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7. 教え子
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なんでもないほんの小さな村。そこから少しばかり離れたところに、男が一人住んでおりました。男は村の子供達に読み書きを教えており、その朗らかで陽気な人柄ゆえ、多くから慕われていました。
ある日のこと、一人の少年が男の元に習いにやって来ました。少年の名はボムギュ、天から舞い降りたのでは、と疑うほどの美貌の持ち主でありました。
男も思わず見惚れてしまったもので、その初々しい振る舞いは男の気分を良くさせました。ボーっと男の顔を見ては、サッと目を逸らし頬を紅潮させる…男が一緒に字を書いてやろうとその手を握れば、少々湿っぽいのです。緊張のあまり汗をかいているのか。
けれど、身に纏う貧相な着物があまりにも不釣り合いで、何かを隠しているようにも思いました。書く字は下手くそ そのもの、その容姿と話し方にまるで伴わない。はて…と首を傾げておりました。
その夜、男は夢を見ました。ボムギュが男の膝元に座り、字を書いているようでした。男の片手はその上に添えられており、もう片方の手は…ボムギュの着物の中へと入ってゆくではありませんか。男はごくりと生唾を飲み込みました。
「せんせぇ、もっとご指導してくださいませ…お慕いしております…」
ボムギュの妖しい声に惑わされ、男は彼の上に重なりました。健気な求愛、白魚のような肌…彼は禁断の果実そのものです。そこで男は目を覚ましました。
教え子を相手に、なんと罪深いことを。男は邪念を振り払おうと一心不乱でした。自分の周りに群がる子供達を見ては、そうだ…みんなただの子供だ、子供、子供じゃないか。あの子だって、ただの綺麗な子供だ。そう自らに言い聞かせました。
ようやく少し落ち着いて、ホッとしていたところにボムギュはやって来ました。その姿を見た途端、男の身体がまた疼き始めるのです。とても彼に近づくことなどできません。
そうしていつまでもボムギュをほったらかしにしていた報いでしょうか。彼は他の子供のところへ行ってしまいました。子供同士仲良くする、ほほえましいはずなのに なぜだか妙な苛立ちを覚えるのです。目を逸らそうにも逸らせません。
すると、ボムギュがその子供の手を…握ったではありませんか。それは男の中の何かをプツンと切りました。
「おいおいおい、そこっ!駄目だろぉ 友達同士で教え合いっこなんてしちゃあ!」
ボムギュは…阿保なんだ。まともに字も書けないくせに、他の野郎の手を握るなんて。沸々と黒い炎をたぎらせる男でしたが、すぐに後悔することとなります。ボムギュが逃げ出してしまったのです。呆気に取られ、あわてて追いかけようとしましたが、子供達から「せんせー、おっせてよぉ」と口々に言われてしまいました。思わぬ邪魔に、「うるせぇ 黙ってろ!」と男は怒鳴り散らしそうになりましたが、どうにかすんでのところで留めることができました。
大丈夫、またじきに戻ってくるだろ。男は自らにそう言い聞かせることにしました。けれどもあの子供の元を見に行ってみますと、また酷く動揺してしまいました。直している字が小さな子供のものではないのです。その子に問いただしてみても、ボムギュの名前すら知らないという始末…神隠しにでもあったのか?
とうとう、みんなが帰る時間になってもボムギュは戻ってきませんでした。それは次の日も、また次の日も…男の心にはぽっかりと、大きな穴が空いたようでした。
ある日のこと、一人の少年が男の元に習いにやって来ました。少年の名はボムギュ、天から舞い降りたのでは、と疑うほどの美貌の持ち主でありました。
男も思わず見惚れてしまったもので、その初々しい振る舞いは男の気分を良くさせました。ボーっと男の顔を見ては、サッと目を逸らし頬を紅潮させる…男が一緒に字を書いてやろうとその手を握れば、少々湿っぽいのです。緊張のあまり汗をかいているのか。
けれど、身に纏う貧相な着物があまりにも不釣り合いで、何かを隠しているようにも思いました。書く字は下手くそ そのもの、その容姿と話し方にまるで伴わない。はて…と首を傾げておりました。
その夜、男は夢を見ました。ボムギュが男の膝元に座り、字を書いているようでした。男の片手はその上に添えられており、もう片方の手は…ボムギュの着物の中へと入ってゆくではありませんか。男はごくりと生唾を飲み込みました。
「せんせぇ、もっとご指導してくださいませ…お慕いしております…」
ボムギュの妖しい声に惑わされ、男は彼の上に重なりました。健気な求愛、白魚のような肌…彼は禁断の果実そのものです。そこで男は目を覚ましました。
教え子を相手に、なんと罪深いことを。男は邪念を振り払おうと一心不乱でした。自分の周りに群がる子供達を見ては、そうだ…みんなただの子供だ、子供、子供じゃないか。あの子だって、ただの綺麗な子供だ。そう自らに言い聞かせました。
ようやく少し落ち着いて、ホッとしていたところにボムギュはやって来ました。その姿を見た途端、男の身体がまた疼き始めるのです。とても彼に近づくことなどできません。
そうしていつまでもボムギュをほったらかしにしていた報いでしょうか。彼は他の子供のところへ行ってしまいました。子供同士仲良くする、ほほえましいはずなのに なぜだか妙な苛立ちを覚えるのです。目を逸らそうにも逸らせません。
すると、ボムギュがその子供の手を…握ったではありませんか。それは男の中の何かをプツンと切りました。
「おいおいおい、そこっ!駄目だろぉ 友達同士で教え合いっこなんてしちゃあ!」
ボムギュは…阿保なんだ。まともに字も書けないくせに、他の野郎の手を握るなんて。沸々と黒い炎をたぎらせる男でしたが、すぐに後悔することとなります。ボムギュが逃げ出してしまったのです。呆気に取られ、あわてて追いかけようとしましたが、子供達から「せんせー、おっせてよぉ」と口々に言われてしまいました。思わぬ邪魔に、「うるせぇ 黙ってろ!」と男は怒鳴り散らしそうになりましたが、どうにかすんでのところで留めることができました。
大丈夫、またじきに戻ってくるだろ。男は自らにそう言い聞かせることにしました。けれどもあの子供の元を見に行ってみますと、また酷く動揺してしまいました。直している字が小さな子供のものではないのです。その子に問いただしてみても、ボムギュの名前すら知らないという始末…神隠しにでもあったのか?
とうとう、みんなが帰る時間になってもボムギュは戻ってきませんでした。それは次の日も、また次の日も…男の心にはぽっかりと、大きな穴が空いたようでした。
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