プレイ

ななな

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 ギリシャ彫刻みたいだ ーー 第一印象はそれだった。

 進之介より一つ歳上の男性で、他学部。接点といえば、一般教養科目の講義が一つだけ同じだということ。
 横を通った時、頭一つ分は大きい背丈に思わず見上げてしまった。その際、目が合ったような気がしたが、すぐに逸らされてしまった。

 名前は滝藤たきとう 真琥まこというらしい。同じ学部の女子が、楽しそうにその人の噂話をしているのを聞いた。振った女の数知れず ーー あの容姿なら納得がいく。


「滝藤さんっ、隣いいっすか?」

 面白そうだ、どんな人だろう。好奇心が背中を押し、つい話しかけていた。滝藤はその講義をいつも一人で受けているようだった。

「……いいけど、誰?キミ…」と滝藤の表情は引き気味だ。それでも進之介は、初めて聞く滝藤の声に小さく身震いし、笑みが溢れる。

「おれ、瀬見せみっていいます、瀬見 進之介。いやぁ、他学部の先輩って周りにいないから、色々話を聞きたくて……」

 こういうのを俗に" ナンパ "というのかもしれない。特に見返りを求めてはいなかったので、進之介の気持ちはただただ軽かった。 

「ふぅん……ははっ。なんで、俺の名前知ってんの」

「そりゃもう、有名人ですよ、滝藤さんは」

 思いがけない滝藤の笑顔に、意外と可愛いのな……とひっそり思う。なんだか得をしたような気分で、頬の緩みが抑えられない。
 じきに始まった講義の間も、ずっと頭がふわふわとなっていた。慣れない不思議な感覚に首を傾げるが、嫌ではない。むしろ心地良さを覚えた。
 
 講義が終わり、「じゃ、また来週」と滝藤から簡素な言葉が投げかけられると、急に夢から覚めたようだった。大きな背中は遠く離れて小さくなってゆく。
 スマホをそっと取り出し、カレンダーを見つめると、「……来週かぁ」と口からはため息が漏れていた。
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