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第1章 騎士見習いの誕生
1.騎士見習いの誕生
しおりを挟む1章 騎士見習いの誕生
オルタナ王国中心部オルタナ魔導学園前
黒色の艶のある短い髪が風になびいて中性的な顔立ちがより目立った。
「今日は風が強いな…」
白月 仁(しろつき じん)はオルタナ魔導学園前の桜道にいた。
「体育館は…あっちか…」
仁が体育館へ行こうとしたその時1人の男の卑しい声が耳に入った。
「なぁなぁ良いだろ?一緒にサボってデートしようぜ」
「困ります。私はこれから体育館へ行かないとダメなので…」
一緒にいるのは綺麗な銀色の髪を長いツインテールにまとめた翠色の瞳を持つ女の子でどうやら絡まれている様だ。相手も新入生に見えるが…
(とにかく止めないと)
仁はその男に近寄った。
「ねぇ君、この娘が嫌がっているじゃないか?もう辞めにしたらどうだい?」
すると男は殺気を隠さない視線を送ってきた。
「あぁ?なんだテメーは?ここに居るって事は俺がブレイザー(魔討者)だって分かってんだよな?」
「もちろん。でも校外校内問わず許可された場所以外での霊装の使用は違反だよ?」
「知るかんなもん!?これ以上俺の邪魔すんならその頭かちわるぞ!来い!北方丸!」
男はそう言うと大剣の霊装を右手に顕現させた。
「…。はぁ…」
仁は一言も発さず小さいため息をついた。
(やっぱりこうなっちゃうか…仕方ない。)
「何だァ?ビビったか!?オラぁ!!」
男の大剣が仁に向かい振り下ろされた。だが仁は霊装を出さなかった。
(今は色は要らない。)
仁は意図的に虹彩の機能を停止させ視界から色を消した。
(匂いも。音もいらない。)
仁は自らの世界から色と匂い、音を消しその分の神経を眼球の動体視力へと移した。
そうすると落ちる桜の花から相手の動きまで全てがスローモーションになった。
(重心を前に出している。それに大剣の重みもある。)
仁は相手の腕を引き、つま先を引っ掛けた。すると男は大剣の重さと自分の勢いで顔から地面に突っ込んでしまった。
仁はそれを見ないうちに女の子の方へ駆け寄った。
「大丈夫?何かされた?」
すると女の子は翠色の瞳を驚きで一杯に開き訊いた。
「あ、ありがとうございます。今…何をしたんですか?」
さっきの仁の動きは到底並の人間には目視する事は出来ないだろう。故に驚く事は不思議ではない。今までも何度かこの様な事はあった。
「別に、少し足を引っ掛けただけだよ。」
「テメェ、一体何しやがったぁ!」
男が痛みを堪えつつ起き上がってきた。
「別に何もしていないよ。それともまだやるかい?そうすればタネが分かるかもね」
「クッ…覚えてろよ!」
仁が言うと男は怯み去っていった。
(まるでドラマみたいな捨て台詞だなぁ)
「行っちゃったね。僕は白月 仁(しらつき じん)。君は?」
「私は三条 要(さんじょう かなめ)です。さっきはありがとうございました。」
そう言うと深くお辞儀をされた。
(三条って…どっかで聞いたことある気が…まぁ良いか。)
「じゃあそろそろ時間だし、体育館行こうか。」
「あ、はい。そうですね。行きましょうか。」
そう言うと2人は並び体育館に向かった。
腰まで伸びる黒い髪と茶色の瞳を持つ学園長 暮石 秋(くれいし あき)の透き通る声が体育館に響いた。
「え~君達も知っているだろうが、我が校は3000人に1人の確率で生まれる魔力を用いて異能力を使い、己の魂を霊装として具現化させる事の出来る魔討者を育成する学校だ。」
魔討者は強力な力を持つがそれ故に義務がある。その1つが魔導学園への強制入学だ。
「君達には国を魔物から護る為の力を付けてもらう。それを支援するのが目的だ。まぁ…こんなもんか、後は担任に任せた。とりあえず頑張れ~」
「「「はぁっ!!?」」」
(先生方が驚いているのは見間違いだろうか…)
「え~て事で、私が1-B 27人の担任の神道 綾音(しんどう あやね)です。よろしくね♪」
ふわふわとした茶色い髪と綺麗な黒い瞳を目立たせる仕草で微笑んだ。
「じゃあまずは自己紹介して貰いましょう!廊下側の人からお願いします♪」
(どう挨拶すれば目立たないか…)なんて考えていると今朝会った女の子三条さんがいた。
(同じクラスなんだ、後で声かけてみよう)
更に数人が挨拶し自分の番になった。
「では次の人お願いします。」
「白月 仁です。気軽に声をかけてくれると嬉しいです。よろしくお願いします。」
ふと見ると三条さんと目が合ったのだがすぐ逸らされてしまった。よく見ると頬が紅く染まっていた。
(何か嫌われる事したっけ…?)
仁が悩んでいると全員の自己紹介が終わったらしい。ほとんど聞いていなかったが…
「えー、それでは皆さん終わりましたね。じゃあ次は…えっと…あ、生徒手帳を配りますね♪」
程なくして全員に生徒手帳が配られた。この生徒手帳が特殊で端末型の生徒手帳で普通に携帯端末としても使え、買い物の際には月に5万円までクレジットカードとして使える万能な物だ。
また、自分の魔力量も見ることが出来る。
白月 仁
魔力量:平均+386
(平均+386…)
入学生の平均は190だ。つまり僕の魔力量は576…?馬鹿げている。
(故障してるのか…?)
後で先生に相談しよう考えていると神道先生が口を開いた。
「これで皆さんは立派な生徒であり騎士見習いです!頑張って下さいね♪
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