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6. プロポーズ 2

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「はぁい、どなたぁ」

 心地の良い柔らかな声が響き渡り、僕の頬は緩む。幸せに包まれたからだ、という理由では満足してはもらえないだろうか。

 屋敷の中でも一番上質な部屋から、ひょっこり顔を覗かせる彼の姿が頭の中に浮かんだ。やはり、その品の良さはおおよそこのアパートには不釣り合いともいえよう。早くふさわしい場所に連れ出してあげないと、彼が可哀想だ。

 可愛らしくペタペタと、その彼は素足で歩いてきているらしい。顔に熱が集まりドキドキとしながら、腕の中にある大輪の赤い薔薇の花束に祈りを捧げる。大丈夫…運命の赤い糸で結ばれた僕達なら、きっと上手くいくはずだよ。

 ポケットには彼への結婚指輪が入っていた。給料三ヶ月分…では僕の溢れる気持ちはとても収まらず、気の済むだけのものにした。幸せの投資だ。大丈夫、これからずっとそばにいてくれるんだ…とびきりのものを用意しないと、彼に申し訳ないではないか。
 あぁっ、どんな風に彼は喜んでくれるのだろう。感極まり何も言えなかったりして…それなら優しく抱きしめて、背中をさすってあげないと。お姫様抱っこで連れ帰るのもいい…二人だけの世界だ。

 そう固く決意し心を清めていると、薄い扉がゆっくりと開いていった。高鳴る鼓動、緊張の瞬間…待ちに待った愛しの彼が顔を覗かせ、僕は何万回と練習した言葉を力一杯捧げた。


「チマくんっ…僕と、結婚して下さいッ!」

 ひざまずいて、情熱の花束を彼へ。僕はこの日のために新調したスーツを着ていたが、彼はシンプルなTシャツとロングパンツだった。それがすごくそそられた。
 この下に、僕が作った下着を着せるのか…けしからん、実にけしからん…っ…破廉恥だっ、いやらしいっ!

『これを着たら、その…い、イケない気分に、なる…』
 彼の頬は真っ赤で、猫のようにそっぽを向いてしまう。堪らず僕は押し倒し、深い愛を二人で何度も確かめ合うのだった…見える、見えるぞ、そんな未来が…ッ!

 これなら次の赤ちゃんができるのも早いだろう…僕のプロポーズを後押ししたのもそれだった。一人目の子が失敗作だったのだ。
 僕にそっくり、ママである彼にばかり懐く…僕の分身。猛烈に腹が立った。一体いつまで乳を吸ってんだ…それは僕のおっぱいだぞ…?

 彼の腕を占領して離さない傲慢な悪魔に、僕は制裁を加えた。そうしたら消えてなくなった。…ここは僕の楽園だ。
 次は彼そっくりの、まるで卵から生まれてきたような子にしよう。そうだ、そうしよう。最初からそういうことにすればよかったんだ。


「へっ…あの…な、何の話、です…?」

 愛する彼は驚いた顔をして、辺りをキョロキョロと見渡していた。
「こっ、これって…もしかしてカメラとか…回ってる?ごっ、ごめんなさい、悪いけど、ちょっとそういうのは…あはは」と、どこか困ったような顔をする。…なんて可愛い笑顔だろう。

「カメラは…回っていないよ。そっか、玄関口でいきなりごめんね。君は照れ屋だから、誰かに見られるのは嫌だよね…仕切り直そう」

 だから僕は、中に入ろうとしたわけだ。
「ちょっ、ちょっ!お兄さん待ってよ!なにっ、マジでなんなの?ちゃんと説明してくんないとっ」
「おにい、さん…?いつもまこちゃんって呼んでくれるのに…ふふっ、でもいいね。たまには君のお兄ちゃんになるのも」
 しかしなぜだか、なかなか入れてはくれない。どうしてだろう。

 やっぱり赤ちゃんのこと、怒ってるのかな。君が一生懸命お腹を痛めて産んだんだもんね…ごめん、本当にごめんね。謝るけど…悪いとは思っていない。

 だってあれは僕だもの、僕は二人もいらない。君ならいくらいたって嬉しいけど。

「やっ、やめっ…ちょっ、何すんだッ!」

 君がいつもと違ってよそよそしいのは、僕に甘えたいからなんだ。それで、赤ちゃんが欲しいんだね。…うん、僕も欲しい。君にそっくりの子が。


「ひっ…ぅぁ…ぁぁっ…いっいぃいい゛や゛ッッ!!おぅお゛ぉっおねがいぃィぅ!!」

 んっ、あふっ…ンンッ…あれ、チマくんの中…随分と狭いや。最後にしてから…ふンッ、結構経つんだっけ…まぁいっか、これから毎日しようね。そうしたら、んふッ、すぐにゆるゆるになるよっ…はぅッ!
 今日は結婚記念日だ…嬉しい嬉しい結婚記念日ッ!早く僕との赤ちゃんが産まれるよう、ちょっと…ふんンンッ!激しくしてあげるぅゥうッ!!
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