返してしまった。どうやら、顔が広いのは、彼だけではないようだった。
…………なんか、この展開前にもあったような。今度は偽装工作じゃないよね?アイツみたいな。
「皆物好きだねぇ、プレ君」
「わー、春風さんもいる!!」
「かわいい~!!こっち向いてー!」
「うえっ、ボクも!?」
ハルの周りにも、あっという間に人だかりが形成されてしまった。僕達、すっかりスタープレイヤーになってしまった……。
「ど、どうしよう、プレ君…………」
「ふふふ、君にも物好きがたくさん付いてるみたいだねぇ」
「わ、笑ってないで何とかしてぇ……!ボク、こういうの経験ないからさぁ!」
「しょうがないなぁ…………はーい!!皆さん!!!」
パンパンと大きく手を鳴らし、群がるプレイヤー達の注意を引く。
「順番にサインしますので、列に並んでお待ちくださーい!!」
そう言って、僕はペンを2本、インベントリから出して、片方をハルに投げて寄越す。
「それ使って」
「あ、ありがと…………でもボク、サインなんて!」
「何でも良いんだよ!書けば喜んでくれるから!」
じゃ、頑張ってね、とでも言わんばかりに、高く掲げた手を振る。ま、ハルなら何とか切り抜けるでしょ。
~~side 早瀬康太郎~~
「いや~お疲れ様でした、早瀬課長!」
「何とか、乗り切ったっすね!!」
「ああ、そうだな…………お前達!今日は私の奢りだ!好きなだけ飲め!!」
「おおおおおー!」
「課長、太っ腹!!」
「よっ、色男ー!」
やれやれ、調子の良い奴らだ…………だが、第1サーバーという大変な環境で、嫌な顔一つせずに生き残った。皆とても優秀で、可愛い部下。私の大切な仲間達だ。
「いやぁ、早くもグローバルサービス開始ですか…………いよいよ本番、て感じですね!」
「そうだな……海外サーバーでまで、こんなことにならなければ良いが、な」
「ハッハッハ!違いないっす……すんません!ビールおかわり、お願いしまっす!!」
「おいおい、飲みすぎるなよ……?」
「課長こそ、それじゃあお酒、足りないんじゃないですか?」
「挑発のつもりか?やめておけ、こう見えて俺は酒強いぞ」
そう言い、芋焼酎のロックをくいっと傾ける。連日の過剰業務で疲弊した心身に、アルコールと芳醇な香りが染み渡る…………この、少し喉が焼けるような感覚も、慣れれば心地のよいものだ。
『かんぱーい!!!』
各所でグラスとグラスが、小気味良い音で大合唱を奏でる。その直後、皆一斉に飲み物を口に含み、一瞬の静寂が現れる。そして、口々にその喜びを表現する。ここまではもはや、宴会の様式美といったところだ。
「…………美味しいな、このドリンク」
赤ワインのように見えるそれは、何とも不思議な味の、でも確かな果実の甘みを感じさせるジュースだった。ゲームの中とはいえ、流石に未成年者はノンアルである。
ちょっと、飲んでみたい気もするけど…………この前、フリーディアの宴会で見たNPC達のだらしない姿を思い出すと、ああはなりたくないな、と首を横に振ってしまう。
今日は、アルケミオスの打ち上げ。雪ダルマさん達が企画して、冒険者ギルド1階の大食堂を貸し切っての宴会だ。結構広い食堂のはずなのに、それでもかなりの混雑具合。流石トッププレイヤー、やることが派手だ…………これだけのプレイヤーを集められるのは、やっぱり顔の広い彼しかいない。
「あの、プレアデスさん、ですよね……?」
「ん、はい。そうですけど…………」
「きゃー、本物だ!!」
「アルケミオス優勝、おめでとうございます!サインください!!」
「あっ、抜け駆けずるいぞ!俺にも!!」
「あたしにも~!」
「えっ、えっ!?」
僕の脳が処理しきる前に、たちまち周囲は人でごった返してしまった。どうやら、顔が広いのは、彼だけではないようだった。
…………なんか、この展開前にもあったような。今度は偽装工作じゃないよね?アイツみたいな。
「皆物好きだねぇ、プレ君」
「わー、春風さんもいる!!」
「かわいい~!!こっち向いてー!」
「うえっ、ボクも!?」
ハルの周りにも、あっという間に人だかりが形成されてしまった。僕達、すっかりスタープレイヤーになってしまった……。
「ど、どうしよう、プレ君…………」
「ふふふ、君にも物好きがたくさん付いてるみたいだねぇ」
「わ、笑ってないで何とかしてぇ……!ボク、こういうの経験ないからさぁ!」
「しょうがないなぁ…………はーい!!皆さん!!!」
パンパンと大きく手を鳴らし、群がるプレイヤー達の注意を引く。
「順番にサインしますので、列に並んでお待ちくださーい!!」
そう言って、僕はペンを2本、インベントリから出して、片方をハルに投げて寄越す。
「それ使って」
「あ、ありがと…………でもボク、サインなんて!」
「何でも良いんだよ!書けば喜んでくれるから!」
じゃ、頑張ってね、とでも言わんばかりに、高く掲げた手を振る。ま、ハルなら何とか切り抜けるでしょ。
~~side 早瀬康太郎~~
「いや~お疲れ様でした、早瀬課長!」
「何とか、乗り切ったっすね!!」
「ああ、そうだな…………お前達!今日は私の奢りだ!好きなだけ飲め!!」
「おおおおおー!」
「課長、太っ腹!!」
「よっ、色男ー!」
やれやれ、調子の良い奴らだ…………だが、第1サーバーという大変な環境で、嫌な顔一つせずに生き残った。皆とても優秀で、可愛い部下。私の大切な仲間達だ。
「いやぁ、早くもグローバルサービス開始ですか…………いよいよ本番、て感じですね!」
「そうだな……海外サーバーでまで、こんなことにならなければ良いが、な」
「ハッハッハ!違いないっす……すんません!ビールおかわり、お願いしまっす!!」
「おいおい、飲みすぎるなよ……?」
「課長こそ、それじゃあお酒、足りないんじゃないですか?」
「挑発のつもりか?やめておけ、こう見えて俺は酒強いぞ」
そう言い、芋焼酎のロックをくいっと傾ける。連日の過剰業務で疲弊した心身に、アルコールと芳醇な香りが染み渡る…………この、少し喉が焼けるような感覚も、慣れれば心地のよいものだ。
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