読切怪奇談話集(仮)

やなぎ怜

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徐々に開いていく扉

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 もう解決したのかな?と思っているんだけど。

 あと、ただの気のせいって言われたら否定できないので対して怖くない話だと思う。


 視界の外側というか、視界の端?キワのところ?ってよく見えてはいないじゃん。

 するとだれかいたような、ひと影を見たような気になって改めて視界の正面?中心部?でとらえるとだれもいない、みたいなことって経験あると思う。あるよね?

 空目|(からめ)って言うのかな?

 まあ見間違うことってあるよね、というのが言いたいんだけど。


 それで本題。

 あるとき、視界の端っこで扉を見たんだけど、その扉が見覚えのないもの……のような気がした。

 あれ?って思って視界の正面で見たんだけど、そこにあった扉はよく見知ったものだった。

 あ、場所は二階建てのごく普通の一軒家の二階部分ね。

 俺の家の場合は二階は家族の私室っていうのかな?まあ自室にあてられてる。

 その二階に階段で上がったときに、あれ?ってなった。

 その位置からは部屋ふたつとトイレで、扉が三つあるのが視界で確認できたんだけど、そのうちのひとつがなんか見覚えがない。

 で、改めて見てみたら見慣れた扉しかなかった、という話。

 この時点では単なる見間違いの話なんだけど、そういうことが頻発してくると不気味に思うようになった。

 俺の頭がおかしいのか、家がおかしいのか。

 俺んちは家族仲が悪いわけじゃないんだけど、なんでもかんでも相談できる間柄って感じでもないんで、このことはだれにも言わなかった。

 家の中の話だから、友人に話すのにも位置関係の説明とかがめんどくさいなーと思って言ったりしなかった。

 単なる見間違いで、あと別に俺の頭がおかしいのかもという懸念以外に恐怖はなかったし。

 でもあるとき、また視界の端っこに見覚えのない扉が見えたんだけど、その扉がちょっと開いている……ように見えた。

 そのときまで見覚えのない扉は閉まっているものだと思っていたというか、思い込んでいたんで、ちょっと開いているように見えてあれ?ってなった。

 視界の端って繰り返しになるけど、よく見えないじゃん?

 ちょっとぼんやりとしかとらえられないというか。

 そんな感じだったから、その見覚えのない扉が開いていることに初めて気づいた。

 それまではたぶん、閉まっていたか、ぼんやりとした視界では閉まっているようにしか見えないほど、ちょっとしか開いてなかったんだと思う。

 自信がないんだけど、そのときにあれ?って気がついたから、俺が見始めてから最初のほうは閉まってたんじゃないかと思っているんだけど。

 それでその見覚えのない扉がさ、なんか目撃するたびに徐々に開いてきていることに気づいた。

 開いてきた扉の向こうは暗いというか、黒かった?ような気がする。

 視界の端っこでしか見れないから、よくわからんけど。

 扉はよくある木目調の茶色い扉だったんだけど、扉のちょっと開いた向こうが黒かったから、ぼんやりとした視界の端っこでも開いているというのが認識できたわけなんだ。

 なんか、目撃するたびに変化して行くって、よくある心霊写真の怪談(徐々にこちらに顔が向き始める的なやつ)に似てない?

 俺はなんかそれを想像しちゃって、そのことに気づいてからは見慣れない扉をちょっと怖く思うようになった。

 でも俺にできることなんてない。

 家族や友人に言っても頭おかしいやつとしか思われないだろうし。

 家の二階に上がるの嫌だなーって思いながらも、俺の部屋は二階にあるから毎日階段はのぼるから、たびたび例の見慣れない扉は見る。

 どうすることもできずに、ただ視界の端っこで扉が開きつつあるのをぼんやりと見ることしかできなかった。

 完全に開いたらどうなるんだろう?というのはずっと思ってた。

 なんか漠然と怖いものが出てくるのかな?とかは思ってたけど、視界の端っこでしか見れない扉にどう干渉すればいいのかさっぱりわからなかった。

 それがあるとき、俺の部屋でぼんやりスマホ見てたときに、部屋の外でバタン!って扉が閉まるでかい音がした。

 俺の部屋の真正面が親父の部屋で、その部屋にはベランダがついてるんだけど、ベランダに面したでかい窓ガラスを開けて、網戸だけにしてると、風の通りによって半開きの扉が勢いよく閉まってそういうでかい音がすることがあったんだよね。

 そのときと同じ音がしたから、別に変には思わなかったんだけど、なんとなく暇だったから自室の扉を開けて、真正面の親父の部屋を見た。

 親父の部屋の扉は開きっぱなしで、あれ?ってなった。横に続く弟の部屋とかトイレの扉は閉じてたんだけど、扉が閉まるでかい音がするのって俺が記憶してる限りでは親父の部屋だけだったから、あれ?って。

 それでしばらくしてから、二階に上がったときに視界の端っこで見慣れない扉を見ることがなくなってることに気づいた。

 親父の部屋の扉の一件と関係あるのかはわからないんだけど、心当たりというかなんというか、きっかけかな?と思えるのはそれくらいしか思いつかない。

 見なくなったから解決したのかな?と思っているんだけど、どうなんだろう。

 今は当時感じていたうっすらとした恐怖心もほとんどなくなって、ただ、なんだったんだろうなーという感想だけが残ってる。

 まじでなんだったんだろう?

 だれか同じ経験したとか、わかるやついる?
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