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南部編ー後半ー
6.運命確変①絶対領主宣言
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起き上がると、辺り一面が瓦礫と化していた。こんなことをとエディスは歯噛みし、地面を殴りつける。これは魔物ではなく人の仕業だ。しかも、自分が起因になっている。
軋む体を押して走る。
ジェネアスの名を呼びながら、瓦礫と化したフレイアム家の玄関に近づいていくエディスに、人々が声を掛けてきた。
「おい、どうしたんだ!」
リスティーの家が攻撃されたと伝えると、反軍のメンバーは「軍の奴ら、ついに……!」と拳を握り、怒りに震える。だが、エディスは違うと叫んで、「俺が一緒にいた! 攻撃したのは軍の奴らじゃない。全く別の組織なんだ」と訴えかけた。
「昔、アンタたちの誰かが人に恨まれるようなことをしたはずだ!」
そう叫ぶと、何人かが顔を見合わせる。
「……フィンティア家の悪魔が生きてたっていうのか」
「あんな化け物が成長してたら」
なんてことしてくれたんだ、殺したって言ったの誰だよと怒号が飛び交う中を、エディスは突っ切ろうとする。その背中にどこに行くんだと呼びかける声があった。
「助けに行くんだよ、リスティーの親父さんを!」
周りを見ろと、喧嘩をしている場合かと叱咤するエディスに、なんでだと問いかける。真正面から受け、口を開く。
「俺がっ、リスティーの友だちだからに決まってんだろ!」
言い切ったエディスにたじろいだ反軍のメンバーに背を向ける。一刻を争う事態なのだ。リスティーから教わった身体強化の魔法を使う。
まだ自分の近くにいたドールの方が探しやすいだろうと、玄関だったと思わしき場所から辿っていく。予測した地点の瓦礫を退かしていき、這いつくばったエディスは力の限り叫んだ。
「……っちだ、少年」
小さいながらも反応があり、声の方へと近づいていって掘り返す。それを繰り返していき、ようやく見つけた。瓦礫の下に潜り込んだエディスは限界まで伸ばした手でドールの節ばった手を掴む。皮がぶ厚く、剣だこのある手だ。
安堵し――そして、決意した。
「俺と同盟を結ぼう、親父さん!」
固く結んだ手を引いて、声高に叫ぶとくぐもった声が返ってくる。
「あの子を……リスティーを頼む、俺は」
「ふざけんな、あんな暴れ馬を俺がどうこうできるかよ!!」
そう言っても人生を諦め始めたオヤジは「どうかあの子を守ってくれ」などと悦に浸っていて話にならない。
それに俺が守ってほしいくらいなんだよと怒鳴り返しそうになり、エディスはそうだと胸中で呟いた。
「――リスティー……おい、リスティー! 俺の声が聞こえてんだろうが!!」
聞こえるなら返事くらいしろと怒鳴ると、ボッと音を立てて屋根が吹っ飛ぶ。瓦礫と化した家屋を突き破って出てきたものがなにか確かめる為、エディスは空を仰ぐ。
「アンタはあたしをなんだと思ってるのよ!?」
母とジェネアスを腕と背に抱えて飛び出してきたのは、まさしくリスティーだ。呼んだとはいえ、まさか本当に出てくるとは思ってもいなかったエディスは、大口を開けて空を見上げた。
そして、はは……と乾いた笑い声を出す。
「ほら、アンタくらいだぜ。埋まってるの」
娘に掘り返してもらうかと訊ねたエディスの、未だにしかと握ってくる手を見たドールは諦めたように目を閉じる。小さく「分かったよ」という声が聞こえてきて、エディスは「最初っからそう言やいいんだよ」と笑った。
「反軍の時代は終わりだ。アンタらごと活動範囲を買い取ってやる!」
だから来いよと叫ぶと、ドールは「君、共犯じゃないだろうなあ!」と叫び返してきた。
「ちょっと、父さん大丈夫なの!?」
「こんだけ叫ぶ元気ありゃ十分だろ」
安全な場所に母とジェネアスを置いてきたらしいリスティーが駆け寄ってくる。ここだよと指を差すと、彼女は瓦礫の下を覗き込んでから「ソファーが間に挟まってるみたい」と笑う。這いずれば出てこれることを確認していたエディスはそうだろと頷いた。
「あのストーカー、アンタを狙ってるんでしょ」
あれドゥルースだよと言うと、リスティーはえ!? と叫んでエディスを振り返り「アンタの元主人の?」と目を丸める。
「……じゃあ反軍にも恨みがあるんだ。ねえ、協力した方がいいんじゃないのー? 父さん」
愛娘にもそう勧められたドールは分かった分かったと言って、早く出してくれと脱力する。リスティーがソファーを支え、エディスが手を貸してドールを瓦礫の下から助け出す。
「改めてよろしくな、ドール・フレイアム」
「ああ。……よろしく頼むよ。領主様」
まずはアンタに新しい家だなと言うエディスに、リスティーが私はいらないと指を差す。理由を訊ねると、来月から正式に軍属になるのだという。
「軍兵器開発部を狙ってるから、よろしくね」
それに治安維持部の方が合っていそうだけどなと思いつつも、そうか頑張れよと肩を叩く。
「領主様。最初の仕事が待っているんだが、いいか?」
就任の挨拶を皆が待ってるんだがと、寄ってきた反軍のメンバーや野次馬を指差すドールに、エディスは分かったと頷いた。
「ますます忙しくなるぞ。大丈夫か」
「んじゃ、帰ったら領地経営のこともミシアに教えてもらわねえとな」
「……言っておくがな、アイツにそんな図々しい真似ができるのは君くらいだぞ」
軋む体を押して走る。
ジェネアスの名を呼びながら、瓦礫と化したフレイアム家の玄関に近づいていくエディスに、人々が声を掛けてきた。
「おい、どうしたんだ!」
リスティーの家が攻撃されたと伝えると、反軍のメンバーは「軍の奴ら、ついに……!」と拳を握り、怒りに震える。だが、エディスは違うと叫んで、「俺が一緒にいた! 攻撃したのは軍の奴らじゃない。全く別の組織なんだ」と訴えかけた。
「昔、アンタたちの誰かが人に恨まれるようなことをしたはずだ!」
そう叫ぶと、何人かが顔を見合わせる。
「……フィンティア家の悪魔が生きてたっていうのか」
「あんな化け物が成長してたら」
なんてことしてくれたんだ、殺したって言ったの誰だよと怒号が飛び交う中を、エディスは突っ切ろうとする。その背中にどこに行くんだと呼びかける声があった。
「助けに行くんだよ、リスティーの親父さんを!」
周りを見ろと、喧嘩をしている場合かと叱咤するエディスに、なんでだと問いかける。真正面から受け、口を開く。
「俺がっ、リスティーの友だちだからに決まってんだろ!」
言い切ったエディスにたじろいだ反軍のメンバーに背を向ける。一刻を争う事態なのだ。リスティーから教わった身体強化の魔法を使う。
まだ自分の近くにいたドールの方が探しやすいだろうと、玄関だったと思わしき場所から辿っていく。予測した地点の瓦礫を退かしていき、這いつくばったエディスは力の限り叫んだ。
「……っちだ、少年」
小さいながらも反応があり、声の方へと近づいていって掘り返す。それを繰り返していき、ようやく見つけた。瓦礫の下に潜り込んだエディスは限界まで伸ばした手でドールの節ばった手を掴む。皮がぶ厚く、剣だこのある手だ。
安堵し――そして、決意した。
「俺と同盟を結ぼう、親父さん!」
固く結んだ手を引いて、声高に叫ぶとくぐもった声が返ってくる。
「あの子を……リスティーを頼む、俺は」
「ふざけんな、あんな暴れ馬を俺がどうこうできるかよ!!」
そう言っても人生を諦め始めたオヤジは「どうかあの子を守ってくれ」などと悦に浸っていて話にならない。
それに俺が守ってほしいくらいなんだよと怒鳴り返しそうになり、エディスはそうだと胸中で呟いた。
「――リスティー……おい、リスティー! 俺の声が聞こえてんだろうが!!」
聞こえるなら返事くらいしろと怒鳴ると、ボッと音を立てて屋根が吹っ飛ぶ。瓦礫と化した家屋を突き破って出てきたものがなにか確かめる為、エディスは空を仰ぐ。
「アンタはあたしをなんだと思ってるのよ!?」
母とジェネアスを腕と背に抱えて飛び出してきたのは、まさしくリスティーだ。呼んだとはいえ、まさか本当に出てくるとは思ってもいなかったエディスは、大口を開けて空を見上げた。
そして、はは……と乾いた笑い声を出す。
「ほら、アンタくらいだぜ。埋まってるの」
娘に掘り返してもらうかと訊ねたエディスの、未だにしかと握ってくる手を見たドールは諦めたように目を閉じる。小さく「分かったよ」という声が聞こえてきて、エディスは「最初っからそう言やいいんだよ」と笑った。
「反軍の時代は終わりだ。アンタらごと活動範囲を買い取ってやる!」
だから来いよと叫ぶと、ドールは「君、共犯じゃないだろうなあ!」と叫び返してきた。
「ちょっと、父さん大丈夫なの!?」
「こんだけ叫ぶ元気ありゃ十分だろ」
安全な場所に母とジェネアスを置いてきたらしいリスティーが駆け寄ってくる。ここだよと指を差すと、彼女は瓦礫の下を覗き込んでから「ソファーが間に挟まってるみたい」と笑う。這いずれば出てこれることを確認していたエディスはそうだろと頷いた。
「あのストーカー、アンタを狙ってるんでしょ」
あれドゥルースだよと言うと、リスティーはえ!? と叫んでエディスを振り返り「アンタの元主人の?」と目を丸める。
「……じゃあ反軍にも恨みがあるんだ。ねえ、協力した方がいいんじゃないのー? 父さん」
愛娘にもそう勧められたドールは分かった分かったと言って、早く出してくれと脱力する。リスティーがソファーを支え、エディスが手を貸してドールを瓦礫の下から助け出す。
「改めてよろしくな、ドール・フレイアム」
「ああ。……よろしく頼むよ。領主様」
まずはアンタに新しい家だなと言うエディスに、リスティーが私はいらないと指を差す。理由を訊ねると、来月から正式に軍属になるのだという。
「軍兵器開発部を狙ってるから、よろしくね」
それに治安維持部の方が合っていそうだけどなと思いつつも、そうか頑張れよと肩を叩く。
「領主様。最初の仕事が待っているんだが、いいか?」
就任の挨拶を皆が待ってるんだがと、寄ってきた反軍のメンバーや野次馬を指差すドールに、エディスは分かったと頷いた。
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