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学園要塞ー中編ー
7.特注の魔法保管庫
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その理屈も分かるが、自棄になって魔法を発動されたらどうするんだコイツ。領主は魔法が使えるんだぞと、マディは余程言ってやろうとした。
だが、今の異常な様子では進言できそうにもない。とりあえず先程と同じ行動をすればいいかと、足を開かせる。
「嫌だ、止めてくれ……そうだ、犯してもいいから。だから、ネージュさんの魔法だけは」
「おいおい、聞いたかよクレマ! コイツが処女を捧げたかったのはアンビトン・ネージュなんじゃねェか!?」
「ふっ、魔人に性欲などあるわけがないだろうに。馬鹿なのか」
唇を噛み締めて自ら股を開いた男に欲情しながらも、そうまでして守りたいのかと驚く気持ちで揺さぶられた。こんなことをしてもいいのかという気持ちで勃ち上がったものが萎えそうになる。
「お前がボステルクの領主だというのは本当のようだな。美しい魂だ」
そうクレマが評するのも納得だった。優れた人格というのは、この男を表すに相応しい言葉だ。
「マディ、一人処分して。……そうだね、一番小さいのを」
ハイデの言葉に、マディはコイツは本気であのガキどもを使うつもりだったのかと息を呑んだ。あんなものはただの見せしめで、実際に行えば人道的問題で糾弾されるのが見えている。
「やめてっ、やめてくれ! お願いだ、あの子たちは助けてやってほしい」
「それがお願いする態度なのかな」
クレマに縄を解くように言い、ハイデは床を指差す。
「おいおい……王子。アンタは殴られちゃいねえだろうが」
「時間を無駄にされた」
跪いてと柔らかな声を出したハイデに、領主は震えながらも子どもの方に視線を向けてから唾を飲みこんだ。
床に手を突いて芋虫のように背を丸めた領主が謝罪を口にすると、その首を上から押さえこんで「マディ、二匹だ」と笑顔を向けてくる。
「お願いいたします、殿下。私が悪かった、どうかご慈悲を……ッ」
悲痛な声で許しを請う男に、どうしてこうなる前に教えなかったのかとハイデが実に楽し気に笑う。その顔に、今の今まで弄んできた興奮も覚めてくる。
あまりに哀れな様子に同情心が芽生えてきたマディが狼狽えると、クレマが肩を組んで引っ張ってきた。
「マディ、左に吊るしている袋を破らせろ。豚の血をたっぷり詰め込んできた」
それだけで十分だと耳打ちしてきたクレマの顔を見ると、背を叩かれる。
「お前は私とは違う」と言うクレマから目を離して、魔物に口笛で指示をするとバシャンと激しい水音を立てて袋から血が溢れ出てガラスを汚す。
それだけで恐慌状態に陥った男に対し、ハイデは「お前のせいだよ」と囁いて手を離した。首を離された男は力なく横たわり、声を上げて泣く。
腕で顔を隠しているこの男がボステルクで子どもを育み、愛してきたことなど明白だ。捕まるまで、徹底してこちらの動きを読んで阻止してきたのだから。
唇を噛み締めて嗚咽を堪える男の頬を、ハイデの手が包み込む。
「ボステルクの各所で火事を起こした。お前以外は全て処分する。学園始まって以来の不祥事だな」
無理に開けさせた領主の目に、まつ毛が触れ合う程の距離までハイデが近づく。
「アンビトン・ネージュに優しくあやしてもらうといいよ」
そう言うと、領主の喉がひくりと震えた。男の白目が黒く濁っていき、虹彩が白に染まる。かと思えば、ハイデの目に転写したように目が入れ替わる。
「っあ、あ゙ぃ゙ぅ、ゔぅ~~~~っ」
男の目からは血が流れ、ハイデは瞬きをしてマディを見た。口を弓のように円を描いて微笑み、喉から声を絞り出す。
【マディ、両手を後ろ手に組め】
頭が認識する前にマディの両手が後ろに引っ張られ、捩じられる。苦痛に顔を歪め、男の腹に額を押し付けて苦悶するマディを見たハイデは、笑い声を零す。
「面白い……凄い、どういう理論の魔法なのか僕にも分かる」
魔力もいらないんだと顔の前に手を持ってきて嗤うハイデが、「服従の魔法を手に入れた」と言うとマディは声を荒げた。
「テメエのババアが使う、惑わせの魔法となにが違うんだよ!」
「止めておけ、マディ! 服従の魔法は肉体操作だ」
惑わせの魔法と違って、使い方次第では人を即死させることも容易いと説明されたマディは舌を打つ。
【他の目を見せろ】
「っ、ぃぎい゙……ッ」
「白で斜めに黒い線が入っているか。見ただけではなんの魔法か分からんな」
だが服従が入っていたということは、恐らくアンビトン・ネージュの五大禁書の内どれかだろうなとクレマが言うと、ハイデは頷いてまた盗み取った。
「……さ迷える神? って、なに」
「広範囲攻撃魔法です。リスクが高いから別の者に受渡すのがいいでしょうな」
新しいおもちゃを与えられた子どものようにはしゃいだハイデは、にこやかに指を差す。
【マディ、クレマ。これを母様の元に運べ。魔法保管庫にする】
相当体力か魔力を消費するのか、紙のように顔を白くさせて全身を汗で濡らした男を、ハイデはもはや物としか見ていない。
「マジかよコイツ……」
「気が狂っておいでか」
二人はそう言い合いながらも、マディが膝から下を、クレマが脇下から手を入れて担ぎ上げる。
「離せ、離さないか!」
領主も残っている気力で逃げようとするが、人質の存在、残る禁書の存在を滔々とハイデに囁かれると四肢から力を抜いた。
生気が抜け落ちたような目から涙が流れ落ちていく。
この男が、ようやく諦めたのだ。
「長かったな」と誰からともなくため息が聞こえてきた。
だが、今の異常な様子では進言できそうにもない。とりあえず先程と同じ行動をすればいいかと、足を開かせる。
「嫌だ、止めてくれ……そうだ、犯してもいいから。だから、ネージュさんの魔法だけは」
「おいおい、聞いたかよクレマ! コイツが処女を捧げたかったのはアンビトン・ネージュなんじゃねェか!?」
「ふっ、魔人に性欲などあるわけがないだろうに。馬鹿なのか」
唇を噛み締めて自ら股を開いた男に欲情しながらも、そうまでして守りたいのかと驚く気持ちで揺さぶられた。こんなことをしてもいいのかという気持ちで勃ち上がったものが萎えそうになる。
「お前がボステルクの領主だというのは本当のようだな。美しい魂だ」
そうクレマが評するのも納得だった。優れた人格というのは、この男を表すに相応しい言葉だ。
「マディ、一人処分して。……そうだね、一番小さいのを」
ハイデの言葉に、マディはコイツは本気であのガキどもを使うつもりだったのかと息を呑んだ。あんなものはただの見せしめで、実際に行えば人道的問題で糾弾されるのが見えている。
「やめてっ、やめてくれ! お願いだ、あの子たちは助けてやってほしい」
「それがお願いする態度なのかな」
クレマに縄を解くように言い、ハイデは床を指差す。
「おいおい……王子。アンタは殴られちゃいねえだろうが」
「時間を無駄にされた」
跪いてと柔らかな声を出したハイデに、領主は震えながらも子どもの方に視線を向けてから唾を飲みこんだ。
床に手を突いて芋虫のように背を丸めた領主が謝罪を口にすると、その首を上から押さえこんで「マディ、二匹だ」と笑顔を向けてくる。
「お願いいたします、殿下。私が悪かった、どうかご慈悲を……ッ」
悲痛な声で許しを請う男に、どうしてこうなる前に教えなかったのかとハイデが実に楽し気に笑う。その顔に、今の今まで弄んできた興奮も覚めてくる。
あまりに哀れな様子に同情心が芽生えてきたマディが狼狽えると、クレマが肩を組んで引っ張ってきた。
「マディ、左に吊るしている袋を破らせろ。豚の血をたっぷり詰め込んできた」
それだけで十分だと耳打ちしてきたクレマの顔を見ると、背を叩かれる。
「お前は私とは違う」と言うクレマから目を離して、魔物に口笛で指示をするとバシャンと激しい水音を立てて袋から血が溢れ出てガラスを汚す。
それだけで恐慌状態に陥った男に対し、ハイデは「お前のせいだよ」と囁いて手を離した。首を離された男は力なく横たわり、声を上げて泣く。
腕で顔を隠しているこの男がボステルクで子どもを育み、愛してきたことなど明白だ。捕まるまで、徹底してこちらの動きを読んで阻止してきたのだから。
唇を噛み締めて嗚咽を堪える男の頬を、ハイデの手が包み込む。
「ボステルクの各所で火事を起こした。お前以外は全て処分する。学園始まって以来の不祥事だな」
無理に開けさせた領主の目に、まつ毛が触れ合う程の距離までハイデが近づく。
「アンビトン・ネージュに優しくあやしてもらうといいよ」
そう言うと、領主の喉がひくりと震えた。男の白目が黒く濁っていき、虹彩が白に染まる。かと思えば、ハイデの目に転写したように目が入れ替わる。
「っあ、あ゙ぃ゙ぅ、ゔぅ~~~~っ」
男の目からは血が流れ、ハイデは瞬きをしてマディを見た。口を弓のように円を描いて微笑み、喉から声を絞り出す。
【マディ、両手を後ろ手に組め】
頭が認識する前にマディの両手が後ろに引っ張られ、捩じられる。苦痛に顔を歪め、男の腹に額を押し付けて苦悶するマディを見たハイデは、笑い声を零す。
「面白い……凄い、どういう理論の魔法なのか僕にも分かる」
魔力もいらないんだと顔の前に手を持ってきて嗤うハイデが、「服従の魔法を手に入れた」と言うとマディは声を荒げた。
「テメエのババアが使う、惑わせの魔法となにが違うんだよ!」
「止めておけ、マディ! 服従の魔法は肉体操作だ」
惑わせの魔法と違って、使い方次第では人を即死させることも容易いと説明されたマディは舌を打つ。
【他の目を見せろ】
「っ、ぃぎい゙……ッ」
「白で斜めに黒い線が入っているか。見ただけではなんの魔法か分からんな」
だが服従が入っていたということは、恐らくアンビトン・ネージュの五大禁書の内どれかだろうなとクレマが言うと、ハイデは頷いてまた盗み取った。
「……さ迷える神? って、なに」
「広範囲攻撃魔法です。リスクが高いから別の者に受渡すのがいいでしょうな」
新しいおもちゃを与えられた子どものようにはしゃいだハイデは、にこやかに指を差す。
【マディ、クレマ。これを母様の元に運べ。魔法保管庫にする】
相当体力か魔力を消費するのか、紙のように顔を白くさせて全身を汗で濡らした男を、ハイデはもはや物としか見ていない。
「マジかよコイツ……」
「気が狂っておいでか」
二人はそう言い合いながらも、マディが膝から下を、クレマが脇下から手を入れて担ぎ上げる。
「離せ、離さないか!」
領主も残っている気力で逃げようとするが、人質の存在、残る禁書の存在を滔々とハイデに囁かれると四肢から力を抜いた。
生気が抜け落ちたような目から涙が流れ落ちていく。
この男が、ようやく諦めたのだ。
「長かったな」と誰からともなくため息が聞こえてきた。
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