【完結】イケないイケメン、発射します

ソラ太郎

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7.暴かれる

ジムの男が迫ってくる


 聖戦は制したわけだが、それも一つの悩みの種となった。

 その後も日高を通して予約が受け付けられると、どの女を抱いても興奮度が低減した。
 冬馬の息子は元気に勃起したけれど、反射であって愉悦とは違う。

 この日の客は“失神の絵里奈”で、いつものごとくベッドの上で失神して終わった。
 男がイかないと自信を失くす女も居るけれど、蓮を呼び出す女は大抵が自分本位でイかされることを望んでいる。女の体力が続くまで何度も絶頂を味わわせると、冬馬がイケなくても満足してくれるのはありがたい。

 お金をもらう限り、仕事はちゃんとする。
 けれど結果として冬馬の頭の中には伊織がこびりついた。



 絵里奈に布団を掛けて、コーラをもらうとジムに行った。
 キッチンの同じ場所に煙草とジッポが置いてあり、前回来た時から移動した感じもなかった。絵里奈はセックスが下手くそな彼氏と別れたのだろうか。

「冬馬くん」
「あ、こんにちわ。えっと、山口さん」
「覚えててくれたんだね」

 数時間、ジムで冬馬が汗を流していると、声を掛けられた。爽やかなそれなりイケメンの山口だった。
 山口は冬馬が居ない時にもちゃんと通っていたらしく、冬馬の横のマシンを陣取ると慣れた様子で鍛え始めた。

「冬馬くん、今日の夕方ごろって何してた?」
「夕方ですか?」
「うん」

 ここに来る前は絵里奈を失神させたくらいで、大したことは何もしてない。
 何故そんなことを聞かれるのかと思ったが、冗談の通じない山口に「セックスしてました」とは口が裂けても言えない。

「普通に家に居ましたけど、どうしました?」
「…そうなんだ?冬馬くんって学生さん?」
「いえ、働いてますよ。山口さんは?」
「僕は会社員。冬馬くんって彼女居るの?」

 そこでふと思った。もしかすると、もしかする。

「…いえ居ませんけど」
「そう。年上と年下だったら、どっちが好きとか、あるの?」
「……え、と」

 山口はきっと、ゲイだ。冬馬を狙っている。
 自慢ではないが、冬馬は端正な顔立ちとちょうどいい筋肉でゲイからモテる。実際に声を掛けられ危うくクラブのVIPルームに引きずり込まれそうになったこともあった。

「俺は…女性なら。女性なら年齢問わないです。女性が好きなんで」

 そう言い残して立ち上がる。

「じゃ、俺はこれで」

 マシンを軽く拭いて更衣室に向かおうとすると、山口はやり始めたばかりのマシンから腰をあげて、冬馬についてきた。

「女性が好きなの?」
「えっ、あ、はい、女性が好きです、俺、女性大好きです」

 更衣室に入ると他の客もおらず身の危険を感じた。
 鍵を開けたロッカーから着替えの入ったカバンを取り出し急いで更衣室を後にする。
 それでも山口も後をついてくる。

「山口さん、着替えなくていいんですか?」
「冬馬くんは女性なら誰でもいいって感じなの?」

 ひつこくついてくる執念は、VIPルームに引きずり込もうとしたゲイを彷彿とさせた。
 言い寄って来られるだけで、恐怖が押し寄せぞくぞくする。

「いや女性は好きですけど!山口さん何でついてくるんですか!」
「話がしたい!」

 これだけ女性が好きだと、自分はノンケだと言い切っているのに山口は引かない。それどころか口調が強くなった。恐怖心が余計に煽られる。

 そそくさと駆け足で外に出ると、人通りの多い方へ逃げようとするが、冬馬の腕が掴まれ脚を止められた。

「待って!」
「ちょっと離してくださいよ!」

 冬馬よりもガタイの良い山口の力は強く、思い切り引っ張られてジムの裏口の方へと連れていかれる。

(やばいやばいやばいやばい、掘られる…!)

 ギリギリ大通りから見える位置でなんとか立ち止り、犯されかけたら「きゃー」と叫ぼうと決めた。

「待てって!」
「俺もう帰りますから!」

 抵抗するけれど握られた腕がどれだけ暴れても解けない。
 つい冬馬も頭に血が昇ってきつく叫んでしまう。

「山口さん…離せ…って、おい山口っ!!離せ!!!」
「お前!“蓮”だろ!?」
「離せ!……………っは?」

 突然、蓮の名前を出されて時が止まる。
 暴れていた冬馬の、頭に昇った血が急速に冷やされていった。
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