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295 マイセンズの森

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 第四陣はオレ、アリサ以下八人のエルフを引き連れて町を出発した。

 ビシャとメビにえらくごねられたが、マイセンズがどういうところかもわからず、行商奴隷団のこともある。一部隊は残しておかなければ駆除に集中できないよ。

 それに、マイセンズから溢れたゴブリンがアシッカに流れてくる可能性がないわけではない。ミリエルと獣人姉妹は残しておくべきだろうよ。

 ……そもそもマイセンズがどんなところかわからないのが問題なんだよな……。

 エルフたちはなんの変哲もない森だと言ってたが、ダメ女神がわざわざ言ってくる時点でなにか問題がある場所と言っているようなもの。しかも、大人数で挑めとか、確実になにかあると明言しているようなものだ。

 ゴブリンが大量にいるのは決定的だとして、それはどのくらい大量なのだ? 一日の距離でありながらアシッカに四千匹近いゴブリンが集まった。

 集まり方も順次集まってきたって感じだ。なら、マイセンズから流れてきたとみるべきだろう。

 マイセンズにいたゴブリンがアシッカに流れてきたのなら、ダメ女神はマイセンズにいくことを中止させるはず。中止させないってことはまだいるってこと。それも、冬の間、ゴブリン駆除を続けられる数がいるってことだ。

 考えれば考えるほど疑問が出てくる。不安が募る。いきたくないと胃が痛くなってくるぜ……。

「タカト様、顔色が悪いようですが?」

 横にいるアリサがオレの顔を覗いてきた。近いよ! パーソナルスペースを考えろや。

「マイセンズのことを考えたら顔色の一つも悪くなるさ」

 彼女でもなんでもない女に虚勢を張る見栄はない。情けないと笑われようが、怖いことは怖いとはっきり言い、愚痴を言って気を晴らすのがオレという男である。

「マイセンズになにかあるのですか?」

「なにかあるのは確かだが、それがなんなのかわからないから胃が痛いよ」

「わたしには答えられませんが、タカト様の手足となり戦います」

 今のオレにはわからないことを考えてくれる頭が欲しいよ。いや、兵力も欲しいです。さらに言うならオレの代わりにやってくれる人を希望します。

「言っておくが、オレはマサキさんとは違う。ゴブリンを駆除する方法もな。ましてや特定の種族に入れ込むこともない。仲間は平等に扱う」

 ただ、優先順位はある。それを駆除員(家族)以外にしゃべるつもりはないがな。

「はい。わたしたちはそれだけで充分です」

 いまいちアリサの考えがわからない。いや、オレを引き入れることを目的としているのはわかる。そこまでニブちんではないからな。

 付かず離れず。それがアリサの行動だ。

 オレとしては依存されたり畏まれたりするよりはいいが、なんかそれが不気味なんだよな。まったく、なにを考えているんだか。

 トイレ休憩以外は昼まで歩き詰め、一時間の休憩をしたらまた歩き詰めた。

 何事もなく十六時前にマイセンズに到着できた。

 巨人たちがスコップで堀を築いており、ドワーフやエルフたちは木を伐り、枝を払っていた。

「お前たちは休め。明日から皆と混ざって木を伐って薪を作ってくれ」

 そう指示を出し、ホームからトレーラーを牽いたパイオニア三号を出した。

「タカト。スノーモービルも出してくれ。暗くなる前に周辺を見回ってくる」

 カインゼルさんがやってきてそんなことを言った。

「無理しないでください。ゴブリンの気配がちらほらとあるんで」

 そう数は多くないが、ざっと察知したところ五十匹はいて、どいつも飢えている感じだ。

「ああ。無理はしないさ。慌てなくともまた大量に現れるんだろうからな」

 カインゼルさんも同じ考えのようだ。

「そうですね。きっと飽きるほど出てきますよ。どんな風に出てくるまでかはわかりませんが」

「そうだな。油断だけはしないでおくよ」

 考えてくる頭はいないが、ベテランがいてくれるありがたさ。そして、そんな人らを指揮しなくちゃならない辛さよ。ロンダリオさんに指揮してもらいたいぜ。まあ、断られたけど!

 スノーモービルを出すと、すぐにエンジンをかけて出ていってしまった。まさか、スノーモービルに乗りたかったとかじゃないですよね?

 ま、まあ、乗りたかったとしても周辺の様子は知っておきたいのだから動機がなんであれ構わないさ。

 トレーラーから単管パイプを下ろして組み立てていき、ビニールシートを被せて簡易風呂を作った。

 アリサだけでなくエルフの女が三人ついてきたので男湯と女湯を作ります。同じ湯に入るのは嫌だろうからな。

 完成したらホーム連動型水筒を傾けて湯船にお湯を入れた。

 マグボトルサイズなので大した量は出せないが、ポリタンクから注いだり、ダストシュートを使ったりするよりは楽だ。単管パイプに括りつけておけばいいんだからな。

 缶コーヒーを飲みながらお湯が溜まるのを眺めていると、ロンダリオさんたちが戻ってきた。

「ご苦労様です。ゴブリンは見ましたか?」

 報酬がちょこちょこ入ってはいたが、誰が駆除したかまではわからないのだ。

「ああ。三十匹ほど倒したが、そんなにいるようには思えないんだが?」

「それは後々わかりますよ。それまではここを砦化して、周辺を調べていきましょう。千も二千も出てきたら大変ですからね」

「そうだな。壁がないと数で押し潰されるな」

 わかる人でなによりだ。

「タカト。グロックの弾をもらっていいか? 報酬を使い切って弾が買えないのだ」

 魔法使いのセリフじゃないが、一匹でも多く駆除してくれるならお安いご用。グロックの弾の他に使ってないAPC-9とマガジンを取り寄せた。

「これを貸しますんで使ってください。マガジンは九本しかないのでもっと必要なときは報酬から買ってください。弾はこちらで用意しますんで」

「タカト、おれにも貸してくれ。持ち運びやすいのを」

 索敵担当のマリットさんもかい。まあ、MP9も使ってないし、それを貸すとしよう。

「これもマガジンは多くないんで必要なら買ってください。ポーチとかはあとで持ってきますね」

 使い方を教えると、二人とも試してくると森の中に消えていってしまった。

「すまんな。使った弾代は払うよ」

「構いませんよ。安いときに大量に買ったものですからね」

 プライムデーのときにパレット買いをした。てか、五万発以上あって管理するのに苦労している。どんどん、とまでは言えないが、練習に千発使っても惜しくはないさ。

「ロンダリオさんたちは風呂にでも入ってください」

 満杯になったので、女湯に移った。
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