新しい家族は保護犬きーちゃん

ゆきむらさり

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保護犬ちゃん・トライアル編

15話 引き渡しと別れ

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保護団体のお姉さんのスリング抱っこ紐の中から、伺うように此方を見るきーちゃん。抱かれているせいか、まだ落ち着いている。いつもと違う風景。でも震えてはいない。それでもクリクリのお目々をキョロキョロとさせては周囲を見回している。

此処はどこ? みたいな様子のきーちゃん。

きーちゃんを抱いたままの状態で、譲渡における注意事項などの説明をする保護団体のお姉さん。さらには譲渡誓約書と飼育費用の振り込み用紙。保護犬ちゃん達のクリスマス会開催時の心のこもった手作りおやつと、今食べているドックフードまで手渡してくれた。

トライアルは義務。だが、実際はそのまま継続で譲渡となる。ただ、万が一の事がある為、やはりトライアルは必要なのだ。

保護団体のお姉さんからの諸々の説明などが終われば、スリングから出されたきーちゃんが私達家族へと手渡される。

この時のきーちゃん、まるで取って喰われるような怯えっぷり。やはり見ず知らずの人間が怖いのだ。いつも一緒だった保護団体のお姉さんの温もりから離れたことにショックを受け、ようやく状況を察したのか震えている。明らかに怯えている。

「……そうだよね、怖いよね? でも大丈夫だよ、きーちゃん。大丈夫だからね」

怖がるきーちゃんを何とか抱き締める。

「まだ当分の間は慣れない環境に戸惑うきーちゃんだと思います。落ち着かせる為に……必ずゲージの外はバスタオルなどで覆い、目隠しをしてあげて下さい。安心出来る逃げ場をしっかり確保してあげて下さい」

そう告げた保護団体のお姉さん。

実は、事前に犬用の大きめのゲージと中に入れる隠れ家的な犬小屋も用意するように言われている。あとは犬用トイレも。ちなみにトイレトレーニングはまだ。

頷く私達夫婦。

きーちゃんを私達家族に手渡すと、写真を1枚撮らせて欲しいと告げる保護団体のお姉さん。きーちゃんが里親さんに引き取られ、幸せな今の姿をブログに載せれば、今後の保護活動にも役立つ。

里親さんが増え、保護犬ちゃんが幸せを手に入れる。福は福を招き、幸は幸を呼ぶ。そうやって活動の輪が広がれば良い。

家族写真を撮り終えれば、振り返ることなく去って行く保護団体のお姉さん。淋しそうなきーちゃん。それを知りながらも保護団体のお姉さんはきーちゃんには何も話さず、視線も合わせず、最後は颯爽と去って行く。

後は振り返らない保護団体のお姉さんには、きーちゃんの幸せを望むからこそ、いるべき居場所は自分の側ではなく、新しい里親であるべきだ……との断腸の思い。

別れが辛いのは保護団体のお姉さんも一緒。

置いてかれた……と震えるきーちゃんは、もっと淋しそう。

もしかしたら、きーちゃんは「捨てられた」と思っているのかもしれない。私達夫婦へと懸命に威嚇する姿が切ない。



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