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レナードの魔法2
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「ねぇ、会った事も話した事もない女と『結婚したい』って、どういう心理なの?」
「会った事はありませんが、俺はリュシルを知っています」
「ガスパールから聞いていたから?それくらいで、人を好きにならないでしょ」
「俺は祖父の知らないリュシルを知ってますよ。これに見覚えはありませんか?」
レナードが持っているのは、黄ばんだ羊皮紙。
「何それ?」
「リュシルの友達です」
レナードが羊皮紙に魔力を送ると、ポンっと何か出てきた。子どもが描いた落書きが、立体化して動いてる……そんな感じのもの。
「なにこれ……?」
「猫です」
猫……これが?
耳と尻尾でかろうじて、猫か犬か狐か……そんな風に見えなくもないけど……魔物に近い気がする……
「私にこんな友達はいないわ」
「これはリュシルが描いた絵です。この子には、リュシルの魂の一部がこもっているので、どんな人なのか教えてくれるんですよ」
「レナード、貴方その魔物みたいなのと、お話出来るの?」
「俺の特質魔法です。心を込めて作られたものに魔力を与えると、意思を持ちます。もちろん、作られた時の記憶も」
「凄いわね……」
って、感心してる場合じゃない。
「その『猫みたいな物体』は、私の事をなんて言ってたの?」
「寂しがりやで、描いた絵に話しかけていた…とか、花に名前を付けて毎朝挨拶をしてた……とか」
話だけ聞いていたら変人でしょ……
「記憶は映像化して見えるので、俺は子供のリュシルも知ってます」
「許可なく人の行動を覗かないで」
「リュシルの行動を覗いてるわけではなく、ルルの記憶ですから、文句言われる筋合いはありません」
それはそうだけど、なんか腑に落ちない。
「ガッカリしたでしょ。こんな性格の悪い女だって、ルルは知らないもの」
「リュシルは何も悪くないですよ。悪いのは貴女を騙した祖父や国王です。恨まれても許されなくても、それは仕方がない事です」
「貴方ももれなく、その悪い人に含まれてるけどね」
「はい……解ってます……」
めちゃくちゃ落ち込んでるわ。
「早く良い人になって、私を開放して」
「なら、悪い人のままで構いません」
開き直ってる。
「結婚するならもっと若い子がいるでしょ。私、年下は好きじゃないの」
「俺はリュシルより1才年上ですが」
「貴方、21才なの?18才のガスパールにソックリなのに?」
「18の祖父を見たことがないので答えに困りますが、リュシルと結婚する条件は1つ満たしたって事ですね」
「私はもう70近いお婆ちゃんなの。子どもと結婚なんてしない」
「俺は成人してますが」
ああ言えばこう言う……
「レナード、貴方はその猫みたいなのに洗脳されてるのよ。早く目を覚ましなさい」
「『猫みたいなの』ではなく、ルルです」
「そこは重要じゃないんだけど」
「そんな事を言わないでください。ルルが悲しんでるので」
猫みたいなのが、レナードの膝の上で小さく丸まってしまった。もしかして、拗ねてる?
「あの……ルルちゃん?ゴメンね」
「ルルはリュシルに似て頑固なので、しばらくはご機嫌ななめです」
「私に似ているなら、貴方になつかないわよ」
「会った事はありませんが、俺はリュシルを知っています」
「ガスパールから聞いていたから?それくらいで、人を好きにならないでしょ」
「俺は祖父の知らないリュシルを知ってますよ。これに見覚えはありませんか?」
レナードが持っているのは、黄ばんだ羊皮紙。
「何それ?」
「リュシルの友達です」
レナードが羊皮紙に魔力を送ると、ポンっと何か出てきた。子どもが描いた落書きが、立体化して動いてる……そんな感じのもの。
「なにこれ……?」
「猫です」
猫……これが?
耳と尻尾でかろうじて、猫か犬か狐か……そんな風に見えなくもないけど……魔物に近い気がする……
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「レナード、貴方その魔物みたいなのと、お話出来るの?」
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「凄いわね……」
って、感心してる場合じゃない。
「その『猫みたいな物体』は、私の事をなんて言ってたの?」
「寂しがりやで、描いた絵に話しかけていた…とか、花に名前を付けて毎朝挨拶をしてた……とか」
話だけ聞いていたら変人でしょ……
「記憶は映像化して見えるので、俺は子供のリュシルも知ってます」
「許可なく人の行動を覗かないで」
「リュシルの行動を覗いてるわけではなく、ルルの記憶ですから、文句言われる筋合いはありません」
それはそうだけど、なんか腑に落ちない。
「ガッカリしたでしょ。こんな性格の悪い女だって、ルルは知らないもの」
「リュシルは何も悪くないですよ。悪いのは貴女を騙した祖父や国王です。恨まれても許されなくても、それは仕方がない事です」
「貴方ももれなく、その悪い人に含まれてるけどね」
「はい……解ってます……」
めちゃくちゃ落ち込んでるわ。
「早く良い人になって、私を開放して」
「なら、悪い人のままで構いません」
開き直ってる。
「結婚するならもっと若い子がいるでしょ。私、年下は好きじゃないの」
「俺はリュシルより1才年上ですが」
「貴方、21才なの?18才のガスパールにソックリなのに?」
「18の祖父を見たことがないので答えに困りますが、リュシルと結婚する条件は1つ満たしたって事ですね」
「私はもう70近いお婆ちゃんなの。子どもと結婚なんてしない」
「俺は成人してますが」
ああ言えばこう言う……
「レナード、貴方はその猫みたいなのに洗脳されてるのよ。早く目を覚ましなさい」
「『猫みたいなの』ではなく、ルルです」
「そこは重要じゃないんだけど」
「そんな事を言わないでください。ルルが悲しんでるので」
猫みたいなのが、レナードの膝の上で小さく丸まってしまった。もしかして、拗ねてる?
「あの……ルルちゃん?ゴメンね」
「ルルはリュシルに似て頑固なので、しばらくはご機嫌ななめです」
「私に似ているなら、貴方になつかないわよ」
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