最後の将軍

おくん血•タケルfrom八鶴な書店

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第16話 「内田父子、恥の対面」

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第16話 「内田父子、恥の対面」

夜の長崎県警本部。
重い扉の向こうでは、米軍将校リチャード・X・ブラックバーンが、葉巻をふかしながら幹部たちを前に腕を組んでいた。

「我々は秩序を守るために来ている。あの“鷹田一族”を野放しにするな。特にあの少年、玄鬼とか言ったか……」

幹部たちは顔を引きつらせながらも、逆らえない。
その中で、ただ一人だけ拳を握りしめていた男がいた――県警警備部幹部・内田聡。

「……リチャード殿、あまり子供にまで手を出すのは……」
「ハッ! 日本の警察はいつから“情”で動くようになった?」
その一言に、室内の空気が凍りつく。

内田は言葉を飲み込み、視線を落とした。
そこへ突然、ドアが勢いよく開く。

「聡ォォ!!!!!」
低く響く怒号。
現れたのは、白髪交じりの剣道着姿――内田巌(いわお)。
戦時中に軍の通訳としても働き、戦後は子供たちに剣を教えてきた老武人。
ユダの学園でも「ハゲ先」と呼ばれ慕われている男だった。

巌は息子の胸倉を掴み、睨みつけた。
「お前……アメリカの犬になったのかッ!!!!!」

会議室の空気が爆ぜた。
リチャードは面白そうに口角を上げる。
「おいおい、“サムライの血”ってやつか? だがその血はもう腐ってるぜ、ハゲ親父」

その言葉に、巌の拳が震えた。
「貴様……!!!」
今にも殴りかかろうとした瞬間、息子の聡が止める。

「やめろ父さん‼️ ここで手を出したら、本当に終わりだ‼️」
「終わってるのはお前の誇りじゃ‼️ わしは……息子が“武士の情け”も知らんとは思わなんだ‼️」

静まり返る中、巌はふらつきながら背を向けた。
「ユダの学園の者たちは、まだ魂を忘れとらん。
お前も……あの鷹田の若造らに、いつか思い知らされるだろう」

扉が閉まる。
その背中には、侍の誇りと父の怒りが滲んでいた。

リチャードは鼻で笑い、
「ハゲの血はやっぱり頭も薄いな」
と呟く。

……その場にいた全員が固まった。

視線を交わす長崎県警の幹部たち。
(……いやいや、あなたが言うな……)
(まさか、自分のこと……気づいてないのか……?)



昼下がりの長崎・丸山。
瓦屋根の上に小さな影がちょこんと座っていた。
金色の短髪が風に揺れ、頬っぺたには泥と味噌がついている。
――そう、鷹田家の三男坊、**玄鬼(3歳)**である。

手には小さな太鼓。
口から飛び出すのは、最近丸山の子供たちの間で大流行中の歌。

🎵「おちむしゃハ~ゲ、ア~メ~リカン~♪
サムライきらいでズラずれた~♪」

通りを歩く魚屋の兄ちゃんが吹き出した。
「おいおい、またやっとるぞ玄鬼坊‼️」

子供たちは太鼓と手鞠でリズムを取りながら大合唱。
「ハ~ゲ、ア~メ~リカン~♪」
そのたびに、遊郭の二階では芸妓たちが腹を抱えて転げ回る。

「もう、あの子たち、なんて歌を……!」
「でも似てるのよね、あの将校さん、ほんとに落ち武者みたいで🤣」

そして例の新聞――“丸山瓦版”の号外にはこう書かれた。

【筆者不明:長崎丸山通信】
『落武者ハゲアメリカン』が街で大流行。
子供の遊び歌ながら、将校殿には大打撃の模様。

記事には、ハゲ頭に羽織をまとった似顔絵まで添えられていた。



そのころ、異人館では怒号が飛び交っていた。
「誰が俺を“落武者”だとぉぉぉぉぉ!!!!」
机を叩き割るリチャード・X・ブラックバーン。
血管が浮き出るほどに顔を真っ赤にし、鏡を睨む。

「ハゲてなんか……ないッ!!!」
隣の副官が思わず視線を逸らす。
「……い、いや、その……ライトの反射が……」
「黙れ‼️ お前も笑っただろうがッ‼️」

その叫びは夜通し響き、
長崎の夜にまた一つ“伝説”が刻まれることとなった――。



翌朝。
丸山の路地裏。
鷹田家の者たちは子供たちの歌声を聞きながら、湯飲みを片手に笑っていた。

羅刹が煙草をくゆらせ、
「……戦わずして勝つ。坂本龍馬みたいな話だな」
黒田と島津がうなずき、
「さすが鷹田家の悪童、3歳にしてもう国際問題ッスわ」

その笑いの輪の中で、
玄鬼は手鞠を叩きながら、にこにこと鼻を鳴らしていた。

「アメハゲ、コケコッコ~🐓」

遊郭も町人も、みんな大爆笑。
まさに、戦わずして勝つ――“長崎流・平和外交”であった。
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