1 / 2
前編
しおりを挟む
「先生――いえ、金森祥子さん。好きです。結婚してください」
「え?」
なにを言われたのか恥ずかしながら理解できなくて固まったわたしに、その子は続けて言った。
「いいですか先生。俺はあなたのことが好きです。とても好きです。寝ても覚めてもあなたのことを考えているくらい好きと言っても足りないくらい好きです。ですが困ったことにあなたは教師。俺は生徒。きっとあなたを含める誰もが一時の気の迷いだと言うでしょう。しかし落ち着いて、冷静に考えながら聞いてください。例え一時の気の迷いにしても、俺の友人知人がしている薄っぺらな口先もしくは肉体関係だけで済ませられる子供のままごとの延長のような恋人なんて関係ではなく、法律によって国に認められる夫婦になりたいと思ったんです。この考えを打ち明けるのにどれほどの勇気がいるかわかりますか?あなたに迷惑をかけるかもしれない。あなただけではない、周囲にも迷惑をかけるかもしれない。俺自身にもあらゆる中傷が向けられる可能性があります。それが解りきった上であなたに打ち明けて結婚したいと思ったこの気持ちをそれでも否定しますか?この気持ちを否定されたら俺はなにを信じればいいですか?信じられるものなんて無くなるに決まってます。だから俺が先生のことを好きなことは否定しないでくださいね」
「……え、あ、えっと?」
わたしは目をぱちぱちと思わず瞬いた。
でも、すごい滑らかに、早くはないはずなのに耳から滑って零れ落ちていくくらい沢山話しかけられて戸惑い驚いたのは無理のない話だと思う。
だって、春にこの子の担任になってからもうすぐ学年末だというのに、こんな、ににこにこと笑顔を浮かべ、怒涛のように喋るところを見たことがなかったのだ。
正直驚きのあまり殆ど聞き取れなかった気がするけれど、この子がわたしのことを「好き」だということはわかった。
「あ、あの、ありがとう梶塚くん。先生、そう言って貰えてとっても嬉しいわ」
とりあえず笑顔で好意に対するお礼を言ったわたしに、梶塚くんもにこりと笑って応えてくれた。
「それで、卒業後結婚して欲しいんですけど、それは喜んでもらえますか?」
「えっ、……と?」
ケッコン。
どうしよう、ケッコンと好きが合わさると、結婚としか漢字変換ができない。なにか、他にあったかしら?
再び言葉に詰まったわたしに、梶塚くんはにこにこ笑った。
「ごめんなさい先生。さっきから言ってるけど俺、先生がとっても好きなんで、そういうかわいいとこ見てると健全な男として襲いたくなっちゃうんで、とりあえず今日は帰ります。先生のこと、そういう色目で結婚したと思われたくないんで」
「えっ、え、ええ?」
「それじゃあ、また明日」
そのまま、にこにこと笑顔で教室から出て行った梶塚くん。
ああ、そうだ。ここは教室で、完全下校時刻になったから当番のわたしが校内に残ってる生徒がいないか確認しに来ていたんだった。
それで、珍しく梶塚くんがいたから声を掛けて、それで……。
「ぇえ?」
ぼんっと、きっと漫画だったら効果音が付いていただろうくらい、一瞬でわたしの顔は熱く熱く燃えて火を噴いているんじゃないかと思うくらいの熱を持った。
「え?」
なにを言われたのか恥ずかしながら理解できなくて固まったわたしに、その子は続けて言った。
「いいですか先生。俺はあなたのことが好きです。とても好きです。寝ても覚めてもあなたのことを考えているくらい好きと言っても足りないくらい好きです。ですが困ったことにあなたは教師。俺は生徒。きっとあなたを含める誰もが一時の気の迷いだと言うでしょう。しかし落ち着いて、冷静に考えながら聞いてください。例え一時の気の迷いにしても、俺の友人知人がしている薄っぺらな口先もしくは肉体関係だけで済ませられる子供のままごとの延長のような恋人なんて関係ではなく、法律によって国に認められる夫婦になりたいと思ったんです。この考えを打ち明けるのにどれほどの勇気がいるかわかりますか?あなたに迷惑をかけるかもしれない。あなただけではない、周囲にも迷惑をかけるかもしれない。俺自身にもあらゆる中傷が向けられる可能性があります。それが解りきった上であなたに打ち明けて結婚したいと思ったこの気持ちをそれでも否定しますか?この気持ちを否定されたら俺はなにを信じればいいですか?信じられるものなんて無くなるに決まってます。だから俺が先生のことを好きなことは否定しないでくださいね」
「……え、あ、えっと?」
わたしは目をぱちぱちと思わず瞬いた。
でも、すごい滑らかに、早くはないはずなのに耳から滑って零れ落ちていくくらい沢山話しかけられて戸惑い驚いたのは無理のない話だと思う。
だって、春にこの子の担任になってからもうすぐ学年末だというのに、こんな、ににこにこと笑顔を浮かべ、怒涛のように喋るところを見たことがなかったのだ。
正直驚きのあまり殆ど聞き取れなかった気がするけれど、この子がわたしのことを「好き」だということはわかった。
「あ、あの、ありがとう梶塚くん。先生、そう言って貰えてとっても嬉しいわ」
とりあえず笑顔で好意に対するお礼を言ったわたしに、梶塚くんもにこりと笑って応えてくれた。
「それで、卒業後結婚して欲しいんですけど、それは喜んでもらえますか?」
「えっ、……と?」
ケッコン。
どうしよう、ケッコンと好きが合わさると、結婚としか漢字変換ができない。なにか、他にあったかしら?
再び言葉に詰まったわたしに、梶塚くんはにこにこ笑った。
「ごめんなさい先生。さっきから言ってるけど俺、先生がとっても好きなんで、そういうかわいいとこ見てると健全な男として襲いたくなっちゃうんで、とりあえず今日は帰ります。先生のこと、そういう色目で結婚したと思われたくないんで」
「えっ、え、ええ?」
「それじゃあ、また明日」
そのまま、にこにこと笑顔で教室から出て行った梶塚くん。
ああ、そうだ。ここは教室で、完全下校時刻になったから当番のわたしが校内に残ってる生徒がいないか確認しに来ていたんだった。
それで、珍しく梶塚くんがいたから声を掛けて、それで……。
「ぇえ?」
ぼんっと、きっと漫画だったら効果音が付いていただろうくらい、一瞬でわたしの顔は熱く熱く燃えて火を噴いているんじゃないかと思うくらいの熱を持った。
0
あなたにおすすめの小説
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる