田舎娘は後宮妃になりました。

ゆきむらさり

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後宮妃・二の妃と林家編②

39.夢現つの宝玉の想い 宝玉side

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 ーー嫌っ、だめっー……!!

 
 後先など考えない。

 大事な首飾り。大事な指輪。

 この指輪は私が生きていくための大事な心の拠り所。

 私にとっては命の恩人の方からいただいたもの。

 ーー絶対になくせない……!

 躊躇うことなく池へと飛び込んだ。それほど深い池ではないと聞いていたから。

 ーーもう少しで手が届きそう。

 届きそうなのに……。

 だめっ、息が苦しい……ああっ、そっか。

 今頃気づくなんて……らしくない。

 情けないなぁ……泳げないんだ。

 でも、意識が遠のいた時、微かに見えた気がする。

 ーーあの時の武人のお兄さん……?


 ◇


 夢かうつつか。

 過去が蘇る。

 父さんも母さんも亡くなって……一人ぼっちになっても生きてこられたのは、この指輪があったから……。

 武人のお兄さんが『生きろ』と言ってくれたから……だから、死なずに済んだ。

 だって、本当は……強くなんかない。

 優しい父さんと母さんの後を追うことを考えた日もある。

 一緒に逝けば、父さんと母さんと一緒にいられる。そこが天国でも地獄でも構わない。

 家族みんなでいられるなら、そこが幸せの在りか。

 そこが私の……、宝玉の幸せの場所。

 そう思った日もあったから……強くなんかないよ。


 ◇


 もし、あの時。

 親切な武人のお兄さんに出会わなかったら、きっと私は今頃いなかったかもしれない。

 だから、この指輪は失くせない。

 この指輪がある限り、私の命も続く。

 生きていける。

 これは、私を見守ってくれる大切な御守り。独りぼっちでも心折れずに、日々を生きて行くための大切な御守り。

 いつか、あの時の武人のお兄さんに会いたい。

 ーー会ってお礼を言いたい。


 ◇


『恩には恩で報いなさい。人から親切にされたら、今度は宝玉が親切にしてあげなさい。自分が必要とされたいなら、まずは必要としている人に手を差し伸べてあげなさい。それが宝玉が幸せになるための助けとなるわ。幸せへの足掛かりになるはずよ。宝玉なら……きっと幸せになれると信じているわ』

 綺麗で優しい母さんも言っていた。

『お兄さんのおかげで宝玉は生きていられます』と『お兄さん、ありがとう』と必ずお礼を言いたい。

 その想いが生きる糧になるから。

 言いたいのに……。

 指輪が沈んでいくの。涙が出るの。

 
 その刹那、ふわりと温かいものが体を包む。優しさが伝わる。

 ーー誰かが抱きしめてくれている?

 きっと……きっと、この手にすがれば大丈夫。そんな気がする。

 懐かしい夢に涙が零れても、この腕に抱き締めらながら見る夢は心地いい。

 貧しくても幸せだった頃と、もっと幸せな今を夢に見ている。

 ーー父さん、母さん……宝玉は幸せだよ。

 





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