新しい家族は保護犬きーちゃん

ゆきむらさり

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序章・過去編

1話 猫派だった私とシャムネコ

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 この頃の私は、特に犬好きというわけでもなく、犬派か猫派のどちらかを選べと聞かれたら「猫派かなぁ……」と。

 そんな私が将来的には、どっぷりと犬派に転向するのだから先の人生は分からない。


 ◇


 子供の頃はオスのシャム猫と生活していた。いつも同じ布団で寝るほどの仲良し。

 我が家は動物が多い。

 犬、猫に始まり、文鳥や九官鳥にセキセイインコ。メダカや金魚もいた。自宅の庭には大きな鳥小屋があり、鶏も多い。しまいにはウサギやリスまでいたよ。

 さておき。

 我が家の両親は共働き。だから、「幼い娘が寂しくないように……」と一匹のシャム猫をプレゼントしてくれた、

 ここでは私に懐いていたシャム猫の話をしようと思う。

 同じ寝台で常に一緒に眠るシャム猫。ツンと気高くスラリとした美人さん。とっても甘えん坊。

 一番覚えているのは、学校の宿題のノートに傍に置かれたスタンプ台へと前足を乗せ、その足で宿題のノートへとぺったんぺったんとイタズラ。赤い朱肉に彩られた肉球🐾の足跡がノートを彩る。

 ーーー可愛い。イタズラさえ可愛い。

「ぴーちゃん」と名付けられたシャム猫ちゃん。

 ぴーちゃんは自由気まま。猫の扉から自宅の庭や敷地の森へと遊び回っていた。

 十数年経ったある日。

 いつものように出歩くぴーちゃん。振り向きざまに「ニャー」と一鳴きしたのを最後に、それ以後姿を見せなくなった。

 永久に帰っては来なかったシャム猫のぴーちゃん。その日は寂しさから一日中泣いた。

 母が教えてくれたよ。

「猫ちゃんは愛する飼い主には死に目を見せないらしいの。きっと死期を悟ったのね。ぴーちゃんは長生きだったから大往生。さーちゃんと過ごせて絶対に幸せだったと思うよ」

 だから、事故などに巻き込まれることなく、シャム猫のぴーちゃんが心安らかに旅立てるように祈った。

 子供の頃は猫派だった私。

 その後、皮肉なことに猫アレルギーだと知った。酷い喘息に悩まされていたのも、実はシャム猫のぴーちゃんが原因だったらしい。

 優しいぴーちゃは喘息で苦しむ私を察したのかもしれない。皮肉な話。ただ、とても満たされていたことは確か。

 ーーー今でも忘れないシャム猫のぴーちゃん。


 「私の元に来てくれてありがとう!!」

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