BLゲームの悪役令息に異世界転生したら攻略対象の王子に目をつけられました

ほしふり

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【第六章】悪役令息の奔走

(6)悪役令息の作戦会議

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その日の昼休み。
俺とエリオットは合流して、報告を改めて聞くことになった。
場所は校舎裏。
人気がない場所を選んで、会話を誰かに盗み聞きされないように俺が周囲に魔術をかけておいた。

「最近、秘密倶楽部でお客様と従者の間でトラブルが増えていました」
「トラブル?」

それも従者と客の?

「…奴隷は挟まずに?」
「はい。主にお客様の従者に対するクレームばかりです。奴隷と行為が上手くいかなかったからお前が相手をしろだとか、プレイ自体が気に入らなくてそのまま陰湿な嫌がらせが従者に続いています。最近の私はその処理に追われていました」

セクハラとカスハラのあわせ技かよ…
陰湿だなぁと思いながら続きの話を聞いた。

「相手の言い分としては、奴隷には酷いことはしていないから問題ないと言っています…本当にこちら側を舐めてくる連中ですよ」

やれやれと疲れたようにエリオットがため息を吐く。

「迷惑行為による出禁リストは作っているのですが、根源を叩かなければ普通の客たちにも舐められることになります。それで、調べたところその根源は生徒会であることがわかりました」
「あいつらが迷惑客を送り込んで来たということか」

エリオットは手元の紙束を俺に渡す。
受け取った内容を確認すれば、ラゼル・フォン・クラーゲルの経歴が書かれている。

「ラゼル・フォン・クラーゲル。実家はガーグス教の本部であり、教団の信仰が強く反映されています」
「うーん…」

俺は頭を抱える。
ガーグス教とは、このゲームのオリジナル宗教である。
女神を崇拝する信徒たちは、女神…つまり女性に置き換えると、女性を犯す男たちの欲は邪悪なものとされている。
ガーグス教の男性は精通した日から貞操帯を身に着け、一切の自慰行為さえも禁止される。
その他にも、目につく淫らな物に対して規制が徹底されており、たとえ宗教画だろうと女性の足を見るのは禁止。
書物に関しても魔術書などに書かれている裸体などは禁止されており、悪魔の読み物とされている。
そのことから昔にも魔導の家系であるフェリスト公爵家と衝突することが何度もあった。
崇敬な信徒たちは、女神に祈りを捧げる杭を持ち歩いており、悪魔にそそのかされた信徒はその杭で罰を受けるとか…そういう話だったはず。
子供の頃から性的なことは禁止されていることについて、自分たちの宗教の中だけでそれをするのはかまわないのだが…

(こういう事は総じて自分たちの主張を周りに押し付ける集団だよなぁ)

ガーグス教の奴らは性行為や知識に関して規制過激派である。
無論、同性愛も禁止されており、刺激と娯楽を推奨する悪役令息ベリルとは相性が悪い。

(あちらから見れば、俺は色欲に堕落させる悪魔にしか見えないわけだ)

とはいっても、向こうも迷惑客を送り込んで散々なことをしてくれた。
おまけに今日の朝に宣戦布告という名の警告をされた。
…さて、これからどうしようか?

(原作の場合、ラゼルにはいくつかのパターンが有るのだが…)

ひとつ、生徒会長はそのままフランツ派であり続けてエンディングを迎える。
主人公であるリズがフランツやサイラスとエンディングを迎える場合はラゼルもそれに手を貸すので、その流れになる。
…だが、朝にフランツとラゼルの言い合いを聞いた限りあまり良い仲であるとは思えない。
これから仲が深まるのかどうなのか…
ひとつ、いつの間にかベリルの傀儡になっており、手下としてリズやフランツたちと敵対する。
こっちの場合は原作では深く語られることはない。
俺がゲームをプレイしていた時は「たぶんこいつもベリルに滅茶苦茶なことをされたんだろうなぁ」と思っていた程度だった。
そして、なぜ俺の原作知識がここまでふわふわなのかと言うと…

(ラゼルに関しては、姉がいつの間にか攻略していた事もあり、俺はラゼルルートを最初のあたりしかしらない)

姉いわく、ベリル様に対して陰湿陰険な眼鏡キャラは鼻っ柱を居るのが醍醐味だから先に折っておきました…とのことらしい。
恥辱奴隷学園というゲームであるがゆえに最初の獲物としては楽しかった、と、姉はハンターの目線でそう言った。

(さすがに姉の受動喫煙の情報だけでこのイベントを乗り越えるのは難しいぞ…)

何かないのか?
俺はベリルの記憶を手繰り寄せる。

(ラゼル・フォン・クラーゲル…ガーグス教…実家の情報でも…何かないかな?)

そう考えながら記憶を紐解く途中、俺は硬直した。

「ベリル様、どうかされましたか?」
「…エリオット…俺、ラゼルに嫌われてる理由がわかったかもしれない…」
「それは秘密倶楽部のオーナーという立場だからではないのですか?」
「ああ…それよりまずいかも」

記憶の中の元祖ベリルはすでにラゼルと接触していた。
出会った回数は少ないが、記憶力の良さはさすがベリル。

(問題は…)

ベリルはなぜ、こんなことをしたのか?
記憶は全て映画館の席で上映される映画のように脳内再生されるのだが、ベリルの感情はどこにもない。
今までもそうだったが、何を考え、何を思い、なぜこんな行動を行ったのかわからない。

(わからない、わからないよ)

俺には何もわからない。
だがとりあえず、目と鼻の先の対応を急がなければならない。

「エリオットにもとりあえず話しておくか」
「はい?」
「俺とラゼルの過去」

俺はラゼルと出会い、何が起こったのかをざっくりとエリオットに話した。

「出会ったのは俺が七歳の頃、フェリスト公爵家の自領で収穫祭が開かれた。祭りの余興で俺が女装していたところに十歳のラゼルと出会ったんだ。訪問の理由は知らないけれど、たぶんうちの魔導書の図解が裸体だの半裸だの文句をいいに来たついでだと思う」
「ふむ」
「俺たちはダンスの相手になったのだが、その後に女神だなんだと言われて、付き合ってくれとラゼルから求婚されて…」

その後の話を自分の口から言うのは複雑な心境だが…
俺はおずおずと話を続けた。

「あまりにもしつこいから俺が男である事をバラしたのだけれど、それでも信じようとしなかったから当時幼かったラゼルのラゼルをこれでもかというほど可愛がって精通させました…これのせいでめちゃくちゃ恨まれてます…」

最後まで聞き終わったエリオットは「なるほど」と頷く。
いや、本当に…元祖ベリル様は何をやらかしているんだと問い質したい。
だが俺がいない過去の出来事なのだからどうしようもないですよね、はい。

「わかりましたベリル様」

エリオットはニコリと微笑んで頷いた。

「これは私からの提案なのですが、どうでしょうか?」

満面の笑みを浮かべたままエリオットは続けた。

「ラゼル・フォン・クラーゲル生徒会長を堕落させましょう」

面白い話の種が手に入ったとばかりにエリオットはホクホクの満足顔である。
正直、このまま生徒会を野放しにしておくわけにはいかない。
遅かれ早かれ衝突することになるのなら、徹底的にぶつかるしかない。

(それに、元祖ベリルならこんな事が起こるのは想像の範囲のはず…すでに布石はあるのではないのだろうか?)

そう考えながら記憶を更に紐解き、俺はハッとする。

(あったな)

今までガーグス教には接触していないと思い込んでいたが、ありました。

(俺だって悪役令息だ。仕事をやろうじゃないか)

俺はエリオットの提案を受け入れた。

「じゃあラゼルを堕落させる作戦会議をはじめようかエリオット」

俺は極悪な笑みを浮かべて提案した。
朝に散々な事を言われただけあり、今回はエリオットにも参加してもらうことに決めた。

「かしこまりました。ベリル様の仰せのままに」

胸に手を当ててぺこりとお辞儀をする学生服姿の従者は優雅に返事をした。
その顔には俺に勝るとも劣らない極悪な笑みが浮かんでいた。
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