ひまわりの王様 ~友達を作りに行ってきます!~

Ignidax

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第一章:四百年、追いつく時間

五話:ロストの素顔…

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「さて、メリー、そんな恨みの目で私を見ないで真面目に話を聞きなさい」

「……へ~い」

*バシィン!!*

 頬を叩かれた。言葉で。

「いったぁ?!何でぶったんですか!?」

「アナタが真面目にしないからよ。ったく」

 彼女は器用に羽根付きペンを指に回しながらギラリと私を見る。
 ほんと、先輩はいつも私には容赦が無いんだよなぁ……。
 それにいつも思うけど、先輩の力怖い。

 彼女の力は所謂私の力の強化版。
 私は本に記録を書くだけの力を持っているけど、彼女には記録するだけでもなく、書いた物を現実に創造できる、とんでもない神様に近い力を持っている。
 それは物理的な物でもあり、今のような言葉で叩くような力を持っている。

 ただ、彼女の力には一応限定があって、何もかもできるわけじゃない。
 もしもできたら亡くなった【主】を甦らせるけど、できないからこそ今【主】はいない。
 どれほどの力を持っているのか私には具体的にはわからないけど、わかるのは彼女はいつでもどこでも私をメッタにできる怖い鬼畜な力を持っている。

 私がどんな所へ隠れたって意味がないよ。

「メリー、大丈夫か?」

 痛みを和らげるように頬を摩っていた私にロストは心配して声を掛けた。
 それも気楽な感じで。
 どうしよう……。

 超嬉しいんですけどぉ!!

「うえ~ん、ロストぉ、痛いよ~」

 だからこの機会を逃さず思いっきり甘えてやるんだ。

「……今はそんなに痛いようには見えないが?」

「酷い!私が嘘を言ってるって言うの?!」

「い、いや、違う!すまな―」

「メリー、いい加減にしなさい」
*バシィン!!*

「ほぉっ!?」

 反対側の頬を叩かれた。また言葉で。

「メ、メリー?」

「ロスト、そんな残念な子はほっときなさい。それとこれから彼女とはなるべく気を付けるようにするのよ?」

「え?ええ、よくわかりませんが理解しました」

「うぅ、酷いよ、先輩……」

 今度はマジで泣いちゃっているよ、私。

「あっそ。まあ、四百年も我慢して欲が爆発した所為なのかもしれないけど、それよりも話を進みたいから続けるわよ」

「……はい」

 そして先輩は泣いている私を気にせず本当に続けちゃったよ。

「どこから話そうかしら。そうね。ロスト、アナタはプラチュに何をされたか、わかる?」

「それなのですか、実の所何故私の体が子供のへと変わったのか理解できません。付け加えて言うのであれば、どうして仮面を取り外したら、その……」

「ああ、それ以上言わなくても大丈夫よ」

「恐縮です」

 ん?仮面を取り外してどうしたの?

「アナタはプラチュから祝福を受けて子供の姿へなれた。だからアナタが手に持っている仮面をまた付ければ子供の姿になるし、呪文を唱えれば元の姿に戻れる。ただアナタはもう知っているけれど、子供の姿で仮面を着ていればアナタの人格は保って力は少し残る。けれど仮面を取り外せばアナタは本当に子供に戻って、力もなくなる」

「やはり、そうでしたか……」

しゅぅぅぅぅ~

 ロストの頭から湯気が現れた。

「うわっ?!ロスト、どうしたの!?」

「い、いや!気にしないでくれ!頼む!」

「ふふふ。どんなに時間を過ごしても、まだ子供のままなのね?」

「うっ……」

 ロストは先輩が言った事に似合わない程もじもじする。

 ……なにこれ?
 私には何もわからないから物凄く不服なんですけど。
 ロストぐらい教えたって良いじゃない。

「そ、それよりも、でしたら私を子供の姿へ変えたプラチュさんはどこにいるのですか?感謝を込めてお礼をしたいのですが」

 あ、そうそう。そういえばあの後全く見かけなかったよね。

「……残念だけど、その子は、アナタの手に握っているわよ」

「私の?」

 と、彼女が言ってもロストの手に握っているのはあののっぺらぼうの仮面だけ。
 だとすると。

「……プラチュは、力を全て使うと消えてなくなる。願うを叶う為の力を使えば尚更、ね。そしてその仮面はアナタが自由に姿を変えられるようにプラチュの想いが込められた仮面よ」

「……そうなのですか。また、自分は彼らに救われたんだな」

 彼は仮面を優しく撫でて、プラチュから与えられた仮面へ静かに「ありがとう」と告げた。

 ロストがこの世界へ転生してイナイカへ転生する前に、実は何度も殺されそうな経験を味わってきた。
 彼がまだ小さいころ、子供でなんも力が無かった彼は必死に逃げるだけしかできなかった。
 けれどそんな彼をいつも守ってくれたのは、魔物の神様、プラチュの皆だった。

 プラチュの皆はある日、心臓に剣で刺されたロストを見かけて、力を使って彼を救って治療した。
 その上、一人で寂しく泣いてた彼を慰めるように歌を歌ったり、遊んだりも。
 そして彼がまた命を狙われた時、皆は命を張ってロストを守ってくれた。

 魔物の世界とは弱肉強食の世界。
 だけど唯一その掟から除外されているのはプラチュの皆。
 何故なら彼らは魔物を全てトモダチと思って愛し、どんな時でも寂しく泣いている魔物を慰め、病気やケガを負った魔物を癒し、虐められている魔物を救っていたから。

 それは魔物だけでもなく、人にも彼らは手助けする。

 どれも全部、プラチュの皆は命を犠牲にしてまでも魔物を救ってきた。
 だから魔物は彼らの優しさに触れて彼らを愛するようになった。
 そして没我的な彼らを神として自然的に敬愛して崇めるようにも。

 プラチュの皆がどうして魔物の神様として正式に崇められるようになったのは、彼らが起こした数々の伝説のお陰なんだけど、それはまた後で。

「だからアナタの願いを聞き届けたプラチュの想いを無駄にしないようにも、これからアナタは私の言う事を聞きなさい」

「え?何を言っているの、先輩?」

「すみません。私もメリーと同じで理解できません」

「ごめんね、いきなり話を飛ばしてた。ロスト、先ず、ヘルメットを取ってもらえるかしら。アナタの顔を直接見たいの」

 あ、それ私も同じ。
 そういえば彼が戻って来てから全然彼の素顔を見てない。子供の姿を除いては。
 だから久しぶりに見れると良いな。

 でも、ロストは彼女に応じなかった。

「どうしたの、ロスト?」

「すみません。ですが、本当に宜しいのですか?私は―」

「アナタは私の命令を拒否することはないけど、心配なのよね?大丈夫。彼女はそんなに弱くないわ。私が保証する。もしも彼女がアナタを傷付けるようなことしたらとっちめてあげるから」

「え?え?」

 ロストと先輩は私に視線を注ぐ。
 とっちめる?何それ怖い。
 でも私が何なの?

「わかりました。……では」

 混乱している私を置いといてロストはさっそく両手をヘルメットの方へ持って行く。
 彼はヘルメット少し横に回して、圧縮される空気が漏れる音が出る。
 そして彼はそのままヘルメットを持ち上げるけど、そんな彼の素顔をちゃんと見れるように私は彼の横から離れて前に出た。

 ふふふ。これでベストスポットは確保した。
 どんな顔になってるかなぁ~。
 私はいろいろと期待してたけど、彼がヘルメットを取り外して腰に抱えると……。

 仮面の後ろにはイケメン、というお伽話のような展開は私を待っていなかった。
 むしろ、彼がどれほど、どれほど戦ってきたのか、頑張ってきたのか、私が耐えた四百年がまるでなんでもなかったように思えた。
 何故なら私は彼の素顔を見て、文字通り、言葉が出なかった。

 「……なんか酷いな。ジフンだけ年取ったおじいさんになって。……ふぇりー?」

 彼は不自由な口言葉で冗談を言うけど、私は笑えなかった。
 頬に暖かい水滴が何度も辿っているのを感じて、私はロストへと近づく。
 両手て彼の顔を包む。

 これで彼の顔を守ってほしいと願って。

 「ロスト……」

 彼の顔左半分は頭蓋骨を残して完全に皮膚や肉が無かった。
 眼窩の奥は暗闇に染まって、目が無い。
 そして彼の右頬は破れて奥歯が見える。

 顔の右半分、唯一顔に残ってた皮膚は酷い火傷で覆われていた。
 そして獣や剣、いろんな物で傷つけられた跡が深く残っていた。
 幸いなのは彼の瞼が残っていたことだろう。

 何故ならそれが無かったら彼は目を細めて、力強い意思を宿る、それでも優しい目で私を見れることができなかったから。

「ロストォ……」

 「はは。随ふんと怖い顔をふぇりーにふぃせてしまったな」

 口元を半分失った彼は私へ笑いかけるようにするけどうまくできない。
 しかも、お陰で彼は私の名前をうまく呼べなかった。
 それが凄く、物凄く、……嫌だ。

 「バカ……。もっと、自分の事を大事にしてよ……。お願い……だから、これ以上傷つけないで……。お願い、ロスト、私にやぐぞくして。……もっと、うぅ、」

 彼が上手く言葉を言い出せなかったように、私もうまく彼に言えなかった。
 でもちゃんと彼に約束させないと、彼は無理をしてまた酷い目に合う。
 だからちゃんと言わないといけないのに。

 「うぅ、うわぁぁぁっ!あぁぁぁぁっあっあっ!」

 なのに、我儘な私は泣く事しかできなかった。
 ロストの方がもっと苦しんだ筈なのに、もっと私より辛い思いをしてきた筈なのに、どうしても私は自分勝手に泣いて止まらない。
 止まらないの。

「彼女には少し難しかったかのね」

「アンタ―カさあ?」

「大丈夫よ、ロスト。ここは私に任せて、アナタは夢の世界へ戻ってこれを読んで頂戴」

「これは?」

「これはアナタにこれからして欲しい事の数々よ。実はここで話したいのだけれど、メリーの様子を見てからと思ってね。大丈夫。その手紙には別にアナタを戦争や争いにかり出すわけでわないから。詳しい事は全部紙に書いてあるわ」

カチャッ
「……わかりました。では、私はこれで失礼します。……メリーを、お願いします」

「ええ、もちろんよ。さよなら、ロスト」

ひゅん!

「彼も大変ね。そして、アナタもね」

 体に誰かが包まれるのを感じて暖かさが伝わってくる。

「メリー、辛いのはわかるけど大丈夫よ。彼は弱くない。そしてアナタも弱くない。これからアナタと彼、二人で一生懸命頑張るんでしょ?だから今はいっぱい泣いて、後でちゃんと彼を支えてあげなさい。その為に、私はアナタの先輩として力を貸してあげる。だから大丈夫。メリー、頑張るのよ」

「うわぁぁぁぁあん!ああぁぁぁぁっ!」

 アンタ―カ先輩のお陰で私の体は凍える事はなかったけど、心が物凄く寒かった。
 そして、四百年も抱えたものが一気に爆発したように私は泣くのを止まらない。
 だから悪いけど、私はアンタ―カ先輩を強く抱きしめて、落ち着くまで長い事泣き続けた。
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