私はただの身代わりで、婚約者ではありません

シンさん

文字の大きさ
14 / 22

時間の無駄

しおりを挟む
今日も朝から、マナー、レッスン。こんな事を続ける。

「はぁ…疲れた……」


婚約発表まで後1ヶ月、婚約を破棄しなければ!!

けどね、
会わないとどうしようもなくない?
何も出来ないまま『婚約発表』なんて事になりかねないのでは…。
どうにか近づかないと!

「アっ!アイリーン様!」

「ん?どうしたの?」

マリーが焦って私の所へ来た。

「…っ、只今城から知らせがありまして、『15時に城に来て下さい』っとの事です!!早く仕度を!」

「なんですって!?」
さっそくチャンス到来!!自ら私を城へ招くとは。
そうかっ!向こうも乗り気じゃなかったし、どうせ『結婚するなら自分の事を好きな女がいい!』とか、『私みたいな外見の人は無理!』とかで、婚約破棄の道を一緒に模索してくれるとか!?


これで1歩前進!!


と、思ってたのに……
現実って残酷だよね…


「発表の時に着るドレスは、こちらで用意する。」

よばれたのは、その採寸のため…って、どうでもいいわーー!!
採寸する人たちも、みんな嫌そうな顔をしてるしビクビクしてる。私には一切喋りかけても来ない。
この人達も『氷雪の姫の転生』説を信じてるの?馬鹿なの?

でも丁度いいわ。

ふふふ…
何故なら、ここに来たもう一つの目的は禁書を探す事!!


「終了いたしました。」
「それでは私共はこれで…」

「ちょっと、待って」
私が呼び止めると、嫌そうに視線を向けられた。

「貴女達が着ているその服。私にも1着頂けないかしら?」
「…何故ですか?」
「何故か、それを貴女に言う必要があるのかしら、ねぇ?」
「私どもの着る服は、アイリーン様に着せられるような服ではございません。服が必要なのであれば、他を…」
ガチャーッン
全部言い終わる前に、私は鏡を思いっきり殴った。もちろん鏡はわれますし、手は傷つきますし、血は…若干…手から滴り落ちました。
けど、それも計算のうち。

ドンドンッ

「何かございましたかっ!?」
「アイリーン様っ!!」

部屋の外でまってる衛兵?が、焦ってる。

「大丈夫、少し転んでしまっただけよ」

「あの…血が…」

私の様子を見てみんな真っ青になった。

「…アイリーン様…一体何を…」
「これ、あなた達が私を傷つける為にやったのだって言えば、どうなるのかしら。」

う…意地悪なこと言ってごめん!!でも、背に腹は変えられない!禁書を盗める可能性を増やしたいの!!
貴女たちの服があれば目立たないから、可能性はかなり増える。

「…本当の事を言います。」

私の姿を見ても、まだ強気な態度を保った人がいる。

「へぇ、いいわよ。けれど、私とあなた達、首が飛ぶのはどちらでしょう?」

今、どういう状態で、どんなことが起こりえるのか…想像して言ってみた。
あくまで想像!!
どうなるかなんて私にわかるわけないんだけど。でもね、今の私は婚約者だし『氷雪の姫』、国に害なす存在…怖くないはずがない!

最後にだめ押し、私はニコっと笑って見せる。


「では、1枚…」
…くださいって言おうと思ったのに…!
「アイリーン、どうした?開けるぞ。」

うわ!殿下と、騎士団長が部屋に入ってくる!!

「ちょっと、待ってください!!」

私は急いで自分が着てきた服の裾をさき、さっと傷口にまいた。

ガチャ

「どうした?」

ヤバい…すごくヤバい…だってさ、これバレたら、本当にこの人たちに何か罰がくだるんじゃない?
私の身勝手で、それはダメ!!

「私が鏡を殴って、割ったんですよ。」 

脅迫していた事はバレないようにしないと…!

「…なぜそんな事を?」

訝しげな顔で、グレアム様は私に視線を向ける。

「私は私の顔がとても嫌いなんです。『氷雪の姫の転生した姿』などと、この容姿でどれだけ辛い思いをしたか…」

「…くだらない」
「ええ、結局は他人事、ご理解頂けるとは思っておりません。」

まずいな…結構傷が深かったのかも。血が沢山出てる気がする…後ろ手に隠しているとはいえ、気がつかれる可能性がある。

「では、用意がととのいましたら殿下のもとへまいりますので、退室を。」

とりあえず、何でもいいから早く出ていって!服にいっぱい血が付いちゃうでしょう!!

「……わかった。」

バタン

「はぁ…」
よかった。わりとあっさりと出ていってくれた。

「皆さん、ごめんなさい…殿下が来るなんて思わなかったんです。何かあったら絶対私がなんとかしますから、採寸の仕事は終わってるし退室してください。」

皆を追い出してから傷口をみたら、鏡の破片が刺さっていた。

「いっったい!!」

冷静になると、痛みが酷くなった…。
こんなこと、しなきゃよかった。


・・・・

「殿下、いいんですか?万が一の為に部屋を変えた方が…」
「…大丈夫だろう」
「…殿下、あの鏡見ましたか?あの割れ方、何の躊躇いもなく一撃ですよ。」
「そうだな。」
「そうだなじゃなくて、心配にならないんですか?一応婚約者でしょう?」
「………」
「傷、結構深いかもしれませんよ。本人は上手く隠せてるつもりだったんでしょうけど、鏡にも床にも血がついてましたから」
「だから医師に至急向かうよう伝えさせた。」

そんな事はギルに言われなくてもわかってる。手を差し出さなかったのは、向こうがそれを拒否していたからだ。
早く出ていけ…っという視線だった。
婚約などしたくない、破棄したい、と願っている相手の顔など見たくないだろう。

「ギル、あの容姿はそんなに悪い事なのか?」
「まぁ、『氷雪の姫の転生した姿』とか、馬鹿みたいな事言ってる奴等も多いみたいですし。」
「馬鹿馬鹿しい。」
「そうですね。私からすれば綺麗としか思えませんから、アイリーン様は。殿下はどうですか?」
「…さぁ」
「へぇ、不細工って言わないって事は、結構気に入ってるって事……って何で睨むんですか!」


禁書など開く事ができなければよかったのに…

俺も…アイリーンも。

彼女の読んだ書は恋愛ものだと言ってた。
俺のはよくわからない。

俺の本は1ページ目にしか書かれていなかった。あとは白紙。

もしも『あなた』がいなければ、私に生きる価値はない。だから『あなた』のためならば、この身は全て差し出そう…


この作者は何を思ってこんな事を書いたのか…到底俺には理解できない。


禁書…限られた人間にしか開けられない。なら、それを書いた者は、どんな者なのか…
最後に行き着くのは、いつもその謎だけだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

処理中です...