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竜帝の守護騎士と繋がれた花姫
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「帝国の誉れ高き偉大なる竜帝陛下に、我ら一同謹んでご挨拶申し上げます。お召しにより、このロンバルトがお迎えに参上致しました」
帝国の若き守護騎士ロンバルト。
竜帝ジークバルトの従兄弟にあたる竜帝専属の守護騎士の筆頭。
先代竜帝の妹を母に持つ、由緒正しき公爵家の嫡子。
金が混じる茶色の髪に、琥珀色の瞳を併せ持つこの貴公子は、竜帝と並んだとしても何ら見劣りすることのない風貌を湛える。
守護騎士ロンバルトは、冷酷な美貌を纏う竜帝に比べ、柔和な顔立ちをしている。
守護騎士ロンバルトの後ろには、更に数人の守護騎士が控え、皆が一様に頭を垂れては、竜帝の身前に控える。
「来たかー」
静かな声音で返す竜帝に、応対するのは守護騎士ロンバルト。
此処は、竜帝が住まう皇城が建つ帝都からは、かなり離れた最果ての森。
森に湧く清き泉の側に佇むのは、絶対的な帝国の支配者である竜帝ジークバルト。
「陛下ー、突然に痕跡を絶たれ、我ら一同は心より心配致しました。それが、まさかこのような最果ての森にまで飛ばれていようとは思わず、探すのに手間取っておりました……ですが、陛下もお人が悪い。自ら痕跡を絶たれてしまえば、我らは探しようがありません」
僅かに非難めいた口調で、竜帝に臆することなく物申せるのは、この守護騎士ロンバルトぐらい。
竜帝に絶対的な信を置かれているロンバルトは、竜帝には唯一無二の友。
「陛下が幾日も姿を消すぐらいです。余程に……何か善き事がありましたかー?」
「おまえはさすがだ、ロンバルト。余計な事は聞かずに、気にするのはそこか……くくっ、さすがは余の一番の臣下。ロンバルト、愚弟の事は聞かぬのかー……」
「……聞く必要もありません。陛下が仰られたように、まさに愚弟なあの方の最期などは、私にはどうでも良い瑣末な事。もし赦される事なら、帝国の誉れ高き陛下に血を流させた愚かな簒奪者には、私自らが拷問に掛け、死よりも辛い煉獄の焔に焼かれ続ける刑に処したものをー……それだけが悔やまれてなりません」
優しい面立ちをしながらも、さらりと残忍性を見せるあたり、やはり竜帝の守護騎士。
それが筆頭守護騎士ロンバルト。
「時に陛下ー、何か善き事があった割には浮かない様子。どうかその憂いを私めにお話し下さい」
そう告げる守護騎士ロンバルトに、竜帝は薄っすらと笑みを浮かべる。
「余の番が、……竜后が見つかった」
告げる竜帝の金眼には、逃げた己れの愛しい番への僅かな怒りが浮かんでは消える。
そして逃げた美しい番を取り戻すべく、影の守護騎士に命じては、密かに探させるも依然として見つかる事はなく、竜帝の苛立ちと共に、ただいたずらに日々が過ぎ去る。
ーだが、竜帝は知らない。
愛しい番である花姫アリーシアが、花の民を統べる郷長に連れ戻され、まさかその身を花の牢獄へと繋がれては、心許ない日々を過ごしている事などは、よもや知る由もない。
帝国の若き守護騎士ロンバルト。
竜帝ジークバルトの従兄弟にあたる竜帝専属の守護騎士の筆頭。
先代竜帝の妹を母に持つ、由緒正しき公爵家の嫡子。
金が混じる茶色の髪に、琥珀色の瞳を併せ持つこの貴公子は、竜帝と並んだとしても何ら見劣りすることのない風貌を湛える。
守護騎士ロンバルトは、冷酷な美貌を纏う竜帝に比べ、柔和な顔立ちをしている。
守護騎士ロンバルトの後ろには、更に数人の守護騎士が控え、皆が一様に頭を垂れては、竜帝の身前に控える。
「来たかー」
静かな声音で返す竜帝に、応対するのは守護騎士ロンバルト。
此処は、竜帝が住まう皇城が建つ帝都からは、かなり離れた最果ての森。
森に湧く清き泉の側に佇むのは、絶対的な帝国の支配者である竜帝ジークバルト。
「陛下ー、突然に痕跡を絶たれ、我ら一同は心より心配致しました。それが、まさかこのような最果ての森にまで飛ばれていようとは思わず、探すのに手間取っておりました……ですが、陛下もお人が悪い。自ら痕跡を絶たれてしまえば、我らは探しようがありません」
僅かに非難めいた口調で、竜帝に臆することなく物申せるのは、この守護騎士ロンバルトぐらい。
竜帝に絶対的な信を置かれているロンバルトは、竜帝には唯一無二の友。
「陛下が幾日も姿を消すぐらいです。余程に……何か善き事がありましたかー?」
「おまえはさすがだ、ロンバルト。余計な事は聞かずに、気にするのはそこか……くくっ、さすがは余の一番の臣下。ロンバルト、愚弟の事は聞かぬのかー……」
「……聞く必要もありません。陛下が仰られたように、まさに愚弟なあの方の最期などは、私にはどうでも良い瑣末な事。もし赦される事なら、帝国の誉れ高き陛下に血を流させた愚かな簒奪者には、私自らが拷問に掛け、死よりも辛い煉獄の焔に焼かれ続ける刑に処したものをー……それだけが悔やまれてなりません」
優しい面立ちをしながらも、さらりと残忍性を見せるあたり、やはり竜帝の守護騎士。
それが筆頭守護騎士ロンバルト。
「時に陛下ー、何か善き事があった割には浮かない様子。どうかその憂いを私めにお話し下さい」
そう告げる守護騎士ロンバルトに、竜帝は薄っすらと笑みを浮かべる。
「余の番が、……竜后が見つかった」
告げる竜帝の金眼には、逃げた己れの愛しい番への僅かな怒りが浮かんでは消える。
そして逃げた美しい番を取り戻すべく、影の守護騎士に命じては、密かに探させるも依然として見つかる事はなく、竜帝の苛立ちと共に、ただいたずらに日々が過ぎ去る。
ーだが、竜帝は知らない。
愛しい番である花姫アリーシアが、花の民を統べる郷長に連れ戻され、まさかその身を花の牢獄へと繋がれては、心許ない日々を過ごしている事などは、よもや知る由もない。
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