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「あのね、ローザにだけおしえるね……」
幼馴染のガーネットがそう言ってわたしにだけ秘密を打ち明けてくれることは幾度かあった。肉親にも、親しい友人にも言わない秘密を、わたしにだけ教えてくれる。そこにわたしはいくらかの優越感を見出していた。
ガーネットの秘密を、わたしだけが知っているという、どこか後ろめたさにも似た、無垢ではない感情から出てくる優越感。そしてガーネットに信頼されているんだという誇らしさ。
わたしはそれらの感情で胸をいっぱいにして、その夜に思い返してはひとり笑んでいたものだ。
しかしそれは、まだ無邪気な、完全な子供だった頃までの話で。
「おれ、ベリラのことがすきなんだ」
年上の幼馴染の名前を出されて、わたしは硬直した。完全に不意を突かれて呆気に取られる。そのあと、次第にもやもやとした暗雲のような感情が心臓を覆いつくしていった。
ガーネットはわたしからのなんらかの反応を期待して、秘密を打ち明けているのではない。ただ、心から溢れ出てくる感情のはけ口として、親しいわたしを選んだだけなのだ。
それはちょっと残酷なように思えるかもしれないが、ガーネットも子供であったから、その仕打ちも仕方のないことだった。わたしもわたしで、ガーネットの秘密の話に優越感を見出していたのだから、お互い様だ。
ガーネットにとってわたしは特別な存在だったけれども、それはわたしが望む「特別」とは違っていた。
わたしは、ガーネットの初恋を目撃し、自覚したのだ。
わたしはガーネットのことが好きなのだ、と。ガーネットにとって「特別」な、彼が愛する人になりたいのだと。
それは完全な子供時代の終わりを告げると同時に、終わりなく心臓を責めさいなんでくる初恋をわたしにもたらした。
ガーネットが健気に、年上のベリラに控え目すぎる求愛をする姿は、わたしにはとても見ていられなかった。
けれども、ガーネットの気を引く方法も、ましてや心変わりさせるだけのアピールをする方法も、わたしにはわからなかった。
完全な子供時代を終えたとて、わたしはまだじゅうぶんすぎるほどに子供だった。
そして華やかで女性らしい三人の姉に反発するように――当時は――男勝りの少女だったわたしは、急にガーネットに求愛するなんて、そんなことは恥ずかしくてとてもできなかった。
ガーネットが異性のわたしにこっそり秘密を打ち明けてくれるのは、同性の気安さで付き合える人間だからということも、理解していたから、なおさら。
だから、ベリラの態度に一喜一憂するガーネットを、わたしはただ見守ることしかできなかった。
その関係が変わったのは、ベリラが占術の結果に従って嫁いでからだろうか。いやそれよりもあと、ガーネットが占術の才を認められて王都へ行くことになってからだろうか。
とにかく関係が変わったことはたしかだ。
問題は、ベリラが嫁いだことでガーネットの初恋は終わっただろうが、わたしの初恋はまだ終わりそうにないというところだろう。
ガーネットよりあとに、いくらか占術の才があったわたしは、地元の教師の薦めによって王都にある学園に入った。
故郷を離れたことをいい機会だと思い、男勝りな言動はやめた。故郷での振る舞いを戒めとしたせいか、わたしはずいぶんと大人しい人間になったように思う。
けれど久しぶりに会ったガーネットはなにも言わなかった。それはありがたくもあり、なんだか憎らしくもあり。
そして学園に入ってわたしはガーネットがもはや雲上人に等しい存在だと思い知った。ガーネットを取り巻く貴族や、気を惹きたい人間の多さといったら!
わたしは、ガーネットの幼馴染という、自分の力で得たわけではないアドバンテージを利用することもできず、ただ学園に通う普通の生徒の顔をしていることしかできなかった。
わたしは、格好良くないガーネットの姿を知っている。ガーネットの幼いころの秘密を知っている。初恋を、知っている。
けれど、それがなんだっていうんだろう。
みじめな気持ちと初恋を押し殺して、勉強に没頭することしかわたしにはできなかった。
そうすればもしかしたら、ガーネットの隣へ行くことに少しは勇気を持てるかもしれないと思ったから。
けれども学年が上がるにつれてガーネットが学園で過ごす時間は目に見えて減って行った。
それでも学園に顔を出せばわたしとは話をしてくれるのだから、ガーネットは優しい。そういう、驕ったところのない性格がひとを惹きつけてやまないのだろう。
「ローザ、通知がきたと思うけれど――」
そして久しぶりに顔を合わせたガーネットの言葉に、わたしは「うん」とか「ああ」とか煮え切らない返事しかできなかった。
ガーネットの「運命の相手」に選ばれたのは、そろそろ学園を卒業する日を意識し始める、あるうららかな春の日のことだった。
「じゃあ、そういうことだから……」
「うん……」
「退寮の手伝いはいる?」
「大丈夫……荷物、そんなに多くないし」
「そう……」
言葉数が少なくなるのも無理はなかった。
だって、「運命の相手」に選ばれたということは、つまりガーネットと子供が出来る行為をこれからするということだったから。
わたしじゃなくたって緊張して、不安でいっぱいになってしまうのは、おかしいことではないと思いたい。
「ローザ」
「うん?」
「……イヤ?」
ガーネットの瞳が不安に揺れているのを見て、わたしは彼もこちらと少しは同じ気持ちでいるのだと、遅まきながらに理解した。
ガーネットにだってもしかしたら、好きなひととかいたのかもしれない。そう思うと心臓がぎゅっと握られたような気持ちになった。
わたしはあわてて首をぶんぶんと横に振った。
「ガーネットで、よかったよ。だって、全然知らないひととかだったら、なんていうか……気まずい? でも、ガーネットのことは昔から知ってるから」
あなたのことを愛しているから、うれしい。
それは、とても言えなかった。もし、ガーネットの心にベリラの影が残っていたら。そう思うと舌の根が乾いていくような気になる。
「なら、いいんだけど」
ガーネットはどこか安堵した様子でそう言った。
どうやら、わたしは言葉の選択を間違えなかったようだ。そう思うとますます「あなたのことを愛している」とは言えない気持ちになっていった。
そしてあわただしくの退寮、引っ越し、そして初夜を迎えたわけだけれど、その夜のことはわたしの記憶からはほとんど完全に飛んでしまった。
幼馴染のガーネットがそう言ってわたしにだけ秘密を打ち明けてくれることは幾度かあった。肉親にも、親しい友人にも言わない秘密を、わたしにだけ教えてくれる。そこにわたしはいくらかの優越感を見出していた。
ガーネットの秘密を、わたしだけが知っているという、どこか後ろめたさにも似た、無垢ではない感情から出てくる優越感。そしてガーネットに信頼されているんだという誇らしさ。
わたしはそれらの感情で胸をいっぱいにして、その夜に思い返してはひとり笑んでいたものだ。
しかしそれは、まだ無邪気な、完全な子供だった頃までの話で。
「おれ、ベリラのことがすきなんだ」
年上の幼馴染の名前を出されて、わたしは硬直した。完全に不意を突かれて呆気に取られる。そのあと、次第にもやもやとした暗雲のような感情が心臓を覆いつくしていった。
ガーネットはわたしからのなんらかの反応を期待して、秘密を打ち明けているのではない。ただ、心から溢れ出てくる感情のはけ口として、親しいわたしを選んだだけなのだ。
それはちょっと残酷なように思えるかもしれないが、ガーネットも子供であったから、その仕打ちも仕方のないことだった。わたしもわたしで、ガーネットの秘密の話に優越感を見出していたのだから、お互い様だ。
ガーネットにとってわたしは特別な存在だったけれども、それはわたしが望む「特別」とは違っていた。
わたしは、ガーネットの初恋を目撃し、自覚したのだ。
わたしはガーネットのことが好きなのだ、と。ガーネットにとって「特別」な、彼が愛する人になりたいのだと。
それは完全な子供時代の終わりを告げると同時に、終わりなく心臓を責めさいなんでくる初恋をわたしにもたらした。
ガーネットが健気に、年上のベリラに控え目すぎる求愛をする姿は、わたしにはとても見ていられなかった。
けれども、ガーネットの気を引く方法も、ましてや心変わりさせるだけのアピールをする方法も、わたしにはわからなかった。
完全な子供時代を終えたとて、わたしはまだじゅうぶんすぎるほどに子供だった。
そして華やかで女性らしい三人の姉に反発するように――当時は――男勝りの少女だったわたしは、急にガーネットに求愛するなんて、そんなことは恥ずかしくてとてもできなかった。
ガーネットが異性のわたしにこっそり秘密を打ち明けてくれるのは、同性の気安さで付き合える人間だからということも、理解していたから、なおさら。
だから、ベリラの態度に一喜一憂するガーネットを、わたしはただ見守ることしかできなかった。
その関係が変わったのは、ベリラが占術の結果に従って嫁いでからだろうか。いやそれよりもあと、ガーネットが占術の才を認められて王都へ行くことになってからだろうか。
とにかく関係が変わったことはたしかだ。
問題は、ベリラが嫁いだことでガーネットの初恋は終わっただろうが、わたしの初恋はまだ終わりそうにないというところだろう。
ガーネットよりあとに、いくらか占術の才があったわたしは、地元の教師の薦めによって王都にある学園に入った。
故郷を離れたことをいい機会だと思い、男勝りな言動はやめた。故郷での振る舞いを戒めとしたせいか、わたしはずいぶんと大人しい人間になったように思う。
けれど久しぶりに会ったガーネットはなにも言わなかった。それはありがたくもあり、なんだか憎らしくもあり。
そして学園に入ってわたしはガーネットがもはや雲上人に等しい存在だと思い知った。ガーネットを取り巻く貴族や、気を惹きたい人間の多さといったら!
わたしは、ガーネットの幼馴染という、自分の力で得たわけではないアドバンテージを利用することもできず、ただ学園に通う普通の生徒の顔をしていることしかできなかった。
わたしは、格好良くないガーネットの姿を知っている。ガーネットの幼いころの秘密を知っている。初恋を、知っている。
けれど、それがなんだっていうんだろう。
みじめな気持ちと初恋を押し殺して、勉強に没頭することしかわたしにはできなかった。
そうすればもしかしたら、ガーネットの隣へ行くことに少しは勇気を持てるかもしれないと思ったから。
けれども学年が上がるにつれてガーネットが学園で過ごす時間は目に見えて減って行った。
それでも学園に顔を出せばわたしとは話をしてくれるのだから、ガーネットは優しい。そういう、驕ったところのない性格がひとを惹きつけてやまないのだろう。
「ローザ、通知がきたと思うけれど――」
そして久しぶりに顔を合わせたガーネットの言葉に、わたしは「うん」とか「ああ」とか煮え切らない返事しかできなかった。
ガーネットの「運命の相手」に選ばれたのは、そろそろ学園を卒業する日を意識し始める、あるうららかな春の日のことだった。
「じゃあ、そういうことだから……」
「うん……」
「退寮の手伝いはいる?」
「大丈夫……荷物、そんなに多くないし」
「そう……」
言葉数が少なくなるのも無理はなかった。
だって、「運命の相手」に選ばれたということは、つまりガーネットと子供が出来る行為をこれからするということだったから。
わたしじゃなくたって緊張して、不安でいっぱいになってしまうのは、おかしいことではないと思いたい。
「ローザ」
「うん?」
「……イヤ?」
ガーネットの瞳が不安に揺れているのを見て、わたしは彼もこちらと少しは同じ気持ちでいるのだと、遅まきながらに理解した。
ガーネットにだってもしかしたら、好きなひととかいたのかもしれない。そう思うと心臓がぎゅっと握られたような気持ちになった。
わたしはあわてて首をぶんぶんと横に振った。
「ガーネットで、よかったよ。だって、全然知らないひととかだったら、なんていうか……気まずい? でも、ガーネットのことは昔から知ってるから」
あなたのことを愛しているから、うれしい。
それは、とても言えなかった。もし、ガーネットの心にベリラの影が残っていたら。そう思うと舌の根が乾いていくような気になる。
「なら、いいんだけど」
ガーネットはどこか安堵した様子でそう言った。
どうやら、わたしは言葉の選択を間違えなかったようだ。そう思うとますます「あなたのことを愛している」とは言えない気持ちになっていった。
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