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海の王国編
24.不思議な海の王国と王と眷属
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小さくとも美しい海の王国メーリン。
1人の王と僅かな眷属のみが存在する。
『王の名はディラン』
いつから存在するのか?
何処に存在するのか?
何故、誰も知らないのか?
海の秘境とも云われる秘匿の王国メーリンは、王国自体を結界が覆うせいで人目につかない。
それは彼等が忘れられた古の民だから。しかし、それ以上に彼等の持つ特性が、不思議と『人の記憶に残らない』という不思議な特性を持つ。
故に、クラウン王国の〈離宮〉で王妃アリーヤに仕えていた侍女マイラも“我が主“ディランと共に〈離宮〉から立ち去ってしまえば、国王カルロスの記憶には残らない。
存在した事実も無い。
誰も海の王国メーリンを知らないのは当然。
限られた者しか海の王国メーリンに住むことは許されず、その限られた者全ては王の眷属。外からの人間はいない。
王妃アリーヤは外界から海の王国メーリンへと入国する事を許された唯一の女性と云えるかもしれない。
全ては、海の王国メーリンの王ディランに愛された唯一の王女だから。
◇
海の王国メーリンの〈水宝宮殿〉。
王ディランの瀟洒な寝所では、いまだ滾滾と眠るアリーヤがいる。その寝顔は穏やかな様を見せていることから、これまでで一番の安眠を得たのかもしれない。
アリーヤの手を優しく握り締める王ディランがいる。
“艶めく青銀の髪”に“切れ長の金眼”を併せ持つ王ディランは、海より深い蒼で染められた長衣をゆったりと身に纏う。
「愛しいアリーヤ……君は寝顔さえも美しいから私は魅せられてばかりいるよ。私がどれほど君を想っているか? 君は知らないだろうね」
王ディランは握り締めるアリーヤの指先へと口付けを落とす。
眠っているはずのアリーヤの花の顔がふにゃりと緩み、そのあどけなさに思わず甘い吐息を漏らす王ディラン。
「ふふっ……可愛いなぁ、私のアリーヤは……好きなだけお休み。私が側についているから安心して眠ると良い」
王ディランの相貌も緩みっぱなし。
◇
過去。
幼い頃より不遇な時を過ごしたきた王女アリーヤ。
生国のアメジスト王国では、王家の王女として生まれながらも母アマラの命と引き換えに誕生したことが起因し、父王イーサンからは愛さるがなかった。
王族一家からは疎外されて育つ。
ただ、輿入れ先のクラウン王国では、意外にも国王カルロスから情愛されるが、それは一方的なもの。
傍から見れば、一国を治める国王カルロスからの深い寵愛を賜る王妃アリーヤ。
だが、自らが望んだわけではない。
ましてや愛してもいない人からの強過ぎる情愛は複雑。
おまけに国王カルロスの寵妃ベリンダからは、「国王の寵愛を奪った売女!」と罵られ、激しく憎まれてしまう。
常に身の置きどころがなく、気の落ち着きようがなかった王妃アリーヤ
ーーー心が休まることがない……。
それがアリーヤの本音。
当時の自分の置かれた境遇とは違い、久しぶりの安眠を得るアリーヤ。起きる気配はない。
だが、王ディランが握り締める自身の手に縋るように頬を寄せるアリーヤ。図らずも、無意識の行動で彼を喜ばせている。
「君は誠に愛らしいね、私のアリーヤ……」
そっと呟く王ディラン。
眠るアリーヤの額へと口付けをし、柔らかな唇にも触れる。
「ふふっ……アリーヤは甘いね。君の全てが愛おしいよ」
今この時は穏やかな空気に包まれている。
1人の王と僅かな眷属のみが存在する。
『王の名はディラン』
いつから存在するのか?
何処に存在するのか?
何故、誰も知らないのか?
海の秘境とも云われる秘匿の王国メーリンは、王国自体を結界が覆うせいで人目につかない。
それは彼等が忘れられた古の民だから。しかし、それ以上に彼等の持つ特性が、不思議と『人の記憶に残らない』という不思議な特性を持つ。
故に、クラウン王国の〈離宮〉で王妃アリーヤに仕えていた侍女マイラも“我が主“ディランと共に〈離宮〉から立ち去ってしまえば、国王カルロスの記憶には残らない。
存在した事実も無い。
誰も海の王国メーリンを知らないのは当然。
限られた者しか海の王国メーリンに住むことは許されず、その限られた者全ては王の眷属。外からの人間はいない。
王妃アリーヤは外界から海の王国メーリンへと入国する事を許された唯一の女性と云えるかもしれない。
全ては、海の王国メーリンの王ディランに愛された唯一の王女だから。
◇
海の王国メーリンの〈水宝宮殿〉。
王ディランの瀟洒な寝所では、いまだ滾滾と眠るアリーヤがいる。その寝顔は穏やかな様を見せていることから、これまでで一番の安眠を得たのかもしれない。
アリーヤの手を優しく握り締める王ディランがいる。
“艶めく青銀の髪”に“切れ長の金眼”を併せ持つ王ディランは、海より深い蒼で染められた長衣をゆったりと身に纏う。
「愛しいアリーヤ……君は寝顔さえも美しいから私は魅せられてばかりいるよ。私がどれほど君を想っているか? 君は知らないだろうね」
王ディランは握り締めるアリーヤの指先へと口付けを落とす。
眠っているはずのアリーヤの花の顔がふにゃりと緩み、そのあどけなさに思わず甘い吐息を漏らす王ディラン。
「ふふっ……可愛いなぁ、私のアリーヤは……好きなだけお休み。私が側についているから安心して眠ると良い」
王ディランの相貌も緩みっぱなし。
◇
過去。
幼い頃より不遇な時を過ごしたきた王女アリーヤ。
生国のアメジスト王国では、王家の王女として生まれながらも母アマラの命と引き換えに誕生したことが起因し、父王イーサンからは愛さるがなかった。
王族一家からは疎外されて育つ。
ただ、輿入れ先のクラウン王国では、意外にも国王カルロスから情愛されるが、それは一方的なもの。
傍から見れば、一国を治める国王カルロスからの深い寵愛を賜る王妃アリーヤ。
だが、自らが望んだわけではない。
ましてや愛してもいない人からの強過ぎる情愛は複雑。
おまけに国王カルロスの寵妃ベリンダからは、「国王の寵愛を奪った売女!」と罵られ、激しく憎まれてしまう。
常に身の置きどころがなく、気の落ち着きようがなかった王妃アリーヤ
ーーー心が休まることがない……。
それがアリーヤの本音。
当時の自分の置かれた境遇とは違い、久しぶりの安眠を得るアリーヤ。起きる気配はない。
だが、王ディランが握り締める自身の手に縋るように頬を寄せるアリーヤ。図らずも、無意識の行動で彼を喜ばせている。
「君は誠に愛らしいね、私のアリーヤ……」
そっと呟く王ディラン。
眠るアリーヤの額へと口付けをし、柔らかな唇にも触れる。
「ふふっ……アリーヤは甘いね。君の全てが愛おしいよ」
今この時は穏やかな空気に包まれている。
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