ダメ女神からゴブリンを駆除しろと命令されて異世界に転移させられたアラサーなオレ、がんばって生きていく!

AA1

文字の大きさ
206 / 459

206 魔法

しおりを挟む
 この鹿、ミスズと言うそうだ。

 コラウス辺境伯領周辺地域でよく見られるそうで、毎日のように捕獲依頼が出るとか。一匹捕まえたら銅貨二十枚になるそうだ。

「うーん。独特な味だな」

 鹿肉なんて食ったことないから元の世界の鹿と同じかわからないが、牛とも豚とも違う。ましてや羊にも似てなかった。

 まあ、脂身は少なく臭みもない。不味いと言うこともないから普通に食べられるけどな。

 少年少女たちを見ると、一心不乱に食べている。これはあれだ。蟹を食っているときと同じだ。現地の人には蟹に匹敵する美味さなんだろうよ。

「ミリエルはあんまり食べないが、嫌いか?」

 魔法を使ったときは人一倍食べるのに、今は百グラムも食べてない感じだ。出身が違うと蟹レベルにはならないのかな?

「いえ、嫌いではありません。ただ食べ慣れてないので……」

「無理に食べることはない。ホームにいって食べてこい。ラダリオンの分を用意もしなくちゃならんからな」

 時刻は十八時を過ぎてる。もう家に着いてホームに入ってる頃だろう。

「すみません。いってきます」

「ああ。あと、状況を紙に書いてシエイラに渡すようラダリオンに言ってくれ」

 定時報告はしておかないとな。もちろん、館のことやカインゼルさんのことを聞いてくることもお願いする。

「ミリエル、どこにいったんですか?」

 突然消えたことに少年少女たちが驚いた。

「ゴブリン駆除員だけが使える魔法で駆除員だけが入れる空間にいったんだよ。そこで情報の共有をするのさ」

 ホームのことはもう周知の事実になっているが、正確な情報は誰にも教えてない。ここで偽りの情報をちょろっと漏らしておこう。

「駆除員って、タカトさんの他にもいるんですか?」

「いるにはいるが、オレが会ったことがあるのは数人だな。駆除員になって五年以上、生き延びたヤツはいないんで」

 オレの言葉に少年少女が息を飲んだ。

「まあ、そう深刻になるな。これでも駆除員の中では新記録を出してるんだぞ。必ず五年以上、いや、老衰で死んでやるさ。オレは凡人だが、凡人には凡人なりの戦い方がある。格好悪かろうが、泥をすすろうが、絶対に生き抜いてやるさ」

 あんなダメ女神に人生を壊されてたまるか。オレは生きて生きて生き抜いて、絶対、老衰で死んでやるんだからな! 見とけ、ダメ女神が! 

「お前たちは才能があるが、才能頼りにはなるなよ。もちろん、自信を持つことは大事だ。だが、常に強者に挑む気持ちでいれば少なくとも大負けすることはない。取り返しのつく失敗はいくらしてもいいんだ。一人で冒険をしてるわけじゃないんだ、仲間同士で支え合え」

 こいつらは羨ましいくらい才能はあるが、自力で強くなるには限界があり、この世界はそんなに優しくもない。あるていど大人が導いてやらないと成功するものも成功はしない。自分一人だけで成功するヤツはほんの一握りだ。

「まあ、オレの言葉をどう受け取るかはお前ら次第。生かすも殺すも自分次第。強く望まなければ成功はしないんだからな」

 ほんと、歳を取ると説教臭くなって嫌になる。説教できるほど人生経験豊富でもないのによ。

「お前らは食事を続けていろ。オレはちょっと周りを見てくるから」

 VHS-2をつかみ、周辺の様子を伺いに出た。

 ヘッドライトの明かりだけで見回っていると、なにかの鳴き声がした。

「……鹿か……?」

 キーだかヒーだかの鳴き声が遠くから聞こえてくる。鹿は夜行性なのか?

 一通り見回り、キャンプ地に戻ってくると、少年三人が焚き火の周りに横になって眠っていた。

 まあ、若いとは言え、ゴブリンを引きずって四往復もしたら疲れ果てもするか。少し無理させてしまったな。

「そのまま眠らせておけ。夜中に交代しよう」

 七時間も眠れたら疲れも取れるだろうし、少女二人もまだ元気な様子。オレも水をちょくちょく飲んで体力回復を行っていた。体力も気力もまだまだある。

「タカトさんも休んでいいですよ。三人より動いていたんですし」

「大丈夫だよ。体力回復の魔法をちょくちょく使っていたから」

 ミシニーによれば、属性持ちだからと言って、その属性だけしか使えないってわけじゃない。他も練習したらそれなりに使えるものなんだとか。

 体力回復や治癒はミリエルに教わっている。まあ、体力が回復するときの魔力の流れ? を覚えてるだけだが、それでも四往復しても疲れないくらいには使えるようにはなった。

 ……もしかしてオレ、魔法の才能あったりすんじゃね……?

「タカトさん、魔法が使えるんですか?」

「最近、使えることを知ったよ」

 ペットボトルの封を切り、中の水を手のひらに集めた。

「水魔法ですか。珍しいですね」

「そうなのか?」

「はい。水は重いので極めようとする人は少ないんです」

 重い? 魔法使いの用語か?

 魔力が持っていかれる感覚はあるが、重いって感覚はないな。魔法で水を創り出すのは消費が激しく、周りから集めたほうが消費が少なく済む。

 それからは毎晩水を張ったバケツから水を手のひらに集め、水球にして操る訓練をしているよ。

 そして、その水を温める──まではいってません。どうもオレは火を出し難い体のようだ。

「なんとか水球を操れるようになった。次は分離だ」

 水球を二つに。二つを四つに。四つを八つに──できず崩れてしまい、地面へと落ちてしまった。

「魔法は難しいな」

 これがどんな攻撃にさせられるかは思案中だが、今は魔法が使えることが楽しくてしょうがない。

 地面に落ちた水を集め、また水球を操って魔法の練習をした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。 彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。 「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」 契約解除。返還されたレベルは9999。 一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。 対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。 静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。 「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」 これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。 (本作品はAIを活用して構成・執筆しています)

リストラされた42歳、確率の向こう側へ。~なぜか俺の選択肢がすべて正解になる件~

RIU
ファンタジー
「君には今月いっぱいで席を空けてもらいたい」 42歳、独身、社畜。会社のために尽くしてきた柏木誠は、理不尽な理由でリストラされた。 絶望の中、雨の神社で野良猫を助けた彼は、不思議な光と共に【確率固定】という異能――「無意識に正解を選び続ける豪運」を手に入れる。 試しに買った宝くじは10億円当選。 復讐心に燃える元上司を袖にし、元天才投資家の美女をパートナーに迎えた柏木は、その豪運で現代社会を無双していく。 「俺の選択に間違いはない。なぜなら、確率の方が俺に合わせるからだ」 枯れたおじさんが資産と余裕を手に入れ、美女たちに頼られながら、第2の人生を謳歌する痛快サクセスストーリー!

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで魔物の大陸を生き抜いていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。 貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。 母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。 バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。 しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。

処理中です...