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凱旋編
3.財務官のペンダント
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けたたましい音が街中に響き渡っている。その中を男を引き連れて歩いていた女は、薄い金の髪を後ろにはらって顎を上げた。
「相変わらず、中央はうるっさいわね~」
手に持った紙袋を肩にのせ、周囲に視線を巡らせると「仕方ないわね、アンタたち」と赤い紅を塗った口を開く。
「今日は買い物を中止するわ。帰っていいわよ」
これホテルに置いといてねと荷物を胸元に押し付けると、彼らは落とさないようにと抱えて駆け足で走り出す。
魔物が現れたという警報が出されているというのに、悲鳴を上げているだけで逃げようともしない民衆を横目で見た女は腰に手を当てて体の重心を傾ける。
「軍は何をしているの!?」
「早く来て!」
「どこに現れたの!! 近くなの!?」
店員が急いでシャッターを閉めるが、ロクに確認をしていないせいでシャッターの下にいた人は潰されるのが見えた。それに女は眉を顰めて口を大きく開ける。
「……ちょっと! 惨いことするわね……あ~あ、かわいそ」
もう一度シャッターが開き、ゴミのように怪我をした人が路上に捨てられた。白目を向いた目と、自分の目が合う。数秒は見たが、それだけでふいと目をそらし、馬鹿の叫び声から抜け出した。
狭い路地に入り足早に進む。流石に住む者が立てる物音と密やかな話し声になり、むしろ女の高いヒールが立てる音の方が大きくなった。
路地を抜けた時、地面からなにかが起き上るように大きく揺れる。波打つ地面から落とされないようにバランスを保った女は、やだと嗤う。
「こんな所にまでいたのね」
口元に開けた手を当てた女は、冷え冷えとした美しい顔で地面をねめつけた。だが、近づいてくる足音に気付いて「丁度いいわね」と呟く。
「デュー、テメエ手間掛けさせんじゃねえよ!」
捜させんなと怒鳴る男を、デューと呼ばれた女は手を振って出迎える。そして自分の足元を指差して「これ、どうにかしてちょうだい」と命じた。男は盛り上がった地面と女とを見比べて、ハァ? と肩を竦める。
「マーガン卿、横に退いて。言い合っている時間が無駄だから」
俺がやると言ってマディの後ろからついてきていた長い金髪の男――ギジアが手を前に突き出すと、魔法弾が発されて女の足元にいる魔物を射抜く。
デューはぐらりと揺れる地面を走って、手を振るって跳ぶ。体格の良い男に向かって飛び降りると、奴は慌てたものの受け止めてくれた。見た目は厳ついが、結局は人が良い男だ。それに、こんな美女を怪我させる男など存在しない。
「見惚れてないで走りなさいな。これは私たちのお披露目でもあるのよ!」
さあ輝かしい舞台へ連れていきなさいと片腕を空に向かって伸ばし、遠くへ視線を送った。私を迎える観客の悲鳴が今から聞こえるようだわと陶酔する。
「マーガン卿、大通りまで行ったら馬車があるから……」
「それまでこの爆乳女抱えてっけか!?」
前が見えねえんだよこの乳で! と怒鳴るマディに、デューは「縮めろっていうの!? こんな張りが合って美しくて大きい胸を!」と叫んで彼の頭を殴った。
「いてっ、殴んな!」と怒るマディを横目で見ていたギジアがため息を吐く。
「二人とも着替える時間が必要だから急いで」
「私に相応しい衣装なんでしょうね」と高飛車に言うデューと、「どこで着替えろってんだ」と怒るマディの声に、ギジアはそっと両耳を手で塞いだ。
「エディス様、ヒョウ様、こっちだ!」
腕を振るって誘導するレウの後を追って走る。
中央の駅に着いてすぐ、エディスたちは魔物に追われていた。駅構内に入り込んでいた魔物を討伐したのはいいが、外に出てもこの有様だったのだ。
「誰か、魔物寄せの香でもばら撒きやがったか……!?」
「全部が全部、操られた魔獣とは限らないッスよ。様子が違うのもいるんで」
チッと舌打ちしたエディスの目の前に飛び出てきた狼型の魔物の腹部をレウが蹴り飛ばす。キャンと鳴いた狼はよたよたとよろめきながらも起き上り、こちらに跳びかかってきた。それを飛踊が切り捨て、また走る。
「この分だとエクセリオさんの方も多いか」とレウが苛立ちを含んだ声を出したので、エディスはアイツらなら大丈夫だと返す。攪乱の為に別のルートで向かうと離れた二人だが、必ず合流地点に来る。そう言い切れる実力が彼らにはあった。
走るエディスたちの耳に、か細い悲鳴が届く。
「た、たすけて……っ」
逃げ遅れたと思わしき貴婦人が地面を這って、こちらに手を伸ばす姿が見えた。その後ろには薄茶色の毛皮を纏い、狼の耳を頭に生やした男ーー仮装ではなく魔物だーーが迫っている。先程から襲い掛かってくる狼型の魔物が人間を食らって進化した形状だ。
接近して倒すには距離が遠すぎて、足が間に合いそうにない。飛踊の護衛として来たトリエランディア大将ならば、あるいは。だが、エディスは腰のガンホルダーに手を伸ばした。
「エディス様? なんだ、それ」
足を止めたエディスに気が付いたレウに声を掛けられるが、エディスは手にした銃を構えーー無言で狙いを定める。
「く、ああッ!」
引き金を引く。マズルフラッシュが目に焼きつき、強い衝撃に体が跳んで家の鉄柵にぶち当たった。ゴッと頭まで強打したエディスは頭を押さえる。
「いってて……リスティー、アイツなんっつー威力のもん渡してきてんだよ!」
今はいない武器製造者への不満を口にしつつ、慌てて駆け寄ってきたレウの手を借りて起き上った。
エディスの銃の命中率は決して悪くはない。入隊試験でも好成績を収めてはいるし、シュウにも「筋は悪くない。筋はな」と言われるくらいだ。だが、体重の軽いエディスの体は拳銃を扱うのに適していない。反動を受け止めきれず、こうなる。
「レウ、銃の腕前は」
「中の下ってとこだ。悪いが民間人に当てる気しかしない」
なら仕方ないと柵にがっちりと背をつけたエディスは、もう一度狙いを定める。一発目は右足に的中したらしく、目標は地面に膝をついてエディスの方を睨んでいた。
歯を食いしばり、二発目を撃つ。間を置かずに三発目を撃とうとしたが、よだれを垂らして魔物ががむしゃらに走ってくる。ふーっと息を吐き、拳銃を握り締めたエディスは目を開け、構えようと腕を伸ばす。
だが、顔の横から腕が伸びてきた。それはエディスの手から拳銃を奪うと、魔物の核がある胸を正確に撃ち抜いた。
「人が留守にしてる間に無茶してんじゃねえよ」
すぐそっちに行くという声に、エディスは驚いて後ろを見る。目を大きく見開いたエディスに、その青年は「驚きすぎだ」と眉間に皺を寄せて笑う。指で額を弾くと、待ってろと指を差してから柵を回ろうとする青年に、エディスは地面に手を突いてもたつきながらも駆け出す。
「レウ、あの女の人のこと頼むっ」
指示をしてから全力で走って、走って、手を大きく広げて飛びつく。
「シュウッ、おかえり!」
抱き留めた深緑の髪の青年ーーシュウ・ブラッドはエディスの後頭部に手をやって抱き締める。それから体を離して、顔を見てきて「ただいま」と口元に笑みを浮かべた。
「いつ帰ってきたんだ」
「さっき着いたばかりだ」
久しぶりだなと言って頭を撫でてくるシュウに、エディスはその後ろや周りを見て顔を曇らせる。
「……シルベリアは? 一緒じゃないのか」
「もう忘れたのか。アイツは北部に移動になっただろ」
配属替えでもない限りは当分向こうだろと言われ、「そうか……」と視線を下げた。
「じゃ、じゃあ地を這う者は?」
そう問うエディスの左耳に爆発音が入ってくる。驚いて仰ぎ見た先には黒煙が上がっており、大きな砲弾かなにかが散るのが見えた。
「元気で帰ってきたみたいだな」
可愛らしい笑顔を浮かべながら破壊行動に勤しむ、幼女の姿をした年上の女性を想像したエディスは苦笑いになる。
「お前も元気だったみたいだな」
ぽんっと叩かれた背中に、不意に泣きそうになって俯く。
シュウのことを想ってだろう、帰ってこなかったシルベリア。不必要に、恐怖を抱かせる程に兵器化を進める地を這う者。
果たして、自分の行いは正しいのか。国を、民を導ける王になるといえるのだろうかーー人に愛されるこの男を巻き込んでいける風になりえると、最期まで自信を持てるか。
躊躇うエディスの視界に手が入り込んでくる。節々にタコができ、皮膚が硬く盛り上がった職人の手だ。
恐る恐る顔を上げると、兄の顔があった。血の繋がりなんてないはずなのに、それでも自分の兄貴だと言い切れるような、見守る強い視線。
「なんだ、違ったか」
苦笑いするシュウに首を振る。
違わなくない、嬉しい。自分と彼の道は、ここを去る時から今も違わずにいたのだ。
「俺に力を貸してほしい」
握った手が発光する。目を閉じて、静かに言葉を待つ。
【第三の賢者ーーシュウ・ブラッド】
届いた声に、シュウがへえと感心したように笑って「こんな感じなのか」と顔を向けてくる。その首にはシルバーのチェーンが掛かっていた。同素材で二羽のモチーフが付いているペンダントで、シュウは飾りを指で撫でる。
「話には聞いてたけど、面白いな」
誰が話しかけてきてんだろうなと疑問を口にされ、エディスは首を捻った。今の今まで、ほかの者にも聞こえていると思っていなかったのだ。
「わ、分からねえけど……昔の神官、とか? これを決めた王様とか」
「神の可能性は? お前を見張ってんだろ」
ありえなくはない。エディスが唸ると、シュウはまあまた聞いてみるよと言う。一体誰に訊くのかと声を掛けようとした時ーー体が跳ねた。
「相変わらず、中央はうるっさいわね~」
手に持った紙袋を肩にのせ、周囲に視線を巡らせると「仕方ないわね、アンタたち」と赤い紅を塗った口を開く。
「今日は買い物を中止するわ。帰っていいわよ」
これホテルに置いといてねと荷物を胸元に押し付けると、彼らは落とさないようにと抱えて駆け足で走り出す。
魔物が現れたという警報が出されているというのに、悲鳴を上げているだけで逃げようともしない民衆を横目で見た女は腰に手を当てて体の重心を傾ける。
「軍は何をしているの!?」
「早く来て!」
「どこに現れたの!! 近くなの!?」
店員が急いでシャッターを閉めるが、ロクに確認をしていないせいでシャッターの下にいた人は潰されるのが見えた。それに女は眉を顰めて口を大きく開ける。
「……ちょっと! 惨いことするわね……あ~あ、かわいそ」
もう一度シャッターが開き、ゴミのように怪我をした人が路上に捨てられた。白目を向いた目と、自分の目が合う。数秒は見たが、それだけでふいと目をそらし、馬鹿の叫び声から抜け出した。
狭い路地に入り足早に進む。流石に住む者が立てる物音と密やかな話し声になり、むしろ女の高いヒールが立てる音の方が大きくなった。
路地を抜けた時、地面からなにかが起き上るように大きく揺れる。波打つ地面から落とされないようにバランスを保った女は、やだと嗤う。
「こんな所にまでいたのね」
口元に開けた手を当てた女は、冷え冷えとした美しい顔で地面をねめつけた。だが、近づいてくる足音に気付いて「丁度いいわね」と呟く。
「デュー、テメエ手間掛けさせんじゃねえよ!」
捜させんなと怒鳴る男を、デューと呼ばれた女は手を振って出迎える。そして自分の足元を指差して「これ、どうにかしてちょうだい」と命じた。男は盛り上がった地面と女とを見比べて、ハァ? と肩を竦める。
「マーガン卿、横に退いて。言い合っている時間が無駄だから」
俺がやると言ってマディの後ろからついてきていた長い金髪の男――ギジアが手を前に突き出すと、魔法弾が発されて女の足元にいる魔物を射抜く。
デューはぐらりと揺れる地面を走って、手を振るって跳ぶ。体格の良い男に向かって飛び降りると、奴は慌てたものの受け止めてくれた。見た目は厳ついが、結局は人が良い男だ。それに、こんな美女を怪我させる男など存在しない。
「見惚れてないで走りなさいな。これは私たちのお披露目でもあるのよ!」
さあ輝かしい舞台へ連れていきなさいと片腕を空に向かって伸ばし、遠くへ視線を送った。私を迎える観客の悲鳴が今から聞こえるようだわと陶酔する。
「マーガン卿、大通りまで行ったら馬車があるから……」
「それまでこの爆乳女抱えてっけか!?」
前が見えねえんだよこの乳で! と怒鳴るマディに、デューは「縮めろっていうの!? こんな張りが合って美しくて大きい胸を!」と叫んで彼の頭を殴った。
「いてっ、殴んな!」と怒るマディを横目で見ていたギジアがため息を吐く。
「二人とも着替える時間が必要だから急いで」
「私に相応しい衣装なんでしょうね」と高飛車に言うデューと、「どこで着替えろってんだ」と怒るマディの声に、ギジアはそっと両耳を手で塞いだ。
「エディス様、ヒョウ様、こっちだ!」
腕を振るって誘導するレウの後を追って走る。
中央の駅に着いてすぐ、エディスたちは魔物に追われていた。駅構内に入り込んでいた魔物を討伐したのはいいが、外に出てもこの有様だったのだ。
「誰か、魔物寄せの香でもばら撒きやがったか……!?」
「全部が全部、操られた魔獣とは限らないッスよ。様子が違うのもいるんで」
チッと舌打ちしたエディスの目の前に飛び出てきた狼型の魔物の腹部をレウが蹴り飛ばす。キャンと鳴いた狼はよたよたとよろめきながらも起き上り、こちらに跳びかかってきた。それを飛踊が切り捨て、また走る。
「この分だとエクセリオさんの方も多いか」とレウが苛立ちを含んだ声を出したので、エディスはアイツらなら大丈夫だと返す。攪乱の為に別のルートで向かうと離れた二人だが、必ず合流地点に来る。そう言い切れる実力が彼らにはあった。
走るエディスたちの耳に、か細い悲鳴が届く。
「た、たすけて……っ」
逃げ遅れたと思わしき貴婦人が地面を這って、こちらに手を伸ばす姿が見えた。その後ろには薄茶色の毛皮を纏い、狼の耳を頭に生やした男ーー仮装ではなく魔物だーーが迫っている。先程から襲い掛かってくる狼型の魔物が人間を食らって進化した形状だ。
接近して倒すには距離が遠すぎて、足が間に合いそうにない。飛踊の護衛として来たトリエランディア大将ならば、あるいは。だが、エディスは腰のガンホルダーに手を伸ばした。
「エディス様? なんだ、それ」
足を止めたエディスに気が付いたレウに声を掛けられるが、エディスは手にした銃を構えーー無言で狙いを定める。
「く、ああッ!」
引き金を引く。マズルフラッシュが目に焼きつき、強い衝撃に体が跳んで家の鉄柵にぶち当たった。ゴッと頭まで強打したエディスは頭を押さえる。
「いってて……リスティー、アイツなんっつー威力のもん渡してきてんだよ!」
今はいない武器製造者への不満を口にしつつ、慌てて駆け寄ってきたレウの手を借りて起き上った。
エディスの銃の命中率は決して悪くはない。入隊試験でも好成績を収めてはいるし、シュウにも「筋は悪くない。筋はな」と言われるくらいだ。だが、体重の軽いエディスの体は拳銃を扱うのに適していない。反動を受け止めきれず、こうなる。
「レウ、銃の腕前は」
「中の下ってとこだ。悪いが民間人に当てる気しかしない」
なら仕方ないと柵にがっちりと背をつけたエディスは、もう一度狙いを定める。一発目は右足に的中したらしく、目標は地面に膝をついてエディスの方を睨んでいた。
歯を食いしばり、二発目を撃つ。間を置かずに三発目を撃とうとしたが、よだれを垂らして魔物ががむしゃらに走ってくる。ふーっと息を吐き、拳銃を握り締めたエディスは目を開け、構えようと腕を伸ばす。
だが、顔の横から腕が伸びてきた。それはエディスの手から拳銃を奪うと、魔物の核がある胸を正確に撃ち抜いた。
「人が留守にしてる間に無茶してんじゃねえよ」
すぐそっちに行くという声に、エディスは驚いて後ろを見る。目を大きく見開いたエディスに、その青年は「驚きすぎだ」と眉間に皺を寄せて笑う。指で額を弾くと、待ってろと指を差してから柵を回ろうとする青年に、エディスは地面に手を突いてもたつきながらも駆け出す。
「レウ、あの女の人のこと頼むっ」
指示をしてから全力で走って、走って、手を大きく広げて飛びつく。
「シュウッ、おかえり!」
抱き留めた深緑の髪の青年ーーシュウ・ブラッドはエディスの後頭部に手をやって抱き締める。それから体を離して、顔を見てきて「ただいま」と口元に笑みを浮かべた。
「いつ帰ってきたんだ」
「さっき着いたばかりだ」
久しぶりだなと言って頭を撫でてくるシュウに、エディスはその後ろや周りを見て顔を曇らせる。
「……シルベリアは? 一緒じゃないのか」
「もう忘れたのか。アイツは北部に移動になっただろ」
配属替えでもない限りは当分向こうだろと言われ、「そうか……」と視線を下げた。
「じゃ、じゃあ地を這う者は?」
そう問うエディスの左耳に爆発音が入ってくる。驚いて仰ぎ見た先には黒煙が上がっており、大きな砲弾かなにかが散るのが見えた。
「元気で帰ってきたみたいだな」
可愛らしい笑顔を浮かべながら破壊行動に勤しむ、幼女の姿をした年上の女性を想像したエディスは苦笑いになる。
「お前も元気だったみたいだな」
ぽんっと叩かれた背中に、不意に泣きそうになって俯く。
シュウのことを想ってだろう、帰ってこなかったシルベリア。不必要に、恐怖を抱かせる程に兵器化を進める地を這う者。
果たして、自分の行いは正しいのか。国を、民を導ける王になるといえるのだろうかーー人に愛されるこの男を巻き込んでいける風になりえると、最期まで自信を持てるか。
躊躇うエディスの視界に手が入り込んでくる。節々にタコができ、皮膚が硬く盛り上がった職人の手だ。
恐る恐る顔を上げると、兄の顔があった。血の繋がりなんてないはずなのに、それでも自分の兄貴だと言い切れるような、見守る強い視線。
「なんだ、違ったか」
苦笑いするシュウに首を振る。
違わなくない、嬉しい。自分と彼の道は、ここを去る時から今も違わずにいたのだ。
「俺に力を貸してほしい」
握った手が発光する。目を閉じて、静かに言葉を待つ。
【第三の賢者ーーシュウ・ブラッド】
届いた声に、シュウがへえと感心したように笑って「こんな感じなのか」と顔を向けてくる。その首にはシルバーのチェーンが掛かっていた。同素材で二羽のモチーフが付いているペンダントで、シュウは飾りを指で撫でる。
「話には聞いてたけど、面白いな」
誰が話しかけてきてんだろうなと疑問を口にされ、エディスは首を捻った。今の今まで、ほかの者にも聞こえていると思っていなかったのだ。
「わ、分からねえけど……昔の神官、とか? これを決めた王様とか」
「神の可能性は? お前を見張ってんだろ」
ありえなくはない。エディスが唸ると、シュウはまあまた聞いてみるよと言う。一体誰に訊くのかと声を掛けようとした時ーー体が跳ねた。
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