公爵令嬢走る!/恋の闘争・正義は我にあり 序章

ペンギン饅頭

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29・頑固なところは子供の頃から変わりません。

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「困りますね、お嬢様」

 燭台の灯りに目をすがめてみると、良く知った夜警の方でした。

「もう少し、お話させて頂きたいのですが」

 またとない絶好の機会なので、まだまだ色々と赤鬼と話したいところなのですが、頑として聞き入れくれません。
 赤鬼が私の身に良からぬことをしでかす可能性もありますので、夜更けに調理場で三人きりでいるのを、職務上、黙って見過ごす訳にいかないのは尤もな事です。
 赤鬼は素直に調理場をさっさと出て行きます。
 もちろん私達も、身を案じてくれての愛すべき頑固さには、抗える筈も無く、夜警の方に付き添われ部屋へと戻りました。

「掴みどころのないお方ですね」

 リリアは部屋に入るなり、お茶の用意をしてくれながら、首を横に振り言いました。

「リリア、本当にそう思う?」

 テーブルの上に突っ伏したまま上目遣いで問いかけると、リリアは不思議そうな表情のまましばらく固まっていましたが、急に自嘲の笑みが漏れました。
 どうやら分かったようです。

「同じですか?」

 私は返事代わりに、身体を跳ね上げ大きく背を反らし、椅子の背もたれに投げ出し、頭の後ろで手を組んで、天を仰ぎます。

「因習にとらわれた格式ばった晩餐会を嫌い、馬を愛で道具として認めることを嫌い、陽の香りのする干し草を寝床として……まあ、お嬢に、そっくりですね」

「忌々しい事にね」

「しかし、昼間見た印象と違いますね。何だかカルロ様位の齢の子供を相手しているのかと、錯覚してしまうくらいです」

「どんな厳つい顔でも、美味しい物を食べるときは頬が緩んで幼く見えるものよ。それに、リリアだって何か食べている時は、カロやカルより幼く見えるわよ」

「お嬢にだけは言われたくありませんね」

「物を食べるって、人間の本能に根差すものだから、その人の人となりが現れるものだというけど、どうなのかしら?」

「何となく分かる気もしますね。まあ、余り当てにするのもどうかとは思いますけど」

 リリアの差し出してくれたお茶から、ミントの爽やかな香りが立ち昇ります。
 その香りに誘われるように、顔を近付けて胸いっぱいに吸い込み言います。
 
「ねえ、リリア。何と言っても、一番共感したのは『気の合う仲間と食べる旨い物』よ、だから~、焼き菓子ちょうだい!」

「何を仰っているのですか、そもそも、この焼き菓子に合うお茶を探しに行ったのですよ。また、明日ですね」

 まあ! すげー可愛く言ったのに、リリアには通じません。
 諦めるしかないようです。
 食べ物の事になると一度言い出したら、夜警の方など比べ物にならないくらい頑固なのを知っていますし、しつこくすると本気で怒りだして手に負えませんので、心の中で毒づくだけにしておきます。
 
(ちぇー! リリアのけちんぼ!)
 
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