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二度殺されかけてトラウマ目の前におもらししちゃった俺

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「は?」

 俺の名前はディトリント・オーグル。この国では珍しい魔力持ちの子宮持ちだ。
 他所の国では違うらしいが、このミッシュ国は男のみが魔力を持って生まれる。魔力と言っても、大小あったりするんでそこら辺は系譜が絡んでくるらしいけど、大体は貴族は多めの魔力を持っているのがザラだ。
 そして、ここが重要。女は魔力を持たないが、子を成すことが出来る。子が生まれれば、貴族であれば確実に魔力持ちだし血筋も安定する。しかし、魔力量や質を継続して生み出すとなると難しくなってくる。
 それを可能とするのが、高い魔力を誇り、子宮を持った俺のような存在だ。
 男の子宮持ちは大体が高い魔力を持っていて、子を成せばその能力が遜色ない形で現れる。だからこそ、男の子宮持ちは貴族にとって喉から手が出るほどに欲しい存在で、とても貴重なものである。
 俺の家は子爵家でぼちぼちの規模で、両親もほのぼのとした雰囲気であり、俺の結婚相手も急くことはなく恋愛結婚でもいいという方針だった。
 そう、“だった”。
 昨日までは。


 俺の婚約が急に決まり、オーグル家はてんてこ舞いになった。
 しかも、相手と言うのが俺のトラウマのカーヴァンディル・ミッツァクールというのだから出奔もアリかと覚悟した。

 俺は、カーヴァンディルに幼少期、二度、殺されかけている。

 一度目は、六歳の時ミッツァクール公爵家自慢の庭をカーヴァンディルと散策をしていた時、突然に池に落とされ沈められかけた。
 服の重たさと、おめかししていた所為で俺は上手く池から這い上がれなくて、一生懸命カーヴァンディルに手を伸ばし助けを求めたが、奴は水色の瞳にうっそりと暗い冷たい色を乗せ此方をじっと見ていた。助けてくれる気配は一切なく、必死に藻掻いている俺を助けてくれたのは騒ぎを聞きつけた公爵家の使用人だった。
 ガブガブと池の水を飲み込んでしまった俺はその後一か月程寝込んでしまった。池はばっちいから当然だろう。

 バカな俺は、そこで奴の異常性に気付いて離れて居れば良かったのに、目の前で溺れられたら子供であるカーヴァンディルもパニックになって動けないよなーと呑気に納得していた。
 背中を押されて、池に沈められたのに、パニくるもなにもない。明らかな殺意を向けられていたというのに。

 それから時は流れ、俺が八歳、カーヴァンディルが十歳の時にミッツァクール侯爵家のお茶会に招待された。
 この時、自分が子宮持ちだと知らなくて、子爵家の下位貴族である俺が公爵家のお茶会に呼ばれているのか理解出来ていなかった。今だったら判る。あれはカーヴァンディルとのお見合いだったのだと。
 俺は背丈はそれなりにあるけど、身体つきは華奢で二つ上のカーヴァンディルが並ぶとヒョロヒョロに見えてしまうのがちょっとだけ嫌だった。
 両親に可愛らしく着飾られ、お茶会へと行ったが公爵夫妻は穏やかな人たちで会話も面白く、俺は会ってすぐ懐いた。でも、カーヴァンディルは、数年前と同じように昏い瞳をこちらに向けてじっとしていた。
 紫がかったユルっと癖のある髪に、冷たく見える水色の瞳が静かに俺を見ている。
 俺の家は大体みんな金に近い茶色で、魔力の高い人間に現れる青紫色の瞳を持っている。黒い髪というのも、この国ではミッツァクール公爵家くらいかもしれない。
 全部の要素がなんだか怖くて、まともにカーヴァンディルを見れなくて余計に公爵夫妻にくっついていたのだが、公爵夫妻に仲良く遊んで来なさいと背中を押されれば拒否することなんて出来ず、俺は渋々カーヴァンディルの手を握った。

「…………」

 以前来た時もそうだったが、カーヴァンディルが喋った所を一度も見たことがない。
 カーヴァンディルは公爵家の三男で、ここの一家は美形揃いで見目麗しいともっぱらの評判である。
 俺はカーヴァンディルが案内をしてくれるのだと思って、手を握ったがもしかしたら間違っているのかもしれない。慌てて手を放そうとしたら、それよりも早く手を強く握られた。
 小首を傾げて、カーヴァンディルを見上げれば、無表情で此方を見下ろしていた冷たい瞳と目が合い、不自然にならない程度の動きで目を反らした。
 背中に嫌な汗をかき、どうしよう…と考えていると、手を引かれ、カーヴァンディルのゆったりとした歩調に合わせ俺も歩き出した。


 庭は嫌だな…と思っていたら、屋敷の中に案内された。
 ものすごく広いエントランスに入り、見たこともない煌びやかな装飾の内装と飾りにキョロキョロとしている俺の不調法に反応も返さず、カーヴァンディルがどんどんと奥に進む。本館と別館があり、更に別れた建物も窓から見える。とんでもない広さを誇る公爵邸は俺にとって迷宮に近いものだった。
 あちこちに華美なランプが魔力で灯されていて明るかったが、一室だけほの暗い場所があった。大きな扉がある。
 カーヴァンディルはその扉を開け、俺の手を引っ張る。

「わ、ぁ…」

 中は図書館のようで、その蔵書の量に感嘆の声が無意識に零れた。
 本の管理の為に明かりを絞っているのだろう。中は外とは違い、ヒンヤリと冷たく、俺は繋いでいた手を放して本棚に足を向けた。
 図書館は、三階部分までぶち抜いて作ってあるようで、階段が緩いカーブを描いて設置されている。
 ここに案内をしてくれたのだし、ちょっとだけ手に取ってもいいのかな? そっと、気になった魔術の本を本棚から取り出し、カーヴァンディルを見た。彼は俺が手を放した場所から一歩も動いていなかった。何も言ってこないし、ちょっとだけ…と、本を開いた。
 それからどれくらいそうしていただろうか。一寸の気もするし、長いこと本を読んでいた気もする。
 いきなり腕を引かれ、強い力で床に押し倒された。

「!!」

 背中に打ち付けられた痛みが走り、顔を歪める俺の上にカーヴァンディルが乗っていた。

「ひっ!」

 紫がかった黒い髪が、うす暗い図書館の影に紛れ、昏く濁った水色の瞳が俺を見下ろしていた。
 特別に綺麗なその容貌が出来のいい人形のようで、とても怖く思えた。
 スッと首に手を掛けられ、逃れようと身を捩ったが俺より大きい体躯のカーヴァンディルはピクリともしなかった。
 徐々に首に掛けられた両手に力が入り始め、俺は以前この屋敷で起こった事故はカーヴァンディルの殺意があったことを知った。

「や、めっ、ぐっ…あ゛っ……!」

 足をばたつかせ、カーヴァンディルの腕に爪が食い込むほど力を込めて抵抗したが、カーヴァンディルは俺の首を絞めるのを止めない。
 助けを求めるが、扉は重厚なもので俺の声なんて外に届いていないだろうことは一目瞭然だ。
 明らかな殺意をその水色の目に宿し、俺がもがき苦しむさまを静かに見下ろしているカーヴァンディルに恐怖した。
 誰かに助けてほしくて、こんな所で死ぬのは嫌で、俺は思わず魔法を使っていた。魔法は十二歳で入る学園で教えてもらうもので、この時はきっと魔法の暴発になるのだろう。
 ドカン! とものすごい音で図書室の扉が壊れた。
 俺は魔力暴走と、カーヴァンディルの暴力に身体がついていけずそこで意識を失った。

 後から両親に訊いたところ、図書室の扉が壊れる音で近くに居た使用人が慌てて中に入り、俺の首を絞めていたカーヴァンディルは拘束されたそうだ。
 そして、一度目の池に落ちた際もカーヴァンディルの仕業だったと本人が認めた為に、公爵家からお詫びの手紙がきて、お見合い話が水に流れた。
 それがあって家の両親は俺に対して過保護で、子宮持ちという存在でありながら恋愛結婚を認めてくれている。
 俺は、その一件以来人が怖くて家に閉じこもり気味になった。本来であれば領地に籠って王都になんて居たくはなかったのだが、やっぱり子宮持ちは貴重な存在らしく、領地に籠ることは許されなかった。
 十二歳で王都の学園に入る事が貴族子息・子女は義務付けられているが、俺は必死に勉強してこの学園に通うことの免除を受けた。全ての面に置いて、優良印のオールクリアーだ。
 家に引きこもって魔術の構築を研究していたが、その研究が実を結び魔術道具への転換に成功した。元来であれば、魔法石を使って呪文を唱え火を灯したり水を出したり使用するのだが、これは魔法陣を組み込むことにより魔法石自体が光り、ライトの代わりになったり、水属性の魔法石に極僅かな魔力を流すだけで水が出るといった簡易仕様に出来上がった。
 これの功績のお陰で俺は家に居ながら魔法の研究ができる。国から支援もされている。
 家に籠り切りなので、出会いなんてものは一切ないが、人が怖いから結婚なんて到底無理な話だ。貴重な子宮持ちではあるが、違うところで国に貢献しているんだから諦めてほしい。


 そう思っていた。
 両親が蒼褪めた顔で、家に帰ってきた瞬間に逃げてしまえばよかった。

「カーヴァンディル・ミッツァクール様との婚約が確定してしまって、来年には婚姻を結びたいと相談をされてね」

「は?」

 白いものが混じり始めた髪の父が吹き出る汗をハンカチで拭いながらそう俺に告げた。
 隣にいる母は、頭が痛いのか眉間に皺を寄せて目を伏せている。

「俺が殺されてもいいのかよ!」

 俺はカーヴァンディルに二度殺された。両親は俺のことを守ろうと必死になってくれていた。
 それなのに、こんなのってあんまりだ。
 カーヴァンディルとは八歳の時から会っていない。ミッツァクール公爵夫妻は俺ともう二度と会わせないと約束してくれた。なのに、こんな形で裏切られるなんて。
 あの時の恐怖が過って、足が震える。

「しかし、お前ももう十六だ。彼は…その…色々と問題があったが、今はその面影もなく、とても好青年だった」

 しどろもどろ、父が言葉を選んで口にする。
 俺と一緒に倒れるんじゃないかってくらい、顔色が悪い。

「まだ彼とは会わせない。急だが、明日、ミッツァクール公爵夫妻と会ってくれないか?」

「や、やだっ!」

「そう言わず。本当に駄目だったら公爵夫妻がどうにかしてくれると念を押してくれたんだよ」

 それは、公爵夫妻をなんとか味方につけて婚約をなかったことにしてこいと、そういうことだろうか。
 確かに、父は子爵で公爵に強く物を申せるわけじゃない。公爵家に行くこと自体、恐怖でしかないのに。

「わかったよ…」

 キリキリと痛みだす胃を抑えて答えれば、父は一つ重しが消えたようにパッと笑った。母も涙ぐんで微笑んだ。
 俺は明日、なんとか説得しようと早めに寝具にくるまった。














「おぉ! 君がディトリントか! 見違えたな!」

「まぁ、久しぶりねぇ。可愛らしく育って」

 ミッツァクール公爵夫妻に出迎えられ、庭園の茶会用の場所に連れてこられた。
 前来た時、この場所は薔薇の生垣が植えられ迷路のようになっていたが、以前とは全く違って辺りを一望できる見晴らしのいい庭になっていた。ずっと向こうにあった俺が沈められかけた池の姿も見えない。
 そのことにホッとして、公爵夫妻にここ数年の魔術道具についての功績を褒められ、なんとかここから婚約をなかったことにしてもらえないかと取り掛かりを考えていたら、一角がバタバタと慌ただしくなり始めた。
 何事だろうと小首を傾げていれば、こちらに走ってくる執事のおじさんが公爵夫妻に耳打ちをした。

「なんだって?」

「まぁ、カーヴァンディルが?」

 その言葉に、じわっと恐怖を感じた。
 もしかしたら、この騒ぎは彼がここに駆け付けようとしているからか?
 急いで椅子から立ち上がり、恐怖でパニックになりかけた頭で逃げられる場所がないかと探す。

「あの子を止められないの?」

「一生懸命足止めをしているのですが、我々にはカーヴァンディル様を止めることは不可能でございます」

 青い顔をした執事のおじさんが、やつの名前を呼ぶ。
 やっぱり、こっちに向かっているんだ。
 ゾッと、背筋に鳥肌が立つ。

「ディトリント!」

 聞いたことのない声で、名を呼ばれ振り向けばそこには幼少期の面影を残したカーヴァンディルが居た。
 背は俺なんか比べものにならないくらい大きいし、それなのにスラリと程よい筋肉が付いていることが服の上からでも判る。ユルっと癖のある紫がかった艶のある黒髪に、以前とは違う生き生きとした水色の瞳。美少年から美青年へと変貌を遂げたトラウマが此方に駆け寄ろうとしていた。

「ひっ!」

 俺は殺されかけた二度の経験を思い出し、意識を失った。






 池に沈められるのも、首を絞められるのもとても苦しくて、一番は死ぬのが怖かった。
 カーヴァンディルは異常な子供であったが、それでも王家の血縁の公爵子息であったために厳重注意という処罰で終わったららしい。
 高位貴族の権力というものを俺は八歳で学んだ。 


 失神した俺は、安易にもこれで家に帰れるのだと安堵した。前回、前々回のように起きたら家で、やっぱりこの婚約はなしにしようかなんて言われるのだと思っていた。
 パチリを目を開けて、一瞬なにがあったのかと焦ったが、ミッツァクール公爵家で倒れたのだと思い出した。
 ここはてっきり自宅のベッドの上だと思い込んでいたのだが、マットの沈む上等な感触に「あれ?」と小首を傾げた。そして、ジワリと冷や汗をかいた。

「起きたか。具合はどうだ」

 目の前に、詳しく言えば少し身を起こした俺の斜め向かいに存在していた美麗な顔を確認して、俺は恐慌状態に陥った。

「ひゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 俺を二度殺しかけた男の姿を確認して、情けない悲鳴を上げてしまった。それだけならまだしも、十六歳だっていうのに俺は恐怖のあまり、おしっこを、その…漏らしてしまった。
 ショロロロロォ…と布団の中から聞こえ、ジワリと暖かく濡れる下肢の感覚に青紫色の瞳をまん丸にして自分のことながら硬直した。
 嘘だ…と思うが、股を濡らす生暖かい感触は消えない。
 ここで、生活魔法である浄化が使えたらなかったことにもできるのだが、俺には生活魔法が一切使えない。俺の魔力の火力の調整が“強”しか存在していない為、微々たる魔力で行われる生活魔法が使えない。
 目の前にいるトラウマから逃げようにも、下半身は大事故を起こしているし、布団から出れないし、どうしたらいいのかとパニックに陥っていると、目の前の元凶が布団をバサリと避けた。
 寝かしつけられていた俺は、上着を脱がされシャツも釦もいくつか外されていてトラウザーズもホックが外されていた。
 地味なグレーのトラウザーズは、一部分が藍色に染まっている。俺がカーヴァンディルの存在に吃驚してお漏らしをしてしまったからだ。

「ひっ…ひぇ…うぇぇぇぇ…うわぁぁぁーーーーーんっ」

 俺はあまりの屈辱に子供のように泣いてしまった。
 ポロポロと涙を零し、最悪、このまま殺されてしまうのだろうと覚悟した。
 零れる大粒の涙で目の前はなにも見えなくて、カーヴァンディルが俺をどう殺そうとするのか一切判らない。
 次第に濡れていた部分は空気にさらされ、ヒンヤリと冷たくなりだした。
 きっとカーヴァンディルは俺がおしっこを漏らしたことで不快になって、俺を殺すんだ。

 わんわんと泣いていたら、額に暖かいなにかが触れた。

「ふぇぇ?」

 与えられるのは暴力のみだと思っていた俺に、優しい接触があり思わず顔を上げてしまった。
 涙で目の前のカーヴァンディルがどういった表情を浮かべているのか判らないが、俺の着ていたシャツに手をかけ、次におしっこで濡れたトラウザーズと下着を脱がせてくれた。

「なに?」

 弱弱しい声で訊ねれば、カーヴァンディルは「安心しろ」と優しい声音を俺に掛けてくれた。

「誰にも言わん。今、綺麗にしてやるから、大人しくしていろ」

「へ? え? ふぇぇぇぇぇっ!」

 唖然としていた俺のおしっこ塗れになった場所に、生暖かいなにかがベロンと触った。
 目をゴシゴシと擦り、俺の前に屈んでそこをペロペロと舐めるカーヴァンディルの水色の瞳と目がかち合った。
 嘘だろ?
 カーヴァンディルがお世辞にも大きいとは言えない俺のちんぽを口に咥え、じゅぼじゅぼと舌を器用に動かし吸っていく。

「ひぃあっ、な、でっ…すわない、でっ!」

 腹の周りと、太ももと、そしてちんぽを唾液塗れにされ、ありえない刺激に勃起した精液をカーヴァンディルに飲まれた。
 ビクリと震える身体には力が入らず、恐怖からの快楽で頭が付いていけずゼーゼーと情けない息切れをなんとか整えようとした途端、身体が浄化された。

 お前、浄化の魔法使えたんかーーーーい!

 俺のおしっこベロンベロンに舐める意味がどこにある! 服を脱がせる必要もなく、浄化をかけるだけでよかったのに、なにをしちゃってくれてんの?!
 どうしてこのタイミングでの浄化なのか鈍る思考で考えたが、すぐに理解することになった。
 俺のちんぽの次は、後の孔の番だったらしく、そこを入念に舐めて吸われて、舌と指でヘンタイいうものはこういうことを言うんだぞ! って胸を張って言えるくらいの行為を受けた。
 俺の尻孔はふやふやにされ、なんなら孔の奥にある子宮からダポダポ零れる愛液でおしっこと同じくらいシーツが濡れている。

「リン…可愛い…天使のようだ…」

 うっとりと水色の瞳を潤ませたカーヴァンディルが夢うつつのように熱く吐息を吐き、パニックに次ぐパニックで暴れることすら出来ない俺の後孔に猛った自身のちんぽを当てた。
 嘘だろ?!

「だめっ、だめっ! いれないでっ!!」

 後孔に擦り付けるようにちんぽを動かすカーヴァンディルをなんとか退かそうとするが、力の弱い俺の抵抗じゃカーヴァンディルはびくともしない。魔法を使おうにも、子供の時とは違い、俺の火力強の魔法を放ったらこの屋敷半壊じゃすまないかもしれない。
 カーヴァンディルのちんぽの先端が、俺の出した愛液でヌラヌラと濡れて光っている。見たくないのに、恐怖と快楽に負けそうな心とが混じって、そこをガン見してしまった。

「見たい? いいよ。私と繋がる所、見ていてくれ」

 やだっーーーーーーー!
 カーヴァンディルが俺の尻を持ち上げ、自身も立ち上がった。
 お綺麗な顔をしているってのに、奴のもつちんぽは凶悪なまでのデカさだった。俺の手首程あるかもしれない。
 ガチンガチンのちんぽを俺の後孔に軽く含ませ、徐々に進むそれに悲鳴を上げる俺を愉しそうに瞳を細めていた。

 途中、あり得ない強さで中に入ってきたカーヴァンディルのちんこに今まで誰も触れたことのない子宮を強かに叩かれ、身体がビクンと跳ねあがった。

「あっ、ぐ…、あ゛…、あ゛…、やめ…っ」

 折りたたまれるような体制が苦しいし、抜き差しされるその強烈な感覚が耐えきれなくて、カーヴァンディルを両手で押しはするが奴の動きはより一層激しくなるばかりだった。
 見たくないのに、体勢の所為で嫌でも見えてしまうそこに涙が溢れる。
 難なくカーヴァンディルの大きいちんぽを咥え込み、激しいピストンで愛液が零れて散らばる。
 グポッ、グポッとちんぽが抜き差しされ、折りたたまれるような体勢から解放され、抱え込まれるように突かれ始めた。

「あぅっ、あ゛っ…、くるし、…やめ、やだぁっ、あっ、あっ…」

 俺の反応がイマイチなのが気に喰わないようで、カーヴァンディルは見た目の割にゴツイ手で俺のちんぽを扱き始めた。

「やだっ、やだって!!」

 わんわん泣く俺に、全てを奪いつくしそうなキスをして、唇から口内まで散々に舐められて吸われた。

「んぶっ、あぅっ、あ…、ひぅン…あぁっ、あっ…?」

 ちんぽを擦られ、唇を舐めて吸われ、身体がピクリピクリと反応をしだした。
 挿しこまれるちんぽが色んな向きで子宮を叩くたびに、背筋がしなる。
 おかしい、と自覚した時には遅かった。

「ひぃやぁぁぁんっ、なに、これっ、あっ、だめ、おく、だめっ、やだやだっ、ぬいてっ」

 感じたこともない高みへと勝手にのぼらされ、カーヴァンディルの先端で子宮の入り口を強くノックされると意識が飛びそうなくらいの快楽が全身に奔った。
 内壁がキュウキュウと伸縮して、中で更にデカくなったカーヴァンディルのちんぽを絞るような動きになった。

「リン、私の精液を受け止めてくれ」

「やだっ、やだやだっださないでっひっ、あっああぁぁぁーーーーー!!!」

 ビクン、と一層強く身体が戦慄き、精を吐き出した。
 カーヴァンディルは俺の中で数度腰を揺すり、奥の奥へと精液を吐きだすよう鋭い動きをしていた。

 精をまき散らし、唖然とする俺にカーヴァンディルはまだまだ情欲の籠った眼差しを向けてきた。
 ギクリと身体が強張ったが、射精感からかすぐには身体が動かなかった。
 中に埋まっていたカーヴァンディルは俺から抜けることなく、再度先ほどと同じような硬度で中を突き出した。

「うそうそっ、やだっ、なんで、あっ、あっ、なか、きもち、わるいよぉっ、うごかさないでっ、ひぃんっ、あっ…あっ…!」

 カーヴァンディルが中で出したものが、泡立ち俺の後孔から零れていく。
 さらに滑りがよくなったようで、子宮に奥を叩かれる頻度も上がり、身体が快楽に染まりだした。
 全身が性感帯のようになっているみたいだ。奥を激しくノックされ、一度精を出して、その衝撃に耐えている最中に腰をガン振りされて、喉から哀れな悲鳴が零れた。

「ひぃっ、やめっ、イってる、イってるって、ばっ、あぁぁん、あんっ、あっ♡」

「リン、私の名前を呼んでくれないかっ」

 激しかった腰の動きがピタリと止み、カーヴァンディルの腰の動きが子宮を擦り上げるものに変わった。

「やぁぁっ、それ、だめっ、おく、らめぇぇぇっ♡」

 グニ、グニ、と奥を先端で擦られ、俺はその刺激で更にもう一度精を吐いてしまった。

「ほら、呼んで?」

「ふぇぇ…、あっ…カーヴァ、ディル、ああぁぁぁっ、はげし、おく、らめらって、あぁぁっ、あ゛っ、らめ、もう、れない、へんに、なっちゃ…あっ、あっ…!」

 カーヴァンディルの名前を呼んだ瞬間に、今までの突き上げが前戯であるかのような、激しい注挿に刺し変わった。奥を抉るようなそれに身体の内側からゾクゾクとした妙な感覚が沸いて出て、俺は精液を出さず達した。

「あ゛…あ…はぁ…あーーー♡」

 身体を快楽に震わせ背を反らすと、中でカーヴァンディルが果てたのが判った。
 しかし、その刺激で俺は空っぽである精液から生暖かい液体を吐き出した。

 ショロショロ、と弱弱しく吐き出されたものは、おしっこだ。
 靄が掛かった思考で、またやってしまったと、嗚咽を零せばなにに興奮したのか、勢いよく俺に刺さっていた竿が抜かれ、身体を反転された。

「は、…?」

 カーヴァンディルの手で腰を高く上げるポーズをさせられ、おしっこ塗れの俺は背後から彼の剛直に再び襲われた。

「ひぁやぁぁぁぁん!」

 もう本当にムリだ。死んでしまう。
 カーヴァンディルのちんぽをその身に受けながら、三度めはこうやって殺されるのかと納得した。







 目を覚ましたら、やっぱり豪華な内装の部屋で家じゃなかった。
 全てが夢であったらよかったのに、起き上がった時に感じた尻の違和感で現実なのだと思い知った。
 そして、やっぱりベッド脇にはカーヴァンディルが此方を伺うように存在していて、覚悟をしていたからか今度はとんだ失態を犯すことはなかった。

「リン…」

 弱弱しいカーヴァンディルの声に、あれ? と小首を傾げた。
 紫がかった黒髪は心なしかヘニョンと垂れているし、冷たい水色の瞳は捨てられた子犬のような色を浮かべている。

「好きだ」

 俺の髪にカーヴァンディルはキスをした。それに恐怖して固まる俺に、カーヴァンディルはそっと身を剥がして名残惜しそうに離れていった。

「子供の私は、お前の重すぎる愛を対処しきれずお前を消そうとした。今では深く後悔している。リン、お前を愛しているんだ」

 え? なにそれ怖い。
 つまりは、一歩間違えれば今も抱いている感情は殺意に変わるような代物だってことだよな?
 絶句する俺にカーヴァンディルは悲しそうに俯いた。子供の頃のような無表情、無口は鳴りを潜め、素直な思いを向けてくれているようだった。
 しかし、俺は二度、もしかしたら三度、カーヴァンディルに殺されかかったのだ。愛情があろうとなかろうと、俺はカーヴァンディルと結婚するなんて御免被る。
 拒絶する言葉を吐こうと、口を開いた瞬間、カーヴァンディルからとんでもない言葉が零れた。

「お前が誰かの物になるなど許さない。それならいっそ、お前を犯し尽くし俺の精液で中から壊して、お前を殺して私も死――…」

「うわぁぁぁぁぁ!! お、おれ、カーヴァンディルのお嫁さんになっても、いいかもしれない、なっ!!」

 殺されたくなくて、カーヴァンディルとの婚姻を拒否していたのに、まさかの拒否で殺されるって酷くないか? しかも、死因がなんかとにかくやばい。

「本当か?」

 ジトリと疑わし気なカーヴァンディルの瞳が此方を見つめる。
 嘘だなんて言おうものなら、この場で犯されて殺されるだろう。

「怖いこと、しないなら…なってもいい…ケド…」

「しない。あんなこと、二度としない。誓うから、私と結婚してくれ」

 キラキラとした瞳を向けられるが、俺は気づいた。キラキラしているってだけで、瞳の奥底には昏い何かが住んでいる。
 それが俺への愛情なのか、憎悪なのか判別は付かないが、ここは頷くほか逃げる方法はない。

「俺が、おしっこ漏らしちゃったことも、誰にも言わない?」

「っ、それこそ、言うものか」

 堪えるような表情を浮かべたカーヴァンディルに、ホッと息を吐く。

「俺がヤダって言ったら、ちゃんと止めてくれる?」

「………」

「無理強いをするカーヴァンディルは、嫌い…」

「誓おう」

 一応、念を押しておこうと思ったが、幼少期と違いカーヴァンディルは話が判る奴だった。暴走したら話なんて聞いちゃくれないだろうが。
 飴と鞭を間違えたらすぐさま病んだカーヴァンディルに殺されるんだろうけど、今のところは無事そうなのでなんとかその間にカーヴァンディルの激情を抑え込む方法を考えたい。


 その後、実は騎士団のエリートだったらしい狂人カーヴァンディルのストッパーとして重宝されることを、この時の俺は知らなかった。






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