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456 牙城
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「お久しぶりです。繁盛しているみたいですね」
「マイヤー男爵領では、ここでしか魔石の売買ができないからね」
冒険者ギルドの代わりみたいなことカインゼルさんが言ってたっけ。
「約束を果たしにきました」
ゴブリンの王の魔石とロースランの魔石五個を出してカウンターに置いた。
「資金があるならもっと出しますよ」
「ヒヒッ。予想以上だね。かなり資金を用意してたんだがね」
一旦奥に下がり、箱を持って戻ってきた。
「これが限界だよ」
箱の蓋を開けると、金銀銅貨が入っていた。
「じゃあ、これで」
蓋を閉め、箱ごと受け取った。
「いいのかい? 半分にも満たないよ」
「また利用させてもらうので、そのときに返してください。これから頻繁に利用させてもらいますからね」
魔石を換金できる場所はいくつかあったほうがいいだろう。ましてやここは信頼のおける魔石屋だ。馴染みになっておくのはいいことだろうよ。
「怖いね~。なにかする男だろうとは思ってたが、ゴブリンの王にロースランかい。この分じゃ他にもっと危ないのを狩ってそうだね」
魔石屋五十年は伊達じゃないか。魔石を見ただけで事態を察せられているよ。
「ロースランの特異体、その群れに始まり、ローダーの群れ、ロスキート軍勢、終いにはグロゴールと散々な冬でしたよ」
ほんと、散々としか言いようがないわ。
「……よく生きておるな……」
「仲間に恵まれましたから」
一人だったらオレは半年も生き残れなかっただろう。ラダリオンに始まり、いろんな人が味方になってくれた。そのお陰でオレは今を生きていられるのだ。
「謙虚がすぎると嫌みになるぞ」
「事実なのだから仕方がありませんよ」
自分一人で勝ったなんて逆立ちしても思えない。皆が勝つために動いてくれたから生き残れたんだからな。
「オレは凡人ですよ。英雄にも勇者にもなれないそこら辺にいる男となんら変わりません。もし、違うとしたら自分が弱いと知っていることですよ」
弱いなら弱いなりの生き方がある。戦い方がある。もし誇れるとしたら人に恵まれた人生だってことだ。
「……怖い男だよ……」
「よく言われますが、オレは平和を愛する男ですよ」
オレのどこが怖いのだろう? オレはただ生きるために環境を調えているだけなのにな……。
「そうだね。あんたは平和の中で生きるのがよく似合っておるよ」
なかなかわかった人だ。オレにはこの世界で生きるのが苦痛でしかないよ。
「これからコラウスからアシッカ、そして、海に道を通します。街道沿いの領主は連合を組んで事に当たるでしょう。もし、馴染みの方がいるなら声をかけておいてください。わかる人はすぐに動くでしょうからね」
マイヤー男爵領で五十年も魔石屋をやっている人。横の繋がりはかなりあるだろう。この、人を見る目と口振り、おそらくマイヤー男爵領では力を持った人だろう。
なら、先に教えておいたほうが領主たちより先に動いてくれるだろうよ。
「本当に恐ろしい男だよ」
カウンターの奥に下がったと思ったら、硬貨が入った箱と同じものを持ってきた。
「あれから伝手を頼って集めたものだ。教えてくれた礼に持ってっておくれ」
蓋を開けると、パチンコ玉くらいの乳白色の魔石がたくさん入っていた。
「集めたものですね」
「五十年もやっておると伝手はたくさんできるものさ」
「怖いのはそちらのほうでしょう」
「ヒヒッ。その若さでわかるほうが怖いよ」
「言っておきますが、オレ、三十一歳ですよ。ジュリアンヌさんから見たら若造ですがね」
七十は過ぎている人から見たら三十も二十も同じなようなものだろうさ。
「三十一かい。随分と童顔だね。だが、落ち着いておる理由がよくわかったよ」
「まだまだ経験の少ない若造に変わりはありませんよ」
この世界にきて一年。まだまだ学ぶことがあって挫けそうだよ。
「ときに、ワイニーズが出たそうですが、被害はどのていどですか?」
これだけの人なら情報も手に入れているはず。情報はいくらあっても困らない。まあ、現代社会なら情報がありすぎて困るけど。
「太陽が昇る方向にカンザニアと呼ばれる高い山がある。道はあるがワイニーズが住み着いてからは冒険者も近づいておらん。そのせいか山黒が流れてきたそうだ」
また山黒? どんだけいんだよ? 牙城でも作ろうとしてんのか?
「それもう冒険者がどうこうできる事態ではないですよね?」
オレ、なんで引き受けちゃったんだろう? まあ、山黒ならそう難しくもないか。もう慣れたものだよ。
そうだ。ラダリオンか獣人姉妹に任せるか。マンダリンで上空援護すれば問題ないだろう。なにもオレがすべてを行う必要はないんだからな。
「他に注意すべきことはありますか?」
「蛇が多いと聞くが、おそらく山黒のエサになっとるだろう。蛇が少ないときは山黒が相当いる証拠だ。気をつけな」
あいつ、蛇とか食っちゃうんだ。ニョロニョロ系はメビが嫌いだそうだから数がいたほうがいいかもな。
「ワイニーズの数はどうです?」
「十から二十と言ったところだ。暖かくなったし、卵を産んでおるかもしれんな」
卵か~。それはキッチリ潰しておかないとロスキートみたいに増えそうな予感がするよ。
「ワイニーズの魔石はうちで買うよ。出たら欲しいと頼まれておるんでね」
「わかりました。取り出せたら持ってきますよ」
魔王と戦う人に渡す魔石なら山黒のを渡せばいいだろう。
「では、また」
「ああ。次に会うのを楽しみにしとるよ」
気持ちよく魔石屋をあとにした。
「マイヤー男爵領では、ここでしか魔石の売買ができないからね」
冒険者ギルドの代わりみたいなことカインゼルさんが言ってたっけ。
「約束を果たしにきました」
ゴブリンの王の魔石とロースランの魔石五個を出してカウンターに置いた。
「資金があるならもっと出しますよ」
「ヒヒッ。予想以上だね。かなり資金を用意してたんだがね」
一旦奥に下がり、箱を持って戻ってきた。
「これが限界だよ」
箱の蓋を開けると、金銀銅貨が入っていた。
「じゃあ、これで」
蓋を閉め、箱ごと受け取った。
「いいのかい? 半分にも満たないよ」
「また利用させてもらうので、そのときに返してください。これから頻繁に利用させてもらいますからね」
魔石を換金できる場所はいくつかあったほうがいいだろう。ましてやここは信頼のおける魔石屋だ。馴染みになっておくのはいいことだろうよ。
「怖いね~。なにかする男だろうとは思ってたが、ゴブリンの王にロースランかい。この分じゃ他にもっと危ないのを狩ってそうだね」
魔石屋五十年は伊達じゃないか。魔石を見ただけで事態を察せられているよ。
「ロースランの特異体、その群れに始まり、ローダーの群れ、ロスキート軍勢、終いにはグロゴールと散々な冬でしたよ」
ほんと、散々としか言いようがないわ。
「……よく生きておるな……」
「仲間に恵まれましたから」
一人だったらオレは半年も生き残れなかっただろう。ラダリオンに始まり、いろんな人が味方になってくれた。そのお陰でオレは今を生きていられるのだ。
「謙虚がすぎると嫌みになるぞ」
「事実なのだから仕方がありませんよ」
自分一人で勝ったなんて逆立ちしても思えない。皆が勝つために動いてくれたから生き残れたんだからな。
「オレは凡人ですよ。英雄にも勇者にもなれないそこら辺にいる男となんら変わりません。もし、違うとしたら自分が弱いと知っていることですよ」
弱いなら弱いなりの生き方がある。戦い方がある。もし誇れるとしたら人に恵まれた人生だってことだ。
「……怖い男だよ……」
「よく言われますが、オレは平和を愛する男ですよ」
オレのどこが怖いのだろう? オレはただ生きるために環境を調えているだけなのにな……。
「そうだね。あんたは平和の中で生きるのがよく似合っておるよ」
なかなかわかった人だ。オレにはこの世界で生きるのが苦痛でしかないよ。
「これからコラウスからアシッカ、そして、海に道を通します。街道沿いの領主は連合を組んで事に当たるでしょう。もし、馴染みの方がいるなら声をかけておいてください。わかる人はすぐに動くでしょうからね」
マイヤー男爵領で五十年も魔石屋をやっている人。横の繋がりはかなりあるだろう。この、人を見る目と口振り、おそらくマイヤー男爵領では力を持った人だろう。
なら、先に教えておいたほうが領主たちより先に動いてくれるだろうよ。
「本当に恐ろしい男だよ」
カウンターの奥に下がったと思ったら、硬貨が入った箱と同じものを持ってきた。
「あれから伝手を頼って集めたものだ。教えてくれた礼に持ってっておくれ」
蓋を開けると、パチンコ玉くらいの乳白色の魔石がたくさん入っていた。
「集めたものですね」
「五十年もやっておると伝手はたくさんできるものさ」
「怖いのはそちらのほうでしょう」
「ヒヒッ。その若さでわかるほうが怖いよ」
「言っておきますが、オレ、三十一歳ですよ。ジュリアンヌさんから見たら若造ですがね」
七十は過ぎている人から見たら三十も二十も同じなようなものだろうさ。
「三十一かい。随分と童顔だね。だが、落ち着いておる理由がよくわかったよ」
「まだまだ経験の少ない若造に変わりはありませんよ」
この世界にきて一年。まだまだ学ぶことがあって挫けそうだよ。
「ときに、ワイニーズが出たそうですが、被害はどのていどですか?」
これだけの人なら情報も手に入れているはず。情報はいくらあっても困らない。まあ、現代社会なら情報がありすぎて困るけど。
「太陽が昇る方向にカンザニアと呼ばれる高い山がある。道はあるがワイニーズが住み着いてからは冒険者も近づいておらん。そのせいか山黒が流れてきたそうだ」
また山黒? どんだけいんだよ? 牙城でも作ろうとしてんのか?
「それもう冒険者がどうこうできる事態ではないですよね?」
オレ、なんで引き受けちゃったんだろう? まあ、山黒ならそう難しくもないか。もう慣れたものだよ。
そうだ。ラダリオンか獣人姉妹に任せるか。マンダリンで上空援護すれば問題ないだろう。なにもオレがすべてを行う必要はないんだからな。
「他に注意すべきことはありますか?」
「蛇が多いと聞くが、おそらく山黒のエサになっとるだろう。蛇が少ないときは山黒が相当いる証拠だ。気をつけな」
あいつ、蛇とか食っちゃうんだ。ニョロニョロ系はメビが嫌いだそうだから数がいたほうがいいかもな。
「ワイニーズの数はどうです?」
「十から二十と言ったところだ。暖かくなったし、卵を産んでおるかもしれんな」
卵か~。それはキッチリ潰しておかないとロスキートみたいに増えそうな予感がするよ。
「ワイニーズの魔石はうちで買うよ。出たら欲しいと頼まれておるんでね」
「わかりました。取り出せたら持ってきますよ」
魔王と戦う人に渡す魔石なら山黒のを渡せばいいだろう。
「では、また」
「ああ。次に会うのを楽しみにしとるよ」
気持ちよく魔石屋をあとにした。
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