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階段怪談(5)
「――あれは変人ってことでいいの?」
「まあ、全員に見えてたんだったらそういうことになるんじゃないか。あと燃やせたし」
異世界先輩の問いに、筒井筒が投げやりに答える。
場所は黒芙蓉寮の談話室。テーブルの上にはレポート用紙が広げられている。教師に提出する、反省文を書くためである。
――あのあと。
地下倉庫は長いあいだ、ただ不必要なものを詰め込むだけというような場所ではあったが、火災報知器はきちんと設置されていた。
宇津季の火法で燃やされたサルのようなものは奥の扉の、さらに向こうへと姿を消したが、なぜか地下倉庫の火災報知器が鳴ったため、ほどなくして教師が急行してきた。
地下倉庫の鍵を持っている以上逃げ出すのは得策ではないと考えて、四人は火災報知器が鳴り響く中、倉庫の外へと出るだけにした。
そこから教師たちに生徒指導室へと連行されて、ことの経緯をすべて説明することになったものの、もちろんお説教コースは免れまい。
四人は口裏を合わせてニカが掃除当番のときに落し物をして、それを捜しに来たという体裁は保ったが、それが百戦錬磨の教師陣にも押し通せたのかは定かではない。
実際、四人はレポート用紙四枚分の反省文を書くという罰を科されたのだから、その嘘はバレているような気がする。
「でもどこにもいなかったんだよね?」
「らしいな」
「開かずの扉」は幻覚ではなかったが、その扉の奥を確認してもサルに似たなにかはいなかったと教師は告げてきた。
しかし念のため「開かずの扉」と呼ばれていたそれの前には段ボール箱の山を置くことで、扉自体を隠してしまうことにしたらしい。
色々と気になることはあるものの、既に教師を怒らせている身ではあれこれと突っ込んで聞くことはできなかった。
「でも……これで階段の一件は解決したんじゃないですか?」
サルに似たなにかを燃やし、火災報知器を鳴らした主犯である宇津季は、そんなことなどまったく気にした様子もなくそう言う。
「ニカはもじゃもじゃの腕に脚を引っ張られるイメージがあるって言ってて、実際そういうものがいて、それはもう消えた……ですよね」
けろっとした宇津季の顔を見ていると、ニカは若干の小憎たらしさを感じなくはなかったが、口には出さなかった。
「でもなんかすっきりしねえよな。あのサルモドキは結局どこに消えたんだ?」
「やっぱり、あの扉は異世界に繋がってたんだよ! ああ、惜しいことをした」
「異世界ってそんなカジュアルに行き来できないだろ……って、お前は異世界人か……」
筒井筒はそんなことを言いつつもレポート、もとい反省文を書き進めている。この調子では一番に反省文を書き終えるのは筒井筒になるだろう。
「あ、そうだ」
異世界先輩も素直にシャープペンシルを動かし始めたかと思えば、すぐに止めてニカを見た。
「龍田くんには聞きたいことがあったんだよね」
「え? なんですか?」
「ほら、龍田くんは掃除当番がいっしょになった子から『開かずの扉』の話を聞いたって言ってたでしょ?」
「はい。そうですね」
「その子から詳しい話を聞きたいなーって思って。それで、龍田くんと一緒に掃除していた同級生って、だれのこと?」
「え? そういえば――
……だれだったっけ?」
「まあ、全員に見えてたんだったらそういうことになるんじゃないか。あと燃やせたし」
異世界先輩の問いに、筒井筒が投げやりに答える。
場所は黒芙蓉寮の談話室。テーブルの上にはレポート用紙が広げられている。教師に提出する、反省文を書くためである。
――あのあと。
地下倉庫は長いあいだ、ただ不必要なものを詰め込むだけというような場所ではあったが、火災報知器はきちんと設置されていた。
宇津季の火法で燃やされたサルのようなものは奥の扉の、さらに向こうへと姿を消したが、なぜか地下倉庫の火災報知器が鳴ったため、ほどなくして教師が急行してきた。
地下倉庫の鍵を持っている以上逃げ出すのは得策ではないと考えて、四人は火災報知器が鳴り響く中、倉庫の外へと出るだけにした。
そこから教師たちに生徒指導室へと連行されて、ことの経緯をすべて説明することになったものの、もちろんお説教コースは免れまい。
四人は口裏を合わせてニカが掃除当番のときに落し物をして、それを捜しに来たという体裁は保ったが、それが百戦錬磨の教師陣にも押し通せたのかは定かではない。
実際、四人はレポート用紙四枚分の反省文を書くという罰を科されたのだから、その嘘はバレているような気がする。
「でもどこにもいなかったんだよね?」
「らしいな」
「開かずの扉」は幻覚ではなかったが、その扉の奥を確認してもサルに似たなにかはいなかったと教師は告げてきた。
しかし念のため「開かずの扉」と呼ばれていたそれの前には段ボール箱の山を置くことで、扉自体を隠してしまうことにしたらしい。
色々と気になることはあるものの、既に教師を怒らせている身ではあれこれと突っ込んで聞くことはできなかった。
「でも……これで階段の一件は解決したんじゃないですか?」
サルに似たなにかを燃やし、火災報知器を鳴らした主犯である宇津季は、そんなことなどまったく気にした様子もなくそう言う。
「ニカはもじゃもじゃの腕に脚を引っ張られるイメージがあるって言ってて、実際そういうものがいて、それはもう消えた……ですよね」
けろっとした宇津季の顔を見ていると、ニカは若干の小憎たらしさを感じなくはなかったが、口には出さなかった。
「でもなんかすっきりしねえよな。あのサルモドキは結局どこに消えたんだ?」
「やっぱり、あの扉は異世界に繋がってたんだよ! ああ、惜しいことをした」
「異世界ってそんなカジュアルに行き来できないだろ……って、お前は異世界人か……」
筒井筒はそんなことを言いつつもレポート、もとい反省文を書き進めている。この調子では一番に反省文を書き終えるのは筒井筒になるだろう。
「あ、そうだ」
異世界先輩も素直にシャープペンシルを動かし始めたかと思えば、すぐに止めてニカを見た。
「龍田くんには聞きたいことがあったんだよね」
「え? なんですか?」
「ほら、龍田くんは掃除当番がいっしょになった子から『開かずの扉』の話を聞いたって言ってたでしょ?」
「はい。そうですね」
「その子から詳しい話を聞きたいなーって思って。それで、龍田くんと一緒に掃除していた同級生って、だれのこと?」
「え? そういえば――
……だれだったっけ?」
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