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囚われの花姫と無情な宣告

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「姫様、姫様ー、どうかお願いです……少しでも何か召し上がって下さい……!」

花姫に仕える側仕そばつかえが必死にうったえるも、絶望ぜつぼうふちに沈む花姫アリーシアからは、何の言葉もこぼれない。

黄金造りの美しい宮殿。

花の宮の最奥には、花姫と呼ばれる最高位の美しい姫がしている。

つややかな紅色くれないいろの髪に、若葉のような生き生きとした緑翠りょくすいの瞳をあわせ持つ今代こんだいの花姫は、今はひどくやつれて、精彩せいさいを欠いている。

ーしかし、今は花の宮の最奥、更にその地下に存在する花の牢獄へとつながれている花姫アリーシア。

代々の花姫があやまちをおかした際に、閉じ籠める為に造られた花の牢獄。

花姫を外界からまもる意味をも持つ花の牢獄には、今は憔悴しょうすいした花姫アリーシアが、もう幾日いくにちつながれては涙に暮れている。

美しい緑のつたおおわれ、郷長さとおさによる特殊とくしゅな保護術がほどこされている所為せいで、今の憔悴しょうすいした花姫アリーシアには、簡単には抜け出すには無理がある。

花姫アリーシアの足には、牢獄をおおう緑のつたが伸びては、その細い足首にからまり、自由を奪っている。

今の花姫アリーシアは、その身の使い道ゆえか、大切に保護されている事は間違いはない。

花姫としてのひたいの力が失われようともー、そのきよらかな純潔じゅんけつが失われようともー、次代じだいの花姫は花姫からしか産まれない。

どう足掻あがこうとも花姫の身は、とうとき身である事には変わりはない。

そうー、花姫アリーシアが、今もこうして大切に花の牢獄へと保護されているのは、当初の予定通りに、花姫アリーシアを花のたみの男とつがわせ、次代じだいの花姫をそのはらに、確実にはらませる事に他ならない。

竜帝の元からひっそりと立ち去り、のがれようと樹々きぎの隠れ屋から出た花姫アリーシア。

その目の前にたたず郷長さとおさら。

逃げた花姫を迎えにー、云うなればとらえに現れた郷長さとおさとその側仕そばつかえ。

「……あっ! いやっ!……ああっー……」

花姫アリーシアをとらえた郷長さとおさは、すぐさま花姫アリーシアを眠らせると瞬時しゅんじに立ち去り、花のたみが暮らす隠れさとへと連れ戻す。

そして郷長さとおさは、花姫アリーシアに無情にも告げる。

「姫様ー、このさとから外界へと出られた事は、あえて罪には問いませぬ。花姫であられる姫様は、その身がけがされようともやはりとうとき身。ーならば、その身に次代じだいの花姫を宿してもらいます。当初の予定通りに、花の民の男とつがい、そのとおとき身には、必ずや御子おこはらんで頂きます……その日までは、此処ここからは出しませぬ。ゆるりと此処ここで、静かに日々をお過ごし下さい、我らの姫様ー」

事実上の監禁かんきんと呼べる措置そち

御子おこはらめー」と、無情な宣告せんこく

その日から涙に暮れる花姫アリーシア。

(ああっ、いやよ!……あの方以外のたみつがうぐらいなら、いっそうのこと死んでしまいたいー……!)

もはやしょくす事もせずに、打ちひしがれる花姫アリーシア。

もう幾日いくにちかー、とき概念がいねんさえわからず、花の牢獄にてつながれたままの花姫アリーシア。

花の牢獄に置かれた簡素かんそな寝台にて、眠れない夜を過ごす花姫アリーシアは、絶望のふちに落ち入る。



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