【R18】今夜私は義弟に抱かれる〜不治の病に侵された夫は寝取られに目覚めてしまった模様です〜

栗花

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37 企み①〈コーネリアside〉

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 煌びやかなダンスホールでわたくしはお目当ての人を探し当て、衆目の中談笑しているところだ。

 相手はこの国、いえ、この大陸の中でも一番と言えるほど容姿の整っていて、それでいて身分も申し分なく高い男性。

 ニコラス・ハミルトン公爵。

 煌めく蜂蜜色の金髪と、緑の濃淡が入り混じった孔雀石マラカイトに似た不思議な瞳の貴公子よ。

 彼は次男だったから王女であるわたくしの伴侶として候補から外れていたのだけど、今は違う。

 兄から公爵を継いだ彼ならば、王女であるわたくしの隣に立つに相応しい。

 いいえ、他の誰より似合うでしょう。

 ほら、今も沢山の女性がこっちを気にして見ているわ。



 良く見なさい。

 この美しく気高いわたくしだからこそ、ニコラスとこうして話ができるのよ。

 羨ましいでしょう?



 多くの若い令嬢たちの悔しそうな顔。

 嫉妬と羨望の眼差し。

 なんて気持ち良いのかしら。



「そう。でも……ニコラスが公爵ならば、王族から降嫁こうかしてもおかしくないわね?」



 どう?

 あなたたちの憧れているニコラスは、わたくしのモノになるのよ?

 ふふふ。



「……しかし、今のところ婚約も決まっていない妙齢みょうれいの殿下はいらっしゃりませんから。それは杞憂きゆうでしょう」

「あら、本当に……うっかりしておりましたわ」



 まぁ、ニコラスったら、わたくしに婚約者がいるからってだけで諦めてしまっているのね。

 本当に欲の無い……。

 ニコラスはこういう控え目なところが前からあった。

 遠慮などしなくても良いと言っても、兄を立てたり周囲に譲ったり、わたくしの世間体を気にするのだ。



 でも任せて?

 わたくし、今日のために色々計画していますのよ?



 思慮深く遠慮ばかりして今まで損していた分、あなたが悪くならずにわたくしを無理なく手に入れられる方法。

 わたくしは耐え切れず、オホホと笑ってしまった。



「それはそうと……折角せっかくだからニコラスの公爵継承をわたくしも祝わせてもらいましょう」

「……ありがとう存じます」



 わたくしの脇に控えた給仕が差し出すより早く、振り返って後ろを通りかかった給仕のトレイからグラスを取ったニコラス。

 せっかくわたくしが用意した媚薬は飲んでもらえなかった。



 残念だわ。

 だってこれは、自分からわたくしを求められないニコラスへの配慮だったのよ?



 自分の所為ではなく、不可抗力でわたくしと既成事実を作ってしまえる。

 そうしたらあの筋肉ダルマ王子からわたくしを手に入れる正当な理由ができるのだもの。

 でも、そうやっていつでも身辺に気を遣って、どうでも良い連中の手に落ちない優秀なところが良いのだから……これは仕方ないわね。

 視界の隅でわたくしの侍従の一人、カイウスが合図を送ってきた。

 これは次の作戦を実行するのね。



「そうそう、別室に祝いの品を用意しています。わたくしのエスコートをする栄誉と共に与えましょう」

「……殿下、お手をどうぞ」



 このわたくしの誘いにニコラスが否と言うとは思ってなかったけど、こんなにあっさり従うとも思ってなかった。

 いつもならもう少し何か抵抗するのよ。

 そこがまた良いのだけど、こうして恭しく傅かれるのも悪くないわ。

 ニコラスの差し出す手にわたくしの手を預けながら、そう思っていた。



 * * * * *



「今日は特にご機嫌がよろしいですね。何か良いことでもおありですか?」



 夢見心地で歩いていたら、ニコラスの艶のある声が聞こえてきた。



「えぇ、ニコラスにエスコートされるのは気分が良いわ。ねぇ、次の夜会はわたくしのエスコートをしてみない?」

「ご冗談を……私はまだ死にたくはありません」

「ふふふ。あの筋肉ダルマ王子を気にしているの?」

「そのような呼び方は良くありませんね。しかしゴードン王子のことが気になるのは確かです」

「正直ね。でも、ニコラスがそう言うなら仕方ないわ。無理強いはしないでおきましょう。でも、ダンスの一曲ぐらいは付き合ってよ?」

「……善処いたします」



 ニコラスは筋肉ダルマ王子のことを恐れているのね。

 でもここで強く求めれば、ニコラスとの仲はアピールできても、これからの計画を嗅ぎ付ける者が出てもおかしくない。

 わたくしは物分かりの良い女だもの。

 ここは素直に引いて、今夜の計画を上手く遂行できれば……。



 明日の朝にはわたくしはニコラスの妻。

 わたくしがハミルトン公爵夫人に成るんだわ!



 ニコラスとわたくしは王女専属の近衛に先導され、応接室へと進んで行く。

 でもそれはニコラスに悟られないため。

 本当はその途中で特別に用意した客室に連れて行く。

 そしてそこでニコラスに特別なお香を使うのよ。

 カイウスが言ってたけど、ニコラスは普通の媚薬では効かないかもしれないんですって。

 ハミルトン公爵家の男子は代々見目が良く、そういう薬を使って結婚するように企む人が沢山いたから、あまり効かないように訓練してるらしいわ。

 だから今回はうんと効く物を用意してもらったの。

 だってこのままだとわたくし、あの筋肉お化けみたいなゴードン王子と結婚しなくちゃいけないのよ?

 オースティン兄様が勝手に決めてきたの。

 酷いでしょ?

 わたくしは絶対あんな人と結婚なんてしたくないの。

 わたくしのような美しくてプロポーションだって抜群の王女は、それ相応の相手でなければ釣り合わないわ。

 この国で一番、いえ、この大陸で一番のニコラスこそ、わたくしの夫に相応しいのよ。

 彼だって、あのヘルミナなんて女より、わたくしのほうがずーっと良いに決まってるもの。

 そう言えば、さっきのあの子ったら……。

 わたくしとニコラスが話している時も、ものすごい目で睨んでいたわね。

 今日はニコラスと踊って浮かれていたから、余計にショックだったのかしら?

 本当にいい気味。

 王女であるわたくしに楯突こうなんて身の程知らずもいい所よね。


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