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保護犬ちゃん・トライアル編
14話 トライアル前の電話
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待ちに待ったトライアルの日。
此の日を迎えるまでの間に、私的にはちょいと悲しい出来事があった。実は保護犬の桔梗ちゃんの去勢手術の術後検査の時に、「鼠径ヘルニア」が見つかったのだ。すぐに連絡が来た。
保護団体のお姉さんからの電話。
「手術後の検査時に……桔梗ちゃんに病気が見つかりました。里親募集には記載されていない内容となります。誠に申し訳ありません。今回の桔梗ちゃんとのトライアルも譲渡もキャンセルして頂いても構いません。とても残念なことですが……」
申し訳なさそうな保護団体のお姉さん。
(えっ?! 病気が見つかったからキャンセル? きーちゃんを我が家へと迎える準備万端なのに……)
予想もしない電話。予想もしない言葉。でも、でも、そんな事ではキャンセルしない。
(……この子だと思った子だよ? きーちゃんはウチの子になるんだよ。絶対にキャンセルはしない)
誰しもが五体満足だとは限らない。保護犬ちゃん達の全ての子が健康だとも限らない。「病気だから要らない」とかあり得ない。ただ、そう言わざるを得ない事情があることも聞かされる。切なくなる。
病気の子など要らない……そう言って突き返す家族や、平然と捨ててしまう家族もいるからだ。そうなるぐらいなら、一層のこと事前に伝え、保護した方が其の子の為にも良い。キャンセルされたなら次の優しい里親を見つけるまでのこと。でも、病気持ちでお断りされた子に、次の里親が見つかるとは限らない。
だから、即決で応える。保護団体のお姉さんにしっかりと伝える。
「大丈夫です! 私達家族はキャンセルなどしません。桔梗ちゃんに病気があるからと言って、それを理由には断ったりはしません。きーちゃんはウチで大切に育てます。だから、そんな風に言わないで下さい。どうか安心して下さい」
「そう言ってもらえると有り難いです。優しい里親様が見つかり、私も嬉しいです。安心して託せます。可哀想なあの子を……どうかよろしくお願い致します」
こうして、いよいよトライアルへ。
* * * * * * * *
我が家にお迎えする保護犬ちゃんは、「桔梗」という名前から愛称「きーちゃん」と呼ぶことにする。
実は譲渡後であれば、里親として保護犬ちゃんの名前を新たに付け直しても良いそうだが、こんな素敵な名前があるので今更だ。
保護団体のお姉さんは改名もOKだと言ってくれた。せっかく素敵な名前を付けてもらい、保護されている間もずっと「桔梗ちゃん」「きーちゃん」と呼ばれていたのなら、そのままの方が桔梗ちゃんも混乱しないで済む。愛着のある名前の方が断然良い。
私達夫婦の間でも、すでに「きーちゃん」呼びが定着している。だから、この子は“きーちゃん”。
前夜は興奮で眠れなかった私。対照的に旦那様は落ち着いている。やはり5歳上が物を言う。
保護団体のお姉さんに連れられ、我が家へとやって来た保護犬の桔梗ちゃん。ペット用スリングに包まれ、お顔だけが出ている。
「うわぁ! きーちゃん……やっぱり可愛い!」
喜ぶ私。だって、この日が来ることを心から待ち望んでいたから余計。赤いお洋服姿も可愛い。
「このお洋服も寄付なんですよ。ただ、合うサイズがあるかといえば難しくて……きーちゃんは大きい方だから、お尻がはみ出てしまっていますね」
あははっ……本当だ。
思わず、笑い声が零れる。一気に場が和む。
此の日を迎えるまでの間に、私的にはちょいと悲しい出来事があった。実は保護犬の桔梗ちゃんの去勢手術の術後検査の時に、「鼠径ヘルニア」が見つかったのだ。すぐに連絡が来た。
保護団体のお姉さんからの電話。
「手術後の検査時に……桔梗ちゃんに病気が見つかりました。里親募集には記載されていない内容となります。誠に申し訳ありません。今回の桔梗ちゃんとのトライアルも譲渡もキャンセルして頂いても構いません。とても残念なことですが……」
申し訳なさそうな保護団体のお姉さん。
(えっ?! 病気が見つかったからキャンセル? きーちゃんを我が家へと迎える準備万端なのに……)
予想もしない電話。予想もしない言葉。でも、でも、そんな事ではキャンセルしない。
(……この子だと思った子だよ? きーちゃんはウチの子になるんだよ。絶対にキャンセルはしない)
誰しもが五体満足だとは限らない。保護犬ちゃん達の全ての子が健康だとも限らない。「病気だから要らない」とかあり得ない。ただ、そう言わざるを得ない事情があることも聞かされる。切なくなる。
病気の子など要らない……そう言って突き返す家族や、平然と捨ててしまう家族もいるからだ。そうなるぐらいなら、一層のこと事前に伝え、保護した方が其の子の為にも良い。キャンセルされたなら次の優しい里親を見つけるまでのこと。でも、病気持ちでお断りされた子に、次の里親が見つかるとは限らない。
だから、即決で応える。保護団体のお姉さんにしっかりと伝える。
「大丈夫です! 私達家族はキャンセルなどしません。桔梗ちゃんに病気があるからと言って、それを理由には断ったりはしません。きーちゃんはウチで大切に育てます。だから、そんな風に言わないで下さい。どうか安心して下さい」
「そう言ってもらえると有り難いです。優しい里親様が見つかり、私も嬉しいです。安心して託せます。可哀想なあの子を……どうかよろしくお願い致します」
こうして、いよいよトライアルへ。
* * * * * * * *
我が家にお迎えする保護犬ちゃんは、「桔梗」という名前から愛称「きーちゃん」と呼ぶことにする。
実は譲渡後であれば、里親として保護犬ちゃんの名前を新たに付け直しても良いそうだが、こんな素敵な名前があるので今更だ。
保護団体のお姉さんは改名もOKだと言ってくれた。せっかく素敵な名前を付けてもらい、保護されている間もずっと「桔梗ちゃん」「きーちゃん」と呼ばれていたのなら、そのままの方が桔梗ちゃんも混乱しないで済む。愛着のある名前の方が断然良い。
私達夫婦の間でも、すでに「きーちゃん」呼びが定着している。だから、この子は“きーちゃん”。
前夜は興奮で眠れなかった私。対照的に旦那様は落ち着いている。やはり5歳上が物を言う。
保護団体のお姉さんに連れられ、我が家へとやって来た保護犬の桔梗ちゃん。ペット用スリングに包まれ、お顔だけが出ている。
「うわぁ! きーちゃん……やっぱり可愛い!」
喜ぶ私。だって、この日が来ることを心から待ち望んでいたから余計。赤いお洋服姿も可愛い。
「このお洋服も寄付なんですよ。ただ、合うサイズがあるかといえば難しくて……きーちゃんは大きい方だから、お尻がはみ出てしまっていますね」
あははっ……本当だ。
思わず、笑い声が零れる。一気に場が和む。
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