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【第六章】悪役令息の奔走
(5)悪役令息と従者と…
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俺が貶されるのは、俺自身がポンコツだからである。
だが、エリオットはよっぽど俺なんかより優秀であり、見下される筋合いはない。
俺が彼を利用するのも事実であり、彼が俺を守る必要は最初からないのに。
(…俺は)
そろそろ自己嫌悪がはじまる。
やっぱり俺のせいだよ。
言い合いには負けるし、ヘルプを出して助けてくれたエリオットを俺は守ることもできないし。
こんな駄目なやつで本当にすまない…
本当にそろそろだめです。
俺は泣きそうです…
「私は」
エリオットはぽつりとつぶやく。
握っていた手に力が入り、俺もエリオットの手を握り返した。
「愛も知らないクソ野郎に、ありもしない愛を語られるのは生理的に無理です」
「ほう?」
「ガーグス教だかなんだか知りませんが、本当に可愛そうな方です。人に説教する暇があるのなら自分を見つめ直すがいい」
エリオットは吐き捨てる。
対するラゼルはせせら笑う。
「全てが負け惜しみのようにしか聞こえないな」
「ご自由に受け取ってどうぞ」
エリオットはどこまでも胸を張って堂々としている。
ここに彼がいてくれてよかった。
たぶん俺一人だったらとっくのとうに泣き出していた。
「そこまでにしておけ」
凛とした鋭い声がカットインした。
意外にも、その声は教室から出てきたフランツによるものだった。
「フランツ殿下か」
「生徒会長、貴方の言い分はわかるが強い言葉を選ぶがゆえに聞くに堪えない」
ラゼルは俺から視線を外さないまま忌々しそうに言う。
「また庇護に頼るのか悪魔め」
フランツはそんなラゼルに言う。
「俺はお前と話しているのだが、俺の言葉を聞く気はないのかクラ―ゲル生徒会長?」
…珍しくフランツの声が苛立っている気がする。
ここでやっとラゼルは俺から視線を外し、フランツを見た。
俺は緊張の糸が切れそうになったが踏ん張った。
「今日のところは帰ってくれ。学友たちが怯えている」
「…甘いな殿下は。そうやって貴様もつけ込まれるぞ?」
「帰ってくれと言ったのが聞こえなかったのか?」
フランツの威圧。
いつも言い合いをすることはあったが、その時に比べて力強さが段違いだった。
ラゼルは相手を刺すような言動だったが、フランツは一言一言が重く相手を潰すような圧力。
針で刺すような相手に対して不動のごとく。
「クラ―ゲル生徒会長、どうぞお帰りください」
丁寧な口調でありながら、少しでもそれに従わなければ今度こそ潰す。
そんな覇気を放ちながら俺とエリオットの前に一歩踏み出した。
(つ…つよい…)
王族の肝の座り方は一味違うと今更知った。
「…帰るよ」
睨み合いは続いていたが、ラゼルの方が引いた。
ラゼルの団体はやっと教室前の廊下を去った。
(…た、助かったぁ…)
後ろ姿が見えなくなるのと同時に俺は胸を撫で下ろす。
それはエリオットも同じだったらしく、深いため息を吐いていた。
フランツはというと、振り返って俺たちの方を見る。
「俺も少し言い過ぎただろうか?」
呑気にそんな事を問いかけられて、俺は拍子抜けした。
「いいや、ありがとう。助かったよ。あのまま言い合いが続いていたらどうにもならなかった」
あの鬼畜眼鏡はやる気満々だったし、丁度よかったよ、うん。
「それにしても珍しいな。お前が俺を助けるなんて…お前は生徒会側の人間だと思っていたぞ?」
「ベリルが泣きそうになってぷるぷる震えているのが見えたから出て来ただけだ」
「…。」
くそっ!!!!!!フランツには全部バレていた!!!!!!
俺は恥ずかしさで顔を真赤にしていたが、エリオットの表情は晴れなかった。
「エリオット?」
「…すみません、私が至らないばかりに、ベリル様に恥をかかせてしまいました」
「そんなわけないだろ。お前がいてくれて俺は助かった。それに、生徒会の話をするために俺を呼ぼうとしたんだろ?」
「はい…ですが、結果的にフランツ殿下の助けを借りることになりました」
エリオットはキッとフランツの方を見る。
「お礼は言いませんからね」
「ああ。俺も旧友を守っただけだから気にするな」
「そういうところが一々気に食わないんですよね。格好をつけるところといい…はぁ~…」
二人が話し合う姿を見て俺は何だが気が抜けてきた。
「もしかしてフランツとエリオットって仲がいいのか?」
「そんなことはありません。私は馴れ合うつもりはありませんので」
エリオットはフンとそっぽを向く。
そんな姿をフランツは見据えているだけである。
まぁ何にしても、一難去ってよかったとしよう。
不安から解放されたことにより俺は自らの胸を撫で下ろした。
だが、エリオットはよっぽど俺なんかより優秀であり、見下される筋合いはない。
俺が彼を利用するのも事実であり、彼が俺を守る必要は最初からないのに。
(…俺は)
そろそろ自己嫌悪がはじまる。
やっぱり俺のせいだよ。
言い合いには負けるし、ヘルプを出して助けてくれたエリオットを俺は守ることもできないし。
こんな駄目なやつで本当にすまない…
本当にそろそろだめです。
俺は泣きそうです…
「私は」
エリオットはぽつりとつぶやく。
握っていた手に力が入り、俺もエリオットの手を握り返した。
「愛も知らないクソ野郎に、ありもしない愛を語られるのは生理的に無理です」
「ほう?」
「ガーグス教だかなんだか知りませんが、本当に可愛そうな方です。人に説教する暇があるのなら自分を見つめ直すがいい」
エリオットは吐き捨てる。
対するラゼルはせせら笑う。
「全てが負け惜しみのようにしか聞こえないな」
「ご自由に受け取ってどうぞ」
エリオットはどこまでも胸を張って堂々としている。
ここに彼がいてくれてよかった。
たぶん俺一人だったらとっくのとうに泣き出していた。
「そこまでにしておけ」
凛とした鋭い声がカットインした。
意外にも、その声は教室から出てきたフランツによるものだった。
「フランツ殿下か」
「生徒会長、貴方の言い分はわかるが強い言葉を選ぶがゆえに聞くに堪えない」
ラゼルは俺から視線を外さないまま忌々しそうに言う。
「また庇護に頼るのか悪魔め」
フランツはそんなラゼルに言う。
「俺はお前と話しているのだが、俺の言葉を聞く気はないのかクラ―ゲル生徒会長?」
…珍しくフランツの声が苛立っている気がする。
ここでやっとラゼルは俺から視線を外し、フランツを見た。
俺は緊張の糸が切れそうになったが踏ん張った。
「今日のところは帰ってくれ。学友たちが怯えている」
「…甘いな殿下は。そうやって貴様もつけ込まれるぞ?」
「帰ってくれと言ったのが聞こえなかったのか?」
フランツの威圧。
いつも言い合いをすることはあったが、その時に比べて力強さが段違いだった。
ラゼルは相手を刺すような言動だったが、フランツは一言一言が重く相手を潰すような圧力。
針で刺すような相手に対して不動のごとく。
「クラ―ゲル生徒会長、どうぞお帰りください」
丁寧な口調でありながら、少しでもそれに従わなければ今度こそ潰す。
そんな覇気を放ちながら俺とエリオットの前に一歩踏み出した。
(つ…つよい…)
王族の肝の座り方は一味違うと今更知った。
「…帰るよ」
睨み合いは続いていたが、ラゼルの方が引いた。
ラゼルの団体はやっと教室前の廊下を去った。
(…た、助かったぁ…)
後ろ姿が見えなくなるのと同時に俺は胸を撫で下ろす。
それはエリオットも同じだったらしく、深いため息を吐いていた。
フランツはというと、振り返って俺たちの方を見る。
「俺も少し言い過ぎただろうか?」
呑気にそんな事を問いかけられて、俺は拍子抜けした。
「いいや、ありがとう。助かったよ。あのまま言い合いが続いていたらどうにもならなかった」
あの鬼畜眼鏡はやる気満々だったし、丁度よかったよ、うん。
「それにしても珍しいな。お前が俺を助けるなんて…お前は生徒会側の人間だと思っていたぞ?」
「ベリルが泣きそうになってぷるぷる震えているのが見えたから出て来ただけだ」
「…。」
くそっ!!!!!!フランツには全部バレていた!!!!!!
俺は恥ずかしさで顔を真赤にしていたが、エリオットの表情は晴れなかった。
「エリオット?」
「…すみません、私が至らないばかりに、ベリル様に恥をかかせてしまいました」
「そんなわけないだろ。お前がいてくれて俺は助かった。それに、生徒会の話をするために俺を呼ぼうとしたんだろ?」
「はい…ですが、結果的にフランツ殿下の助けを借りることになりました」
エリオットはキッとフランツの方を見る。
「お礼は言いませんからね」
「ああ。俺も旧友を守っただけだから気にするな」
「そういうところが一々気に食わないんですよね。格好をつけるところといい…はぁ~…」
二人が話し合う姿を見て俺は何だが気が抜けてきた。
「もしかしてフランツとエリオットって仲がいいのか?」
「そんなことはありません。私は馴れ合うつもりはありませんので」
エリオットはフンとそっぽを向く。
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まぁ何にしても、一難去ってよかったとしよう。
不安から解放されたことにより俺は自らの胸を撫で下ろした。
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