最後の将軍

おくん血•タケルfrom八鶴な書店

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第15話「丸山笑劇騒動」

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長崎・丸山。
異国の兵が闊歩し、酒と金の匂いが漂う混沌の街。
だがその夜、遊郭の片隅で──新しい“戦い”が静かに火を噴いた。

 

「おい聞いたかい?あのアメ公の将校さ、帽子脱いだらほぼ落武者だったってよ‼️」
 

廊下を駆け抜ける女中が、笑いをこらえながら部屋を覗く。
羅刹の側室の一人・楓の親友“お紋”が、扇子で口を隠しながら話を続けた。

「しかもザビエルハゲなんだと! だから侍を見るたびにムカつくらしいんだと!」

「ぷっ……」

楓が吹き出す。
「じゃあ今度会ったら言ってやろうかね。『あらまぁ、髷でも結ってあげましょうか?』ってさ!」

「やめなよ!殺されるって!」

だが、すぐにその話は風のように街を駆け抜けた。
いつしか「筆者不明の遊郭新聞」として張り紙にまでなり──

見出しにはこうあった。

《丸山発:ザビエルハゲ少佐、髷に嫉妬す》
“侍を見ると頭がかゆくなるらしい”

 

これがもう大当たりだった。

翌日、思案橋の通りでは魚屋も豆腐屋も笑いをこらえきれず、
「ほれ、ザビエル頭用の冷や奴だ!」とまで言い出す者まで現れた。

 

鷹田邸では、勝司・黒田・島津が新聞を広げて腹を抱えていた。
「羅刹さん‼️ 見てくださいよ!こりゃたまらん🤣」

「アハハハ‼️まさに滑らんネタだ‼️」

羅刹も堪えきれずに酒を吹き出す。
「髷を結ってやれとは……天晴れ、お蝶‼️
あのハゲザビエル、次会ったら本当に日本髪にしてやるわ!」

 

その夜、鷹田家の庭では笑い声が響いた。
どんなにGHQが日本を押さえつけようとも──
笑いと誇りは、決して奪えない。

 

だがその一方で、リチャード・X・ブラックバーン少佐は激怒していた。
「Who did this!? Who dares to mock me!!?」
机を叩き、部下に命じる。

「鷹田の一族……奴らの誰かが仕掛けたに違いない。探し出せ。」

 

こうして、笑いが火種となり、長崎に再び嵐が吹き荒れようとしていた——。


あれから数日。
長崎の町は、すっかり“笑いの旋風”に包まれていた。

その中心にいたのは──なんと羅刹の息子・玄鬼、三歳。

庭で手鞠をポンポン弾ませながら、
玄鬼は鼻歌まじりにこう歌い出した。

♪ 落ち~武者~ハゲ~ア~メ~リカ~ン~
髷~に~嫉妬で~頭ピッカリン~ ♪

 

その歌を聞いた近所の子供たちは腹を抱えて転げ回った。
「玄鬼さま、もう一回‼️もう一回‼️🤣」
「♪アーメリカーン、ハゲーッ!ハゲーッ!」

気づけば、思案橋から丸山の方まで、
手鞠遊びをしながらこの歌を口ずさむ子供たちで溢れ返っていた。

その様子を楓と沙代が縁側から見て、
思わず顔を覆う。

「……ま、また歌ってる」
「ふふ、でも元気があっていいじゃない。羅刹さまの子ですもの」

 

——だが、笑いはすぐに火種となる。

遊郭で“ザビエルハゲ”と揶揄された少佐、リチャード・X・ブラックバーンの耳にも
この“童謡”は届いてしまったのだ。

 

「……なんだと?」

部下が震える声で報告する。
「サー……長崎の子供たちが、あなたの……ええと、“髪型の歌”を……」

「髪型の歌だと!?」
リチャードの顔がみるみる赤くなる。

机を叩き、椅子を蹴り倒す。
「What’s so funny!? 何がそんなに面白いんだぁあ!!!」

部屋に響き渡る怒声。
「イエローモンキーどもが……俺を、侮辱して笑っているのか!?
この屈辱、絶対に許さん……!!」

 

その瞬間、部下たちは背筋を凍らせた。
リチャードの額に浮かぶ血管はまるで雷のように脈打ち、
まるで“怒りの亡霊”そのものだった。

そして少佐は、静かに命じる。
「情報を集めろ……“鷹田”という侍の家が、背後にいるはずだ。」

 

一方、玄鬼は庭でまだ歌っていた。

「♪ザビエル、ハ~ゲ♪」
と手を叩きながら笑う息子の姿を、羅刹は苦笑いしながら見つめていた。

「……玄鬼。歌はいいが、敵を笑う時は覚悟を持て。
笑いは、刃より鋭い時もある」

 

だが、この“子供の歌”が
のちに長崎騒乱の幕開けとなるとは、
誰もまだ知らなかった——。


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