220 / 230
第7章 広がる世界、集う仲間
第2話 ゲーマー流・アンガーマネジメント②
しおりを挟む
『絆の秘石』☆7
売却・譲渡不可。クランの設立に必要なアイテム。メンバーの情報を記録し、管理することができる。また、ホームに設置することで、クランベースとして使用できる。ただし、このアイテムを保有するプレイヤーは、他プレイヤーのクランに所属できない。
「これを使うだけで、設立できるんだよね?」
「試しに使ってみようか…………」
そう言い、僕は机に置かれたその石に手を触れる。じきに、僕の脳内に機械音声が流れた。
───認証を開始します。MPを消費し、マナを流し込んで下さい。
マナを流し込む…………それで、本人確認ができるのか?生体認証的な…………どういう原理なんだろう。不思議に思いつつ、言われた通りにマナを放出する。
───認証中…………
───正規所有者によるアクセスを確認。これより、クランの設立を開始します。
って、いきなり!?
「プレ君、どーしたの?」
「もうクランの設立、始まるみたい!」
言い切るより先に、僕の目の前に画面が出力される。何が書かれているのか?2人で、その中をじっと覗き見る。
「えーっと、まずはクラン名…………どうしよ、何も考えてなかったわ」
「え、まさかのノープラン!?」
「だ、だって、こんないきなり始まると思ってなかったんだもん…………一旦、キャンセルで!!」
───設立処理が中断されました。最初からやり直して下さい。
「…………ふぅ」
「ちょっとー!何で辞めちゃうのさ!もったいないなぁ」
「しょうがないでしょー、改名できる保証もないんだし!それに、どういう方針のクランにするか、ちゃんと事前に共有しとかないと」
「それはまぁ、確かに…………それにしても、まさかアイテムの制約で同じクランになれなくなるなんてねぇ」
『絆の秘石』の、自分が設立した以外のクランに入れないという制約。それは、同じアイテムを持つプレイヤー同士での結託の禁止を意味していた。ランカーにだけ渡されているという点から考えるに、まぁバランス調整というやつだろう。
「こればっかりはしょうがないよねぇ……前向きに捉えよう。別に、ハルと同じクランに入れないってだけで、協力関係を封じられるわけではないんだし」
「……それもそっか。なるほど、それで方針を共有したいってことね」
「そーゆーこと。僕はせっかくなら、原点回帰して、前みたいにアイテム製作に集中したいかも」
ここのところ、フリーディア防衛戦、旧王立研究所への潜入、そしてアルケミオスと、戦い続きの日々だった。勿論、それはそれで充実していて楽しかった。いかにも、ゲームをしているという感じで。
でも、その結果、本来やりたかったことをできずにいた気がする。戦いに勝つための錬成…………僕は、それをやりたくてこのゲームを、鍛治職人で始めたわけじゃない。もっと自由に、実験的に、色々な技術や機能を盛り込んだ、唯一無二のアイテム。僕が本当に作りたかったのはそういうものだ。
「新エリアが一気に解放されて、攻略の勢力は必然的に分散される。なら、ボス攻略までも、フリーディアの時よりは時間に余裕があるはずだ。その時間を使って、僕はまた、革新的なアイテムを作りたい!宝石の研究を進めて、もっと皆を助けられるような…………」
「製作クランか、いいね…………ボクは、どうしようかな。プレ君を支えるなら、やっぱり戦闘を中心にしたクランがいいのかな?」
「ハルの好きなことをしたら良いさ!別に、クランを作ったからといって、ずっとそこの人達に時間を使う必要なんてない。ボス攻略も何もない今くらいは、ゆっくり羽根を伸ばせるはずだよ」
「そうだね…………やりたいこと、かぁ」
ハルは、ベッドにボフっと横たわり、天井を仰ぎ見る。やりたいこと…………まぁ、そんな簡単には決まらないよね。現実ですら、特にそういうのが分かっていない人なんてたくさんいるのに。
考えてみれば、僕はこれまで色々好き放題やってきたけど、ハルはその間、ずっと僕の支援をしてくれていた。隣で、戦ってくれた。
ハルはここに来てから、ちゃんと自分のしたいことをできているんだろうか?それとも、目的が特にないから、そこまでしてくれるのか?どちらにしろ、それを僕の目線から考えるのはおこがましいことだが。
ピロンッ!!
「…………ん、チャットの通知?」
「あ、ボクにも来た。なになに…………?」
2人で示し合わせて、その内容を確認する。それはどちらも、幻のチャンピオン、雪ダルマさんからの連絡だった。
売却・譲渡不可。クランの設立に必要なアイテム。メンバーの情報を記録し、管理することができる。また、ホームに設置することで、クランベースとして使用できる。ただし、このアイテムを保有するプレイヤーは、他プレイヤーのクランに所属できない。
「これを使うだけで、設立できるんだよね?」
「試しに使ってみようか…………」
そう言い、僕は机に置かれたその石に手を触れる。じきに、僕の脳内に機械音声が流れた。
───認証を開始します。MPを消費し、マナを流し込んで下さい。
マナを流し込む…………それで、本人確認ができるのか?生体認証的な…………どういう原理なんだろう。不思議に思いつつ、言われた通りにマナを放出する。
───認証中…………
───正規所有者によるアクセスを確認。これより、クランの設立を開始します。
って、いきなり!?
「プレ君、どーしたの?」
「もうクランの設立、始まるみたい!」
言い切るより先に、僕の目の前に画面が出力される。何が書かれているのか?2人で、その中をじっと覗き見る。
「えーっと、まずはクラン名…………どうしよ、何も考えてなかったわ」
「え、まさかのノープラン!?」
「だ、だって、こんないきなり始まると思ってなかったんだもん…………一旦、キャンセルで!!」
───設立処理が中断されました。最初からやり直して下さい。
「…………ふぅ」
「ちょっとー!何で辞めちゃうのさ!もったいないなぁ」
「しょうがないでしょー、改名できる保証もないんだし!それに、どういう方針のクランにするか、ちゃんと事前に共有しとかないと」
「それはまぁ、確かに…………それにしても、まさかアイテムの制約で同じクランになれなくなるなんてねぇ」
『絆の秘石』の、自分が設立した以外のクランに入れないという制約。それは、同じアイテムを持つプレイヤー同士での結託の禁止を意味していた。ランカーにだけ渡されているという点から考えるに、まぁバランス調整というやつだろう。
「こればっかりはしょうがないよねぇ……前向きに捉えよう。別に、ハルと同じクランに入れないってだけで、協力関係を封じられるわけではないんだし」
「……それもそっか。なるほど、それで方針を共有したいってことね」
「そーゆーこと。僕はせっかくなら、原点回帰して、前みたいにアイテム製作に集中したいかも」
ここのところ、フリーディア防衛戦、旧王立研究所への潜入、そしてアルケミオスと、戦い続きの日々だった。勿論、それはそれで充実していて楽しかった。いかにも、ゲームをしているという感じで。
でも、その結果、本来やりたかったことをできずにいた気がする。戦いに勝つための錬成…………僕は、それをやりたくてこのゲームを、鍛治職人で始めたわけじゃない。もっと自由に、実験的に、色々な技術や機能を盛り込んだ、唯一無二のアイテム。僕が本当に作りたかったのはそういうものだ。
「新エリアが一気に解放されて、攻略の勢力は必然的に分散される。なら、ボス攻略までも、フリーディアの時よりは時間に余裕があるはずだ。その時間を使って、僕はまた、革新的なアイテムを作りたい!宝石の研究を進めて、もっと皆を助けられるような…………」
「製作クランか、いいね…………ボクは、どうしようかな。プレ君を支えるなら、やっぱり戦闘を中心にしたクランがいいのかな?」
「ハルの好きなことをしたら良いさ!別に、クランを作ったからといって、ずっとそこの人達に時間を使う必要なんてない。ボス攻略も何もない今くらいは、ゆっくり羽根を伸ばせるはずだよ」
「そうだね…………やりたいこと、かぁ」
ハルは、ベッドにボフっと横たわり、天井を仰ぎ見る。やりたいこと…………まぁ、そんな簡単には決まらないよね。現実ですら、特にそういうのが分かっていない人なんてたくさんいるのに。
考えてみれば、僕はこれまで色々好き放題やってきたけど、ハルはその間、ずっと僕の支援をしてくれていた。隣で、戦ってくれた。
ハルはここに来てから、ちゃんと自分のしたいことをできているんだろうか?それとも、目的が特にないから、そこまでしてくれるのか?どちらにしろ、それを僕の目線から考えるのはおこがましいことだが。
ピロンッ!!
「…………ん、チャットの通知?」
「あ、ボクにも来た。なになに…………?」
2人で示し合わせて、その内容を確認する。それはどちらも、幻のチャンピオン、雪ダルマさんからの連絡だった。
10
あなたにおすすめの小説
インフィニティ・オンライン~ネタ職「商人」を選んだもふもふワンコは金の力(銭投げ)で無双する~
黄舞
SF
無数にあるゲームの中でもβ版の完成度、自由度の高さから瞬く間に話題を総ナメにした「インフィニティ・オンライン」。
貧乏学生だった商山人志はゲームの中だけでも大金持ちになることを夢みてネタ職「商人」を選んでしまう。
攻撃スキルはゲーム内通貨を投げつける「銭投げ」だけ。
他の戦闘職のように強力なスキルや生産職のように戦闘に役立つアイテムや武具を作るスキルも無い。
見た目はせっかくゲームだからと選んだもふもふワンコの獣人姿。
これもモンスターと間違えられやすいため、PK回避で選ぶやつは少ない!
そんな中、人志は半ばやけくそ気味にこう言い放った。
「くそっ! 完全に騙された!! もういっその事お前らがバカにした『商人』で天下取ってやんよ!! 金の力を思い知れ!!」
一度完結させて頂きましたが、勝手ながら2章を始めさせていただきました
毎日更新は難しく、最長一週間に一回の更新頻度になると思います
また、1章でも試みた、読者参加型の物語としたいと思っています
具体的にはあとがき等で都度告知を行いますので奮ってご参加いただけたらと思います
イベントの有無によらず、ゲーム内(物語内)のシステムなどにご指摘を頂けましたら、運営チームの判断により緊急メンテナンスを実施させていただくことも考えています
皆様が楽しんで頂けるゲーム作りに邁進していきますので、変わらぬご愛顧をよろしくお願いしますm(*_ _)m
吉日
運営チーム
大変申し訳ありませんが、諸事情により、キリが一応いいということでここで再度完結にさせていただきます。
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
───────
自筆です。
アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー
びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。
理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。
今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。
ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』
計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る!
この物語はフィクションです。
※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる