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聖女編
5.明日にはあなたの元へ行きます
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魔法弾で狼煙を上げるという決まりに従って、四体同時攻撃に挑む。
だが、やはりこの数だ。位置の近い所や北南ではタイミングが合うも、全員で合わせるのは難易度が格段に上がった。
南のデュークとルシリアの間にオウルが移動して両方を一気に食い止め、ドラゴンに乗っていて一番動きが見えやすいフェリオネルに合わせて攻撃することにする。
「や……っ、たぁ!」
繰り返すこと、五度目。
一度でかなりの消耗させられる巨体に、全員が汗みずくで今にも座り込みそうだった。
だというのに、半壊した魔物が塵となって風に吹かれていく方向が同じだと気付いたフェリオネルが異常を知らせる。
中心部、レイアーラがいる方に集まっていくのだ。塵は集まり、今や巨大な塔を形成しそうな程だった。
「なに、あの大きさ……っ」
全力で走っていくリスティーたちであったが、例え魔法を使おうとも、ドラゴンに乗っていようとも追いつきようのない再生速度だった。
「お義姉様は!? 退避させてますよね……っ!?」
問うフェリオネルの耳に、お逃げ下さいという恐慌に包まれた声が入ってきて「うそおっ?」と叫んだリスティーが立ち止まり、構えるのが眼下に見える。
「皆様は逃げてください、あれは私が討ちます!」
「なりません、姫様!」
「私はもう姫ではありません。それに、あの子も決意したのです。ならば――私も戦いますわ!」
義理の姉と慕う女性の凛とした声が聞こえてきた瞬間、一角獣に騎乗した彼女が飛翔してきた。
高い位置で結わえた水色の髪が風に舞う。
「長きに渡って民を苦しめてきた魔物よ、今がお前の終わりの時です!」
微振動する魔物に防御壁で圧をかけているレイアーラが、頭頂部に迫る。
最高強度に固めた防御壁が金色に光った。宙を蹴った一角獣が真っ逆さまに急降下する。
「レイヴェン様、見守っていてくださいな……!」
手網を両手で握り締め、魔力で作った糸で腰を固定させて足で自らの体重を支えたレイアーラは、真一文字に魔物に突っ込んでいった。
「お義姉様……ッ!」
対衝突した魔物と一角獣。フェリオネルは口から悲痛な声が出て、ドラゴンを飛ばす。
何度も呼びかけている彼の目の前で、光の粒子と化した魔物が爆散した。
中から一角獣が飛び出してきて、無傷のレイアーラが凛々しい表情のまま一角獣を空中でくるりと一回転させる。
「お義姉様、お怪我は!?」
隣に並び立つと、彼女はあらと驚いたように目を丸くさせる。
「ありませんわ。皆さまは無事でして?」
「えっ……か、確認していません。ですが、一番危なかったのはお義姉様ですよ!?」
あんなに危険なことをしてと叱責しようとすると、レイアーラは「まあ怖い顔」と眉を下げた。
「私は防御の能力者なのよ。心配しすぎではなくて?」
「あなたは私の家族です! 私の姉になりたいのであれば、お体を大事にしてください」
なにかあれば兄さんが悲しみますと涙を零したフェリオネルに、さしものレイアーラも狼狽える。
「ごめんなさい、フェル。あなたに心配を掛けてしまったわ」
謝罪を口にした彼女は、焦ったのだと訴えた。
「私が健在であると知れば……レイヴェン様も安心するかと思って」
「それはそうでしょうが、もう。お義姉様は困った人なんですから」
頬を膨らませかねないフェリオネルはドラゴンをゆっくり降下させていく。
地面に着地したドラゴンの頭を「よく頑張りましたね」と撫でてから降り、困惑した様子で辺りを見渡した。
「こんなに人がいたでしょうか」
不安げに呟いたフェリオネルは名前を呼ばれて振り返る。
走って戻ってきたリスティーが、「レイアーラ様ですよね!?」と叫んだ。
「新聞社にタレこみ入れたの、レイアーラ様で合ってます!?」
「そうです、私が呼びましたの! 明日の一面に載りますわよ」
綺麗に写真を撮ってもらえたでしょうかとお姫様然とした微笑みを浮かべる彼女に、フェリオネルはえっ!? と驚きの声を上げる。
怪しいと感じたのは、間違いなくそのせいだ。
レイアーラが呼んだのは一社だけではない。一体何人の記者がいるのかと、フェリオネルの頭はくらりと揺れた。
「どうやって兄さんの所にまで届けるのかと思ったら……」
中央と南部。両方の新聞社が勢ぞろいして、今回のヒロインともいえる活躍をしたレイアーラにインタビューを取るために集まってきていたのが違和感の正体だ。
「これで無事、中央に帰れますわよね!」
新聞社の目の前で私になにかできるとでも思いまして? と言いたげな目を革命軍に向けるレイアーラに、リスティーは呆然として口をぱかりと開ける。
脱力したフェリオネルは、私の写真を載せるのは止めてください……と蚊の鳴くような声で呟いて両手で顔を覆う。
革命軍は新聞社に追いやられて、どうしたらいいのかと狼狽えている。走って戻って来たルシリアも、うわあと言って皮肉気な笑みを口元に浮かべた。
「これはようない、お姫様にしてやられたわ」
随分と世渡り上手なんやねと言われたレイアーラは「そうでしょうか」と首を傾げる。
だが、彼女が生きてきたのは社交界なのだ。その頂点に君臨していた女性が処世術に弱いはずがない。
レイアーラが手を出せるものならやってみろとばかりの態度でいたのは、これくらいの綱渡りは目を閉じてでも突破してきたからだったのだろう。
「ちょっと、乱暴すぎるだろ! コイツのどこが聖女なわけ!?」
怒りながら走ってきたデュークに、手を振りながら感謝を述べる姉。
その後ろ姿を見送りながら、フェリオネルは兄もすごい人を選んだものだと苦笑した。
だが、やはりこの数だ。位置の近い所や北南ではタイミングが合うも、全員で合わせるのは難易度が格段に上がった。
南のデュークとルシリアの間にオウルが移動して両方を一気に食い止め、ドラゴンに乗っていて一番動きが見えやすいフェリオネルに合わせて攻撃することにする。
「や……っ、たぁ!」
繰り返すこと、五度目。
一度でかなりの消耗させられる巨体に、全員が汗みずくで今にも座り込みそうだった。
だというのに、半壊した魔物が塵となって風に吹かれていく方向が同じだと気付いたフェリオネルが異常を知らせる。
中心部、レイアーラがいる方に集まっていくのだ。塵は集まり、今や巨大な塔を形成しそうな程だった。
「なに、あの大きさ……っ」
全力で走っていくリスティーたちであったが、例え魔法を使おうとも、ドラゴンに乗っていようとも追いつきようのない再生速度だった。
「お義姉様は!? 退避させてますよね……っ!?」
問うフェリオネルの耳に、お逃げ下さいという恐慌に包まれた声が入ってきて「うそおっ?」と叫んだリスティーが立ち止まり、構えるのが眼下に見える。
「皆様は逃げてください、あれは私が討ちます!」
「なりません、姫様!」
「私はもう姫ではありません。それに、あの子も決意したのです。ならば――私も戦いますわ!」
義理の姉と慕う女性の凛とした声が聞こえてきた瞬間、一角獣に騎乗した彼女が飛翔してきた。
高い位置で結わえた水色の髪が風に舞う。
「長きに渡って民を苦しめてきた魔物よ、今がお前の終わりの時です!」
微振動する魔物に防御壁で圧をかけているレイアーラが、頭頂部に迫る。
最高強度に固めた防御壁が金色に光った。宙を蹴った一角獣が真っ逆さまに急降下する。
「レイヴェン様、見守っていてくださいな……!」
手網を両手で握り締め、魔力で作った糸で腰を固定させて足で自らの体重を支えたレイアーラは、真一文字に魔物に突っ込んでいった。
「お義姉様……ッ!」
対衝突した魔物と一角獣。フェリオネルは口から悲痛な声が出て、ドラゴンを飛ばす。
何度も呼びかけている彼の目の前で、光の粒子と化した魔物が爆散した。
中から一角獣が飛び出してきて、無傷のレイアーラが凛々しい表情のまま一角獣を空中でくるりと一回転させる。
「お義姉様、お怪我は!?」
隣に並び立つと、彼女はあらと驚いたように目を丸くさせる。
「ありませんわ。皆さまは無事でして?」
「えっ……か、確認していません。ですが、一番危なかったのはお義姉様ですよ!?」
あんなに危険なことをしてと叱責しようとすると、レイアーラは「まあ怖い顔」と眉を下げた。
「私は防御の能力者なのよ。心配しすぎではなくて?」
「あなたは私の家族です! 私の姉になりたいのであれば、お体を大事にしてください」
なにかあれば兄さんが悲しみますと涙を零したフェリオネルに、さしものレイアーラも狼狽える。
「ごめんなさい、フェル。あなたに心配を掛けてしまったわ」
謝罪を口にした彼女は、焦ったのだと訴えた。
「私が健在であると知れば……レイヴェン様も安心するかと思って」
「それはそうでしょうが、もう。お義姉様は困った人なんですから」
頬を膨らませかねないフェリオネルはドラゴンをゆっくり降下させていく。
地面に着地したドラゴンの頭を「よく頑張りましたね」と撫でてから降り、困惑した様子で辺りを見渡した。
「こんなに人がいたでしょうか」
不安げに呟いたフェリオネルは名前を呼ばれて振り返る。
走って戻ってきたリスティーが、「レイアーラ様ですよね!?」と叫んだ。
「新聞社にタレこみ入れたの、レイアーラ様で合ってます!?」
「そうです、私が呼びましたの! 明日の一面に載りますわよ」
綺麗に写真を撮ってもらえたでしょうかとお姫様然とした微笑みを浮かべる彼女に、フェリオネルはえっ!? と驚きの声を上げる。
怪しいと感じたのは、間違いなくそのせいだ。
レイアーラが呼んだのは一社だけではない。一体何人の記者がいるのかと、フェリオネルの頭はくらりと揺れた。
「どうやって兄さんの所にまで届けるのかと思ったら……」
中央と南部。両方の新聞社が勢ぞろいして、今回のヒロインともいえる活躍をしたレイアーラにインタビューを取るために集まってきていたのが違和感の正体だ。
「これで無事、中央に帰れますわよね!」
新聞社の目の前で私になにかできるとでも思いまして? と言いたげな目を革命軍に向けるレイアーラに、リスティーは呆然として口をぱかりと開ける。
脱力したフェリオネルは、私の写真を載せるのは止めてください……と蚊の鳴くような声で呟いて両手で顔を覆う。
革命軍は新聞社に追いやられて、どうしたらいいのかと狼狽えている。走って戻って来たルシリアも、うわあと言って皮肉気な笑みを口元に浮かべた。
「これはようない、お姫様にしてやられたわ」
随分と世渡り上手なんやねと言われたレイアーラは「そうでしょうか」と首を傾げる。
だが、彼女が生きてきたのは社交界なのだ。その頂点に君臨していた女性が処世術に弱いはずがない。
レイアーラが手を出せるものならやってみろとばかりの態度でいたのは、これくらいの綱渡りは目を閉じてでも突破してきたからだったのだろう。
「ちょっと、乱暴すぎるだろ! コイツのどこが聖女なわけ!?」
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