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38 企み②〈コーネリアside〉
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やっと部屋に着いたみたい。
「どうぞお入りください」
護衛が扉を開けて中に入るようにと促している。
ニコラスは少し眉を顰めたけど、それでも私を伴ったまま中に入ってくれたわ。
私は計画通りニコラスが座ったのを待って、自ら隣の部屋のプレゼントを取りに行くため部屋を出る。
応接間にはニコラスとやけに背の高い護衛が一人だけ。
今部屋の中は魔香が炊かれていて、しばらくその場に居れば、確実に催淫効果が出てくるそうだ。
大気より重いその煙は座っているニコラスには確実に効く。
室内で立っている護衛はお香の影響はほとんど受けない。
私を求めてやまない、情熱的なニコラスってどんなかしら?
普段は冷静で理性的だからこそ、とても楽しみだわ。
* * * * *
私は魔香の影響で煽情的になった、色気たっぷりのニコラスが見たかった。
それなのに……。
「どうして? どうしてニコラスが居ないの?」
激昂した私が問えば、あの背の高い護衛の上司が平謝りしてきた。
「申し訳ございません殿下。ハミルトン卿はすぐに異変に気付いたようで、護衛を体術で昏倒させ、テラスから庭に降りられたようです」
ニコラスに逃げられたという報告に、私のイライラは限界を超えた。
「今すぐ探して! 絶対に逃したらダメよ!? 城門で通さないように言って! 必ずニコラスを私の前に連れて来なさい!」
「御意!」
私の金切り声に危機感を感じたのか、みんな散り散りになって探しに行ったわ。
これできっとニコラスは連れてきてもらえるわ。
私はこの部屋で待とうとソファーに腰掛けた。
侍女にお茶を頼もうとしたけど、長年私の侍女をやってるだけあって、もうすでに部屋から出て行っていなかった。
部屋の中にはさっきとは別の見目良い護衛が控えていた。
分かってるじゃない。
こんなイライラする時にブサイクな護衛じゃあ、治る機嫌も治らなくなるでしょう?
「ちょっと。寒いからテラスの窓、閉めてくれるかしら?」
「はい」
美青年護衛は素早く窓を閉め、言ってなくても部屋の扉も閉めてくれた。
中々気が利くわね。
そして私はお茶とニコラスを待つために、暇つぶしにとテーブルに置かれていた恋愛小説の本を読み始めたのだった。
* * * * *
何だろう。
頭がぼーっとする。
恋愛小説読の恋人同士のデートシーンを読んでいるからか、すごくドキドキして来た。
顔も熱い。
「殿下?」
「コーネリア様!?」
「ちょっと、姫さまが……」
何だか侍女や護衛が騒いでるわ。
何を騒いでるのかしら?
「まだ魔香が消えてないのでは?」
「そんなはずは……」
「まさか、寝室は?」
バタバタと慌ただしく人が行き来しているようだった。
廊下の扉は閉まっていても、寝室へ繋がる扉は細く開いているようなことを言っている。
「侍女殿、寝室の物が残っていました!」
「何ですって!? カ、カイウス殿を呼んでちょうだい!」
「とにかく換気を!」
魔香って?
ニコラスに使ったお香よね?
私がこの香を使うのはいけなかったの?
でも、寝室はニコラスと一緒に入るはずだったんだから、ダメじゃないと思うのだけど?
「なぜ寝室のほうにも?」
「破瓜の痛みが軽減されるとのことでしたので……」
「それはあとから点ける予定だった物では?」
護衛たちが焦っているみたいだけど、どうしたのかしら?
「中和剤はありますの?」
「それが……ありません」
「いや、女性はほかの方法があるだろう」
「ですがそれは……」
侍女が尋ねると男たちは何やら話し合っている。
何かを言い淀み、言いにくそうにしている彼らに侍女のイライラが爆発した。
「あるんですか? ないんですか? どっちですの!?」
「あるにはありますが……」
「はっきりなさって!」
侍女の剣幕に男たちは観念した。
「ハッキリ申し上げましょう! 体内で|《とせい》吐精すれば治るかと思われます」
「体内で吐精……? えっ!? それでは……」
「それを実行できる者は、ここにいません」
誰もが押し黙ってそれぞれのことを探っている。
その緊迫した空気の中発言したのはカイウスだった。
「……ハミルトン卿を連れて来るのが、コーネリア殿下のご希望でしょう」
「しかし、この分では連れて来たとして、協力いただけるでしょうか?」
「とにかく、このままにして置いては持続時間の長い物なので、殿下に多大なご負担がかかります」
男たちは困惑気味だ。
「……どんな手を使ってでも、探して来てくださいませ」
侍女の厳かなる言葉が響き渡った。
「どうぞお入りください」
護衛が扉を開けて中に入るようにと促している。
ニコラスは少し眉を顰めたけど、それでも私を伴ったまま中に入ってくれたわ。
私は計画通りニコラスが座ったのを待って、自ら隣の部屋のプレゼントを取りに行くため部屋を出る。
応接間にはニコラスとやけに背の高い護衛が一人だけ。
今部屋の中は魔香が炊かれていて、しばらくその場に居れば、確実に催淫効果が出てくるそうだ。
大気より重いその煙は座っているニコラスには確実に効く。
室内で立っている護衛はお香の影響はほとんど受けない。
私を求めてやまない、情熱的なニコラスってどんなかしら?
普段は冷静で理性的だからこそ、とても楽しみだわ。
* * * * *
私は魔香の影響で煽情的になった、色気たっぷりのニコラスが見たかった。
それなのに……。
「どうして? どうしてニコラスが居ないの?」
激昂した私が問えば、あの背の高い護衛の上司が平謝りしてきた。
「申し訳ございません殿下。ハミルトン卿はすぐに異変に気付いたようで、護衛を体術で昏倒させ、テラスから庭に降りられたようです」
ニコラスに逃げられたという報告に、私のイライラは限界を超えた。
「今すぐ探して! 絶対に逃したらダメよ!? 城門で通さないように言って! 必ずニコラスを私の前に連れて来なさい!」
「御意!」
私の金切り声に危機感を感じたのか、みんな散り散りになって探しに行ったわ。
これできっとニコラスは連れてきてもらえるわ。
私はこの部屋で待とうとソファーに腰掛けた。
侍女にお茶を頼もうとしたけど、長年私の侍女をやってるだけあって、もうすでに部屋から出て行っていなかった。
部屋の中にはさっきとは別の見目良い護衛が控えていた。
分かってるじゃない。
こんなイライラする時にブサイクな護衛じゃあ、治る機嫌も治らなくなるでしょう?
「ちょっと。寒いからテラスの窓、閉めてくれるかしら?」
「はい」
美青年護衛は素早く窓を閉め、言ってなくても部屋の扉も閉めてくれた。
中々気が利くわね。
そして私はお茶とニコラスを待つために、暇つぶしにとテーブルに置かれていた恋愛小説の本を読み始めたのだった。
* * * * *
何だろう。
頭がぼーっとする。
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顔も熱い。
「殿下?」
「コーネリア様!?」
「ちょっと、姫さまが……」
何だか侍女や護衛が騒いでるわ。
何を騒いでるのかしら?
「まだ魔香が消えてないのでは?」
「そんなはずは……」
「まさか、寝室は?」
バタバタと慌ただしく人が行き来しているようだった。
廊下の扉は閉まっていても、寝室へ繋がる扉は細く開いているようなことを言っている。
「侍女殿、寝室の物が残っていました!」
「何ですって!? カ、カイウス殿を呼んでちょうだい!」
「とにかく換気を!」
魔香って?
ニコラスに使ったお香よね?
私がこの香を使うのはいけなかったの?
でも、寝室はニコラスと一緒に入るはずだったんだから、ダメじゃないと思うのだけど?
「なぜ寝室のほうにも?」
「破瓜の痛みが軽減されるとのことでしたので……」
「それはあとから点ける予定だった物では?」
護衛たちが焦っているみたいだけど、どうしたのかしら?
「中和剤はありますの?」
「それが……ありません」
「いや、女性はほかの方法があるだろう」
「ですがそれは……」
侍女が尋ねると男たちは何やら話し合っている。
何かを言い淀み、言いにくそうにしている彼らに侍女のイライラが爆発した。
「あるんですか? ないんですか? どっちですの!?」
「あるにはありますが……」
「はっきりなさって!」
侍女の剣幕に男たちは観念した。
「ハッキリ申し上げましょう! 体内で|《とせい》吐精すれば治るかと思われます」
「体内で吐精……? えっ!? それでは……」
「それを実行できる者は、ここにいません」
誰もが押し黙ってそれぞれのことを探っている。
その緊迫した空気の中発言したのはカイウスだった。
「……ハミルトン卿を連れて来るのが、コーネリア殿下のご希望でしょう」
「しかし、この分では連れて来たとして、協力いただけるでしょうか?」
「とにかく、このままにして置いては持続時間の長い物なので、殿下に多大なご負担がかかります」
男たちは困惑気味だ。
「……どんな手を使ってでも、探して来てくださいませ」
侍女の厳かなる言葉が響き渡った。
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