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21 混乱
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そこからの私は魂が抜けたただの入れ物で……。
自分のことなのに現実感がなく、壁にかけられた巨大な鏡に映り出される出来事をお芝居でも見るような気持ちで眺めていた。
* * * * *
ニコラスが私の股を開く。
閨でさえ薄暗い部屋の中で見るだけだった秘所をハッキリと見せられ、ジョルジュは一瞬眉をひそめた。
でもすぐに宝物を見つけたように目を見開き、ニコラスご指を蜜壷に差し込んで、そこに溜まった白濁液を掻き出すのを凝視していた。
まだそんなに残っていたのかと思うほど、ボタボタ落ちてシーツに染みを作っていく。
「ほら、兄上が見ていますよ?」
言われなくても分かってる。
少し悔しそうで、嫉妬心もありながら、それ以上に興奮冷めやらない。
そんなジョルジュを……すぐに受け入れることができなかった。
目の前で自分の妻が、実の弟に犯されていたのに……。
彼なら簡単に止めることだってできたのに……。
回避行動をひとつもせず、剰え頬を上気させ、何も見逃さないとばかりに食い入るように見ていたなんて……。
ジョルジュは私のことを本当に愛してくれていたの?
最初は愛していたとして、もう愛情が無くなっていた?
それとも最初から、私は彼のお気に入りの人形くらいにしか思われてなかったの?
無数の疑問が湧き上がり、ぐるぐると頭の中で回っていて、それ以外のことは放置してしまっていた。
そんな私をニコラスは不審に思ったらしい。
仕方ないなと肩をすくめ、私を正気に戻すべく、深く激しい口付けをしてきた。
「うんん……ふんん……止め……」
遠くから眺めていたような私の心は、酸欠寸前のキスで体に戻って来れたらしい。
気が付けば私はニコラスの腕の中に閉じ込められるようにして抱き締められていた。
さっきまであちこちに付いていた、私の彼の体液もキレイに拭き取られていて、夜着こそ着てないけど、白いガウンを羽織らされていた。
そういえばニコラスが何か拭いていたなと思い出す。
そうか……。
あのボロ人形みたいなのは私だったんだ……。
「……ニコラス?」
やっと目の焦点が定まって口を利いた私に、ニコラスが安堵の笑みを見せた。
「ジョルジュは……」
「兄上は部屋に戻リマした。長いこと椅子に座っているのは無理なので」
「……本当にジョルジュが……見てたのね?」
「えぇ。これが兄上の希望でしたから……」
その言い方に何か引っかかった。
でも、何だか分からない。
私はしばらく無言でニコラスを見詰めた。
「レティシアは変なところで感が良い」
「やっぱり何かあるのね?」
「……レティシアに今──兄上が生きている間に私が手を付けるのは、兄上が……レティシアの……乱れる姿が見たかったからなんです」
乱れる姿が見たかった?
そんなの、ジョルジュは閨でたくさん見てるのに?
訳が分からない。
「本当はレティシアを私になんて触れさせたくはないんですよ……」
「それならなぜ……?」
「うーん。理由は色々あるでしょうけど……」
ニコラスが言うには、隠しているだけで世の中にはジョルジュのような人が結構いるらしい。
その人たちは嫉妬心で興奮するとか、相手の男性に対抗心を持つと興奮するとか、マンネリ化を解消したいとか、そういう動機が多いそうだけど、人によって求めるものは異なるという。
そしてジョルジュはというと……。
「レティシアが乱れる姿が見たいのも嘘じゃない。けれど一番は『レティシアが本当に兄上を好きで、心変わりしないか』心配なんでしょうね」
「そんなこと……私が愛してるのはジョルジュだけなのに……」
「解っています」
「え?」
「解っていても、仮定とか想像とかではなく、実際に現実として『そうである』という証拠みたいなものが欲しいのかもしれませんね」
私には理解できない感覚だけど、でも……何となく『そういう人もいるのかも』と思ってしまった。
「本当に物のように思っていたり、ペットくらいにしか思っていなかったら……こんな手の込んだ方法は取らない」
「え?」
「もっと手っ取り早く、レティシアを説き伏せて嫌々でも、兄上が私たちの寝室で見学することもできたんですよ?」
「そ、そんなの私……良いなんて言わないわ」
「でしょうね」
ニコラスは呆れたように肩をすくめた。
「そのためにここまでお膳立てして、嫌がっていないレティシアを抱いてみせることになったのですから」
「……私のため?」
「どうでしょう? 兄上はアナタに甘いから。嫌がるレティシアを兄上も見たくなかったのでは?」
そっか。
ジョルジュは私が彼以外に体を許しても、違う人の子を宿しても、変わらず彼を愛しているか──自分を忘れたりしないか、不安なのね?
私は、たとえ誰かに体を差し出したとしても、ずっとジョルジュを忘れたりしないのに……。
「レティシア?」
こんなに好きなのに、ジョルジュは私の気持ちを信じきれないなんて……。
どうしたら伝わるんだろう?
「私が……」
「はい?」
「私が絶対、ジョルジュを好きで居続けられるって……どうやったら信じてもらえるの?」
「それは……」
ニコラスは言い淀み視線を逸らす。
きっと何か知ってる!
「ニコラス。あなた、何か知ってるのね? 教えてちょうだい」
「すみません。兄上から何も知らせるなと言われています」
「そう。それなら、ヒントは? それもダメなの?」
ニコラスはかなり迷って、それでも私が諦めないと見るや、ため息を吐いた。
「初夜の間でのことは、始まりに過ぎない」
「始まり? 何の?」
やっともらえたヒントも大した役には立たなかった。
ただ、少なくともあと何回かは、ジョルジュに見せながらの行為は続くのかもしれない。
それが分かっただけでも良しとしなければ……。
「兄上の希望を……叶えることの始まりです」
「ジョルジュの……希望?」
ジョルジュの望みを叶えるってことは、それは私を信じたいから試すってことで……。
それならジョルジュの言ったことを全部実行して、それでも私が彼を愛しているって分かったら、そうしたら証明できる?
「それなら、私は全部叶えるわ」
「兄上の希望を?」
「それしか信じてもらえる道がないと思うの」
「本気……なのですね?」
多分ニコラスは、その内容さえ知らない私が、全部やって見せるって言ったことに驚いてるんだと思う。
そんなことできないだろうって思ってるのかもしれない。
「ジョルジュが私を心から信じてくれるなら……やってみる価値があると思うから……」
「……分かりました。レティシアの兄上を想う気持ちの強さを私も見せてもらうことにします」
自分のことなのに現実感がなく、壁にかけられた巨大な鏡に映り出される出来事をお芝居でも見るような気持ちで眺めていた。
* * * * *
ニコラスが私の股を開く。
閨でさえ薄暗い部屋の中で見るだけだった秘所をハッキリと見せられ、ジョルジュは一瞬眉をひそめた。
でもすぐに宝物を見つけたように目を見開き、ニコラスご指を蜜壷に差し込んで、そこに溜まった白濁液を掻き出すのを凝視していた。
まだそんなに残っていたのかと思うほど、ボタボタ落ちてシーツに染みを作っていく。
「ほら、兄上が見ていますよ?」
言われなくても分かってる。
少し悔しそうで、嫉妬心もありながら、それ以上に興奮冷めやらない。
そんなジョルジュを……すぐに受け入れることができなかった。
目の前で自分の妻が、実の弟に犯されていたのに……。
彼なら簡単に止めることだってできたのに……。
回避行動をひとつもせず、剰え頬を上気させ、何も見逃さないとばかりに食い入るように見ていたなんて……。
ジョルジュは私のことを本当に愛してくれていたの?
最初は愛していたとして、もう愛情が無くなっていた?
それとも最初から、私は彼のお気に入りの人形くらいにしか思われてなかったの?
無数の疑問が湧き上がり、ぐるぐると頭の中で回っていて、それ以外のことは放置してしまっていた。
そんな私をニコラスは不審に思ったらしい。
仕方ないなと肩をすくめ、私を正気に戻すべく、深く激しい口付けをしてきた。
「うんん……ふんん……止め……」
遠くから眺めていたような私の心は、酸欠寸前のキスで体に戻って来れたらしい。
気が付けば私はニコラスの腕の中に閉じ込められるようにして抱き締められていた。
さっきまであちこちに付いていた、私の彼の体液もキレイに拭き取られていて、夜着こそ着てないけど、白いガウンを羽織らされていた。
そういえばニコラスが何か拭いていたなと思い出す。
そうか……。
あのボロ人形みたいなのは私だったんだ……。
「……ニコラス?」
やっと目の焦点が定まって口を利いた私に、ニコラスが安堵の笑みを見せた。
「ジョルジュは……」
「兄上は部屋に戻リマした。長いこと椅子に座っているのは無理なので」
「……本当にジョルジュが……見てたのね?」
「えぇ。これが兄上の希望でしたから……」
その言い方に何か引っかかった。
でも、何だか分からない。
私はしばらく無言でニコラスを見詰めた。
「レティシアは変なところで感が良い」
「やっぱり何かあるのね?」
「……レティシアに今──兄上が生きている間に私が手を付けるのは、兄上が……レティシアの……乱れる姿が見たかったからなんです」
乱れる姿が見たかった?
そんなの、ジョルジュは閨でたくさん見てるのに?
訳が分からない。
「本当はレティシアを私になんて触れさせたくはないんですよ……」
「それならなぜ……?」
「うーん。理由は色々あるでしょうけど……」
ニコラスが言うには、隠しているだけで世の中にはジョルジュのような人が結構いるらしい。
その人たちは嫉妬心で興奮するとか、相手の男性に対抗心を持つと興奮するとか、マンネリ化を解消したいとか、そういう動機が多いそうだけど、人によって求めるものは異なるという。
そしてジョルジュはというと……。
「レティシアが乱れる姿が見たいのも嘘じゃない。けれど一番は『レティシアが本当に兄上を好きで、心変わりしないか』心配なんでしょうね」
「そんなこと……私が愛してるのはジョルジュだけなのに……」
「解っています」
「え?」
「解っていても、仮定とか想像とかではなく、実際に現実として『そうである』という証拠みたいなものが欲しいのかもしれませんね」
私には理解できない感覚だけど、でも……何となく『そういう人もいるのかも』と思ってしまった。
「本当に物のように思っていたり、ペットくらいにしか思っていなかったら……こんな手の込んだ方法は取らない」
「え?」
「もっと手っ取り早く、レティシアを説き伏せて嫌々でも、兄上が私たちの寝室で見学することもできたんですよ?」
「そ、そんなの私……良いなんて言わないわ」
「でしょうね」
ニコラスは呆れたように肩をすくめた。
「そのためにここまでお膳立てして、嫌がっていないレティシアを抱いてみせることになったのですから」
「……私のため?」
「どうでしょう? 兄上はアナタに甘いから。嫌がるレティシアを兄上も見たくなかったのでは?」
そっか。
ジョルジュは私が彼以外に体を許しても、違う人の子を宿しても、変わらず彼を愛しているか──自分を忘れたりしないか、不安なのね?
私は、たとえ誰かに体を差し出したとしても、ずっとジョルジュを忘れたりしないのに……。
「レティシア?」
こんなに好きなのに、ジョルジュは私の気持ちを信じきれないなんて……。
どうしたら伝わるんだろう?
「私が……」
「はい?」
「私が絶対、ジョルジュを好きで居続けられるって……どうやったら信じてもらえるの?」
「それは……」
ニコラスは言い淀み視線を逸らす。
きっと何か知ってる!
「ニコラス。あなた、何か知ってるのね? 教えてちょうだい」
「すみません。兄上から何も知らせるなと言われています」
「そう。それなら、ヒントは? それもダメなの?」
ニコラスはかなり迷って、それでも私が諦めないと見るや、ため息を吐いた。
「初夜の間でのことは、始まりに過ぎない」
「始まり? 何の?」
やっともらえたヒントも大した役には立たなかった。
ただ、少なくともあと何回かは、ジョルジュに見せながらの行為は続くのかもしれない。
それが分かっただけでも良しとしなければ……。
「兄上の希望を……叶えることの始まりです」
「ジョルジュの……希望?」
ジョルジュの望みを叶えるってことは、それは私を信じたいから試すってことで……。
それならジョルジュの言ったことを全部実行して、それでも私が彼を愛しているって分かったら、そうしたら証明できる?
「それなら、私は全部叶えるわ」
「兄上の希望を?」
「それしか信じてもらえる道がないと思うの」
「本気……なのですね?」
多分ニコラスは、その内容さえ知らない私が、全部やって見せるって言ったことに驚いてるんだと思う。
そんなことできないだろうって思ってるのかもしれない。
「ジョルジュが私を心から信じてくれるなら……やってみる価値があると思うから……」
「……分かりました。レティシアの兄上を想う気持ちの強さを私も見せてもらうことにします」
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