公爵令嬢走る!/恋の闘争・正義は我にあり 序章

ペンギン饅頭

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30・何なのか、教えてちょーだい。

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 カーテンの隙間から、優しい陽が射しています。

 その優しさが、朝、まだ早い時間だと教えてくれました。

 食器の触れ合う涼やかな音に混じって、爽やかな香りが漂います。
 
(レモンバームティーだ)

 らちも無い事を考えながら、のそのそと起き出すと。

「お嬢、お早うございます。良く眠れましたか?」

「うん、お早う、リリア」

「蜂蜜は入れますか?」

「ううん、要らない」

 布団を跳ね上げ、飛び起きて、床を軋ませながら洗面台に向かいます。
 粗塩をたっぷりと口に含んで、房楊枝で口の中がヒリヒリする位、力一杯こすりつけ、木桶に用意された水をすくってすすぎます。
 顔に水を叩きつけるようにして洗うと、寝ぼけた頭がスッキリとしてきました。
 出窓に駆け寄り、開け放ち、朝の光を飲み込むように、胸いっぱいの深呼吸をすると、早朝の清々しい空気が身体中に巡っていきます。

「はい、お嬢。お茶が入りましたよ」

「うん! ありがとう」

 椅子に腰掛け、淹れたてのお茶を啜ると。

「あ~~」

 はしたないとは思いつつも、声を上げずにはいられません。
 リリアは、そんな私の様子を正面に腰掛け、毎朝の見飽きた事だというのに、手を組んだ上に顎を乗せて、優しい笑みを浮かべながら見ています。
 昨晩の『美味しい物を食べている時は幼く見える』という台詞を思い出してしまい、朝からちょっとイラっとしてしまいます。
 そんな私の表情を見て取ったのか、リリアは誤魔化すように立ち上がり、私の後ろに回ってブラシをあてがいます。
 
(おや?)

 開け放たれたままの出窓から、何やら音が聞こえてきました。
 何だろうと思うと、私と同じく不思議そうな顔をしたリリアと眼が合います。
 リリアはすかさず出窓に駆け寄り、外の様子をうかがいますが、そのまま身じろぎ一つせず、聞こえてくる音に耳を澄ましているようです。
 ますます不思議に思い、私も出窓に駆け寄り、リリアと並ぶ様に外の様子をうかがい、耳を澄ますと、朝も早い時間だというのに馬場の方から、馬のいななき、馬蹄の音に混じり、人の馬を追う声が聞こえてきます。

「間違いないです」

 突然、リリアが馬場の方を見詰めながら呟きました。

『何が?』と、問う間も与えてくれず、手を引かれ、衣裳箪笥の所へと連れていかれました。
 リリアはドレスを選ぶでも無く、無造作に手近の物を取り出し。

「お嬢、早く着替えて下さい」

 何の事だか分らぬままに、リリアの勢いに押されるように、急いで着替えを済ますと、また、手を掴まれて部屋を飛び出し、馬場に向かって。

 走り出します。

 
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