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6月

調子に乗るんじゃありません! ※黒瀬

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 なんだよ黒瀬。お前が女子生徒から人気はあっても、普段クールぶっているせいで他の男子生徒から一線引かれていることには気付いていたが、実はそれが寂しかったのか? 男友達が欲しいならまずは自分から殻を破らないとダメなんだぞ!
 ……なんて、大して友達のいない俺が言えることでもないが。

「や、妬くって……青島くんとは実行委員が一緒だっただけで、特に何も……」
「ん。わかってる」

 拗ねたような顔を見せる黒瀬になんと言ってやればいいのか分からなくて、なんとなく言い訳がましい台詞が口をついて出た。

 そっか。黒瀬にとっても、俺は貴重な男友達の一人だったんだな。それなのに実行委員にかかりっきりでバイトにも行けていなかったから、寂しいって思ったのかな。

「おかしいよな。今まで女にもこんな風に思ったことないのに。お前のことになると、急に心が狭くなるんだ」
「ごめんね……? 来週からはまたバイト行けるから」
「本当に悪いと思ってんのか?」
「お、思ってるよ……!」

 デカいなりしてどんだけ繊細なんだよ、と少しだけ思っていたけど。俺は大きく首を縦に振った。


「じゃあ、乙成からキスしてくれよ」


「えっ⁈」

 ――― 今、なんと仰いましたか? 黒瀬さん。

「いつも俺がするばかりだろ。たまには乙成からして貰おうかと」
「えっ、えぇーーっ」

「悪いと思ってんだろ? だったら慰めてくれよ。ホラ」

 んっ、と口をひき結んで顎を上げる黒瀬。切れ長の瞳は完全に閉ざされて、いわゆるキス待ち顔ってやつだ。男のそんな顔見たくもなかったんだが……。

 既に黒瀬と行くとこまで行ってしまっていることを考えれば、キスくらい良いかと思える程には俺の思考はこの世界に毒されていたようだ。

「……これは、特別だからね……」

 俺はそう言って、脚を広げるようにして座る黒瀬の前に膝をついた。そっとその頬に手で触れると、優しく閉じられた目蓋がぴくりと反応するのが分かった。
 ちゅっ、と軽く音を立てて黒瀬の口を啄めば、まるで誘う様に唇が薄く開かれた。恥ずかしくて奥まで進むことはできなかったが、僅かに互いの舌先を触れ合わせた後、柔らかな黒瀬の下唇を食んでから離れる。

「っ、はい。おしまい……っ」
「ん……もう少しだけ」
「あっ、こら、だめ……んンっ……!」

 グッと腰を引き寄せられて、先ほど少しだけ触れた熱い舌を深く差し込まれる。

「んぁっ…! 黒瀬く、ぁむ……っ♡ ちゅ、ンぅ……はなして……っ、ひぁん♡」

 必死になって止めようともがくものの、隠れ筋肉だるまの前では無力に等しく。片手で抑え込まれて、縦横無尽に咥内を犯された。
 そう、これは犯されたと言っていいだろう。
 それくらい遠慮なく、いやらしく、ぬめぬめと動く舌に翻弄されたのだ。

「はぁ……あーーー。久しぶりの乙成、やべーわ……」
「も、駄目っ! ここ学校だよ……っ」

 黒瀬とする久しぶりのキスに、既に俺の身体には快楽の灯火がついていた。緩く勃ち上がりつつあるちんこを治めるべく、黒瀬と距離をとろうと腕を突っ張る。

「なんで学校だと駄目なんだよ」
「な、なんでって……誰かに見られちゃうかもしれないし」
「見られなきゃいいのか? ここ、ほとんど人が来ない穴場だぞ」
「そうじゃなくてっ! もぅ、我慢できなくなっちゃうから駄目なの……っ」

 分かれよ!! という気持ちを込めてそう叫ぶと、嬉しそうに口角を上げた黒瀬が、より一層瞳の温度を上げて見つめてきた。

「ふーん? 乙成は俺とキスしたら、何が我慢出来なくなっちゃうわけ?」
「えっ……⁈」
「もしかして、ちんこ勃っちゃった?」
「ぁんっ♡ やぁ…っ、だめだってばぁ……っ!」

 小さな膨らみを見せる局部に大きな手のひらを重ねられる。そこを優しく撫でるようにされると、ジャージの中のペニスがさらに芯を持ってしまい、快感を拾った俺の身体は大きく跳ねてしまう。
 きゅう、と妖しく眼を細めた黒瀬が、更にその指先に力を込めようとしたその瞬間。



「そ、それ以上したら、嫌いになるから……!」



 俺が張り上げた言葉を受けて、黒瀬の動きがぴたっと止まった。

「黒瀬くん、僕の許可なく触らないって約束だったよね? 破るの?」

 無意識に震える手で、自分の股間に置かれた黒瀬の手を剥ぎ取ると、キッと視線を鋭くして目の前の男を睨みつけた。ゆらりと視線を揺らしてから、黒瀬はさっきまでの強引さが嘘のようにサッと手を引き、両手を上げて降参のポーズを取る。

「はぁ……わぁ~かったよ。……悪い、久しぶりで箍が外れた」
「~~~もう、もう……! 次したら、ほんとにほんとに絶交だからね……っ」

 諸刃の剣である、大事な大事な『男友達』という肩書きを盾にして、俺が涙目になりながらそう言うと、黒瀬は一瞬目を丸くした後、それは困るな、なんて言いながら笑ってる。

 なんだよ、絶交したらもう友達でいられないんだぞ! 俺にとっても死活問題なんだからな! 絶対絶対守れよ! 絶対だぞ!!

 俺はそれからしばらくの間、身体の奥に燻る熱を誤魔化すように、夢中で克さんのオムライスを口の中に詰め込むことに専念するのだった。



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