この婚約、白紙に戻させていただきます

シンさん

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お散歩

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 ここにいたって何も情報は手に入らないし、街に出て話を聞いてまわろう。
 私が逢魔が刻の森に入る前には子供でも魔法が使えたし、今でも生きてる人はいるよね。今時の軟弱な魔法使いより、きっと色々知ってるはずよ。
 同世代……と言って良いか解らないけど、同じ景色を見ていた人と話せるのは、気分転換にもなるしね。

「この腕輪をしていても、半径2Kmくらいなら離れられるよね」
「恐らく……」
「それなら、私は気分転換にお散歩してくるわ」
「それなら、俺も一緒に行きます」
「貴方と離れて一人になりたいから、散歩したいの」
「……」
「じゃあ、言ってきます」

 私は窓から飛んで、城から出た。

 広場に着地すると、皆が私を見ていた。

 何がそんなに珍しいのかな。まさか、私、どこかおかしい?
 森で過ごしてる間に50年もたってるんだし、時代遅れなのかも。


「魔法使いだ!」
「お姉ちゃん、魔法が使えるの!?」


 そっか。魔法使いは珍しいんだ。
 50年前は当たり前だったから、こんなにも注目されるとは思わなかった。

「ねえ、もう一回飛んでみせて!」
「うん、いいよ」

 ふわりと中に浮かんで見せると、子供たちだけじゃなく周りにいた人が沢山集まってきた。

「ねぇ!僕も飛びたい!!」
「いいよ。私が、指を鳴らすから、そうしたら皆は力いっぱいジャンプしてみて」
「うん」

 パチン

 鳴らした時にジャンプした人達は、全員浮いている。

「すごーい!!」
「飛んでるっ!!」
「キャー!怖いーっ!!」

 子供たちは喜んでるけど、大人は真っ青ね。

「焦らないで。落ちないから大丈夫よ。今、下ろすわ」

 昔もこうやって魔法を使って遊んでたっけ。

「リュシル……?」

 私に話しかけてきたのは、白髪頭のお爺さん。


 どうしよう、誰だか解らない。

「わしじゃ、ソロム家の馬の世話をしてたメノウじゃ」
「メノウ、あの小さかったメノウなの?」
「ああ、やっぱりリュシルか……」
「ええ」

 メノウは私が逢魔が刻の森に行く時、見送りに来てくれた。その時はまだ9才だった。50年近く経ってるって、実感してしまう。
 それにしても、顔色がよくないわ。何かあったのかな。

「リュシル、頼みがある」
「勿論、出来ることなら何でもするわ」
「孫を助けてくれ……」
「病気?」
「流行り病で、体が動かなくなってるんじゃ」

 体が動かない?

「それって、体が硬くなって、木のようになってたりする?」
「ああ、そうじゃ」

 まさか、王子と同じ?

「流行り病って、そんな人が沢山いるの……?」
「ああ、医者に診せても何が何だかわからんらしい」
「すぐ連れて行って。家は、前と変わらない?」
「同じだ」

 それを聞いて、私はすぐにメノウの家へ転移した。

「メノウ、お孫さんは?」
「こっちじゃ」

 案内された部屋には、手足が木偶化した女の子が寝ていた。

「何日前からこんな風になったの?」
「先週から……」

 王子と同じだわ。
 まだこの子は完全に木偶化していない。私の魔力を与えれば、進行を遅らせる事が出来るかも。ううん、駄目だわ。今の子には、魔力を維持する器官がないってレナードが言ってた。私の魔力は負担にしかならない。

 この魔法と寸分違わず同じ量の魔力量で、相殺させるか、この特質魔法を奪うしか無い。

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