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本編
11.側妃の謀りと嵌められた王妃
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事態を聞きつけ、急いで駆け付けた国王カルロス
呆然とする王妃アリーヤと池泉から救い出される側妃ベリンダの姿が視界に入る。
〈妃宮庭園〉には美しい池泉が造られている。周囲には、色とりどりの花々が植えられ、訪れる人たちの目を楽しませている。
それが侍女たちは青褪め、池泉の水を飲んだ側妃ベリンダは激しく咳き込んでいる。
声を張り上げる国王カルロス。
「いったいこれは何事だ! 何故、このような事態になっている! すぐに医官を呼べ! アリーヤ、大丈夫かっ!」
怒号を飛ばす国王カルロスは、すぐに王妃アリーヤの側へ。
だが、王妃アリーヤは突然の惨事に呆然としている様子。国王カルロスの掛け声にも反応しない。
「アリーヤ、大丈夫かっ?!」
王妃アリーヤばかりを気遣う国王カルロスに苛立つ側妃ベリンダは、ぎりっと下唇を噛む。
◇
国王カルロスの御子を懐妊している側妃ベリンダ。それにもかかわらず、彼女のことは後回しにする国王カルロス。
それが側妃ベリンダの癪に障る。
「寵妃である私よりも小娘の方が大切だとでも言うの! 優先させるべきは私の方でしょう!」
激しい怒りに震える。
おかげで側妃ベリンダが懐妊している事実に気付く国王カルロスは、ようやく彼女を気遣う。
「ベリンダ、いったい何があった? 医官っ、腹の子は大丈夫であろうな?」
側妃ベリンダを介抱する医官へと言い放つ国王カルロス。
深く平伏する医官は告げる。
「陛下……今はまだ何とも申し上げられません。とにかく側妃様を急ぎ寝所へとお運びする方が先決かと思われます」
「ならば、今すぐにでも側妃を連れて治療に当たれ!」
すぐに側妃ベリンダを乗せる為の輿が用意されることに。
一方、側妃ベリンダは傍らの侍女へと合図の目配せを送る。頷く侍女は突然大声を上げる。
「国王陛下! 畏れ多くも申し上げたい事がございます!」
侍女風情の申し出ではあるが、事が事なだけに口上の赦しを与える国王カルロス。
「余の妃に何があったのかを知っているなら構わず話せ」
「わっ、私は見ておりました! 共に散策をする寵妃ベリンダ様を王妃様が池泉へと突き落とすのを……!」
「黙れ! 侍女風情が余の王妃を蔑めるつもりか? 国王へと虚偽を申せばどうなるか相応の覚悟であろうな?」
深く平伏する侍女は「もちろんでございます!」と迷うことなく告げる。
「偉大な国王陛下を前にして嘘は申し上げません。蔑めるなどもってのほかです。私は真実を申し上げたまでのことです」
クラウン王国の〈国王法〉によれば、国王に虚偽を申したり、謀るような大罪を犯せば極刑が課される。
王妃アリーヤへと視線を滑らせる国王カルロス。だが、当の本人は虚ろな様子
実は何も語れない状態へと追い込まれている王妃アリーヤ。側妃ベリンダが持ち込んだ花蜜茶の作用により、思考の混濁を促されたせいだ。
運の悪いことに、王妃アリーヤ付きの侍女までもが震える声で告げる。
「わっ、私も……王妃様の所業を見ておりました」
「何を見たと申すか?」
国王カルロスの感情のこもらない声音が響く。
「王妃様は……花々を愛でておられた側妃様を後ろから池泉の中へと突き落としたのでございます。まさかご懐妊中の側妃様を池泉へと突き落とすなど、いくら王妃様でもやはり見過ごすことは憚られます!」
わぁっ! と泣き崩れる侍女。
だが、実は泣く真似をして見せる侍女は、前もって側妃ベリンダから「そうするように……」と指示されていた。
この侍女は側妃ベリンダが王妃アリーヤを監視する為に〈妃宮〉へと密かに送り込んでいた者。
これにより、事態は更に悪化する。
その後。
医官たちにより、急いで〈後宮〉の寝所へと運ばれた側妃ベリンダだが……。
呆然とする王妃アリーヤと池泉から救い出される側妃ベリンダの姿が視界に入る。
〈妃宮庭園〉には美しい池泉が造られている。周囲には、色とりどりの花々が植えられ、訪れる人たちの目を楽しませている。
それが侍女たちは青褪め、池泉の水を飲んだ側妃ベリンダは激しく咳き込んでいる。
声を張り上げる国王カルロス。
「いったいこれは何事だ! 何故、このような事態になっている! すぐに医官を呼べ! アリーヤ、大丈夫かっ!」
怒号を飛ばす国王カルロスは、すぐに王妃アリーヤの側へ。
だが、王妃アリーヤは突然の惨事に呆然としている様子。国王カルロスの掛け声にも反応しない。
「アリーヤ、大丈夫かっ?!」
王妃アリーヤばかりを気遣う国王カルロスに苛立つ側妃ベリンダは、ぎりっと下唇を噛む。
◇
国王カルロスの御子を懐妊している側妃ベリンダ。それにもかかわらず、彼女のことは後回しにする国王カルロス。
それが側妃ベリンダの癪に障る。
「寵妃である私よりも小娘の方が大切だとでも言うの! 優先させるべきは私の方でしょう!」
激しい怒りに震える。
おかげで側妃ベリンダが懐妊している事実に気付く国王カルロスは、ようやく彼女を気遣う。
「ベリンダ、いったい何があった? 医官っ、腹の子は大丈夫であろうな?」
側妃ベリンダを介抱する医官へと言い放つ国王カルロス。
深く平伏する医官は告げる。
「陛下……今はまだ何とも申し上げられません。とにかく側妃様を急ぎ寝所へとお運びする方が先決かと思われます」
「ならば、今すぐにでも側妃を連れて治療に当たれ!」
すぐに側妃ベリンダを乗せる為の輿が用意されることに。
一方、側妃ベリンダは傍らの侍女へと合図の目配せを送る。頷く侍女は突然大声を上げる。
「国王陛下! 畏れ多くも申し上げたい事がございます!」
侍女風情の申し出ではあるが、事が事なだけに口上の赦しを与える国王カルロス。
「余の妃に何があったのかを知っているなら構わず話せ」
「わっ、私は見ておりました! 共に散策をする寵妃ベリンダ様を王妃様が池泉へと突き落とすのを……!」
「黙れ! 侍女風情が余の王妃を蔑めるつもりか? 国王へと虚偽を申せばどうなるか相応の覚悟であろうな?」
深く平伏する侍女は「もちろんでございます!」と迷うことなく告げる。
「偉大な国王陛下を前にして嘘は申し上げません。蔑めるなどもってのほかです。私は真実を申し上げたまでのことです」
クラウン王国の〈国王法〉によれば、国王に虚偽を申したり、謀るような大罪を犯せば極刑が課される。
王妃アリーヤへと視線を滑らせる国王カルロス。だが、当の本人は虚ろな様子
実は何も語れない状態へと追い込まれている王妃アリーヤ。側妃ベリンダが持ち込んだ花蜜茶の作用により、思考の混濁を促されたせいだ。
運の悪いことに、王妃アリーヤ付きの侍女までもが震える声で告げる。
「わっ、私も……王妃様の所業を見ておりました」
「何を見たと申すか?」
国王カルロスの感情のこもらない声音が響く。
「王妃様は……花々を愛でておられた側妃様を後ろから池泉の中へと突き落としたのでございます。まさかご懐妊中の側妃様を池泉へと突き落とすなど、いくら王妃様でもやはり見過ごすことは憚られます!」
わぁっ! と泣き崩れる侍女。
だが、実は泣く真似をして見せる侍女は、前もって側妃ベリンダから「そうするように……」と指示されていた。
この侍女は側妃ベリンダが王妃アリーヤを監視する為に〈妃宮〉へと密かに送り込んでいた者。
これにより、事態は更に悪化する。
その後。
医官たちにより、急いで〈後宮〉の寝所へと運ばれた側妃ベリンダだが……。
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