最後の将軍

おくん血•タケルfrom八鶴な書店

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**第13話「修羅の門に立つ者」*

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夜の長崎、風がざわめく。
鷹田家の屋敷にはまだ酒の香が残っていた。
羅刹は庭の松の下で一人、黙って煙をくゆらせていた。

「……どうやら、嵐が来るらしいな。」
その呟きの直後、屋敷の外でガシャーンと音がした。

門の外に、懐中電灯の光がゆらめく。
制服の影、十人。
そして、軍服を着た外国人の姿──GHQ将校だ。

「長崎県警だ‼️ 開けろ‼️ 鷹田羅刹、いるな‼️」

玄関が激しく叩かれた。
家人たちが青ざめる中、沙代が立ち上がる。
「あなた……まさか……」

羅刹は静かに手を上げて制した。
「心配いらぬ。武士が家に籠もるなど、恥だ。」

襖を開け、玄関へ歩む。
障子の向こうで、風が低く唸っていた。

ドン‼️
戸を開けると、懐中電灯の光が羅刹の顔を照らした。
刑事が怒鳴る。
「鷹田羅刹、貴様に尋問命令が出ている‼️
 側室制度違反、そして……先日の米兵暴行事件の関与だ‼️」

羅刹の眼が鋭く光る。
「証拠は?」

「目撃証言がある。貴様の“族”がバイクで囲い、煽り、米兵を転倒させた!」

羅刹:「族だと? 武士が己の誇りを守るのに、名がいるか。」
将校:「あなたのような男がこの国を遅らせる。新しい時代に逆らう者は、消えるしかない。」

その言葉に、羅刹の拳が静かに震えた。

「……ならば、問おう。
 お前たちの“自由”とは、我らの魂を踏み潰すことか?」

背後で勝司、黒田、島津が音もなく立ち上がる。
家の奥からは、凛華が幼い玄鬼を抱きしめ、怯えながらも父を見つめていた。

刑事が苛立ち、手錠を取り出す。
「話は署で聞く。抵抗すれば──」

「抵抗?」
羅刹はゆっくりと前に出た。
「俺の生き方そのものが、抵抗だ。」

将校が舌打ちをし、拳銃を抜いたその時──
外から馬の蹄のような音と共に、轟音。

「やめろッ‼️」
黒田と島津が同時に前に出た。
勝司が叫ぶ。
「ここは神聖な家やぞ‼️」

一瞬の沈黙。
雷鳴が鳴り響き、稲妻が空を裂いた。

将校は苛立ち、ポケットからチョコレート入りの袋を取り出した。
そして、玄鬼を指差しながら冷笑する。
「BOY。お前の国の“正義”だ。甘いだろう?」

ポトリと床に落ちた菓子袋。
玄鬼はそれを拾わず、父の背にしがみついた。

羅刹は低く、静かに告げた。
「覚えておけ……。
 武士の誇りは、銃でも甘味でも買えぬ。」

その目には、怒りを超えた覚悟が宿っていた。
嵐の夜、鷹田家の門は閉ざされ──
時代と魂の戦いが、静かに幕を開けた。



玄関先で県警の刑事たちが引き上げたあと、鷹田家の中はどこか張り詰めた空気が漂っていた。
羅刹は煙草に火をつけ、静かに一服する。
その目はどこか遠くを見ていた。

「……チッ、やっぱりあの舐めた将校だよな!!!」
怒りを抑えきれず、拳を畳に叩きつけた。
「マジで日本人を見下してやがる。自分らが神様にでもなったつもりか。」

勝司が笑みを浮かべながら言う。
「でもさ、羅刹兄ぃ。あいつら、なんか無理して余裕ぶってんの見えたけどな?」

「ほぉ?」
「だって本物の侍に向かって吠える犬やろ?目が泳いでたぜ。」

羅刹がふっと笑った。
「確かにな……。全くニコとは違うな。」

その名を聞いた瞬間、みんなの顔がほころぶ。
「全くだっ!!!」と三羽烏のひとり・島津が声を上げると、
場の空気が一気に弾けた。

「ニコは筋が通ってたからな~!」
「そうそう、あいつはハートが燃えてた🔥」
「アメ公でも、ああいう奴なら酒が飲めるわ!」

爆笑と共に、怒りに満ちた空気は少しずつ和らいでいく。
羅刹は煙を吐きながら、天井を見上げた。

「……結局、人間は国じゃねぇ。魂で生きるか、腐るかだ。」

静かに呟くその言葉に、全員が黙ってうなずいた。
その瞬間、遠くでバイクのエンジン音が響く。
「……行くか。夜風でも浴びようや。」

羅刹が立ち上がると、皆が一斉に動き出す。
外は、夜の長崎港。
海風が冷たくも心地よく、彼らの瞳には確かな光が宿っていた。
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