公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり

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最終章・それぞれの至福編

75.シエンナ王家の婚儀と2組の王太子夫妻

 イーデン王国の王太子夫妻の婚儀に続き、ハリー伯爵夫妻の婚儀を挙げ、それから半年を過ぎた頃。

 シエンナ王国へと輿入れしたヘイスティング侯爵令嬢バーバラと王太子スティーヴンとの婚儀が盛大に執り行われる。


 今回、イーデン王国王太子妃として、初の外交に挑んだ王太子妃アンジェラ。

 シエンナ王国王太子妃バーバラとは、実の姉妹のように仲睦まじいことから、イーデン王国を代表して晩餐会では祝辞を贈る。

 祝いの言葉を述べながらも感極まる王太子妃アンジェラ。バーバラの晴れ姿に号泣するという珍事……にもかかわらず、天使のような愛らしさと美しさが功を奏する。

「心優しい隣国の王太子妃様が、清らかな天使の涙を流された。慈悲深いお姿には心が洗われるようです」

 逆に良い評判を与える珍プレーからの好プレー。

 運もツキも、持って生まれた者勝ち。


 和やかな祝いの晩餐会。

 両国の初々しい王太子夫妻が睦まじく歓談する姿は、両国の明るい未来を象徴しているかのよう。

「王太子殿下……バーバラ妃殿下は私の妹のような大切な存在です。必ず幸せにしてください」

「もちろんです、アンジェラ妃殿下。貴女の大切な妹姫は私の唯一無二の愛妃。それこそ誰にも傷付けられることのないように大切に大切に私の閨へと閉じ籠め、愛という名の檻から一生出さないように……痛っ!」

 途端、王太子妃バーバラが肘鉄をくらわす。

「スティーヴン様……暗いダークな部分が出ておりますわよ。純朴なアンジェラお姉様になんということを言うのですか?」

「……だが、スティーヴンの言うことも一理ある」

 納得の王太子フェリクスは大袈裟に頷く。

「私も本音を言えば……愛する妃を己れの寝所へと一生閉じ籠め、私の飽くなき欲情と愛情を溺れるほどにアンジェラの……痛っ!」

 王太子妃バーバラ。本日2度目の肘鉄を王太子フェリクスにもくらわす。

「今は晩餐会の最中ですのよ。お二方ともに飢えた狼のような発言はお控えください。アンジェラお姉様……2人の変◯ピー野郎は放っておいて、今からは女子トークに花を咲かせましょう!」

 結局、最後はこうなる。


 ◇


 数日間、シエンナ王家へと滞在した王太子フェリクスとアンジェラ妃夫妻は、名残り惜しくもシエンナ王太子夫妻に別れを告げ、早々に帰国の途に着く。

 無事にイーデン王家へと帰城。


 早々の帰国理由は王太子アンジェラの懐妊。

 安定期とはいえ御子を身籠もっているからだ。逆に、安定期を迎えた身だからこそ、隣国の婚儀にも参列できた。


 旅の疲れを癒す2人は、〈王太子宮〉の瀟洒な寝所でまったり。

「綺麗だったね、バーバラちゃん。あっ、もうバーバラ妃殿下だったね」

「2人だけの時は構うことはない。今まで通り真名で呼ぶ方がバーバラ妃も喜ぶ」

 そう告げるなり、アンジェラを優しく抱き寄せる王太子フェリクスは、愛妃の額へとチュッと口付けを落とす。

「バーバラちゃんなら隣国の王家へと輿入れしても大丈夫そうだよね? 虐められたりしないよね?」

「物怖じしない彼女のことだ。心配ない。それにバーバラ妃に何かあればスティーヴンが黙ってはいない。バーバラ妃を護るだろう」

 (スティーヴンは一見涼しい顔をしているが、溺愛する者への敵意を赦さない。私以上に根は恐ろしいのが本来の彼だ)

 フッと不敵な笑みを浮かべる王太子フェリクス。それに気付かないアンジェラ妃は純朴そのもの。

「うん……バーバラちゃんを心から愛してくれている王太子殿下なら大丈夫だね」

 王太子フェリクスを見上げるアンジェラ妃は、次には逞しい胸へと甘えるように擦り寄る。おかげで王太子フェリクスの欲情に火が付く。

 互いの合わさる唇は深く甘く。そして激しく。

 王太子フェリクスは身重な愛妃アンジェラを労わるように優しく優しく今宵も抱く。


 幾夜も密夜を過ごすアンジェラ妃。

 王太子フェリクスが告げた通り、どっぷりと注がれる愛に溺れ、ハッピーライフを満喫中。


 ◇


 麗しい貴公子3人と可憐な淑女3人の恋模様。

 ハピエンの最後の締めを飾ったのは、予想もしないカップル。シエンナ王国王太子スティーヴンとヘイスティング侯爵令嬢バーバラ。


 最初こそ渋るヘイスティング侯爵令嬢バーバラ。

『アンジェラお姉様と離れたくない』とか。

『お父様を独り残して隣国へは嫁げない』とか。

 そんな彼女の背中を押したのは、王太子妃アンジェラとヘイスティング侯爵当主。

「バーバラちゃん……私達の固い絆は離れていても一生ものだよ。私は大切なバーバラちゃんにも幸せになって欲しいの。どうか幸せを逃さないでね」

 王太子妃アンジェラは、そう言って揃いの首飾りを手渡す。

「2人の絆の証しだよ」

 アンジェラ天使の名に因み、宝職人に急ぎで作らせた小さな天使の羽の首飾り。

 黄金の鎖の先端には、白銀の天使の羽の片羽がキラリ。2つ揃うと天使の両羽が完成する。

 続いて、侯爵令嬢バーバラの父ヘイスティング侯爵も愛娘バーバラの幸せの為に、彼女の心残りを無くす為にも共に隣国シエンナへと渡る。


 “遂の棲家”をシエンナ王国に決めたヘイスティング侯爵。

 元より、有能な商人なだけに各国にも顔が効く。おかげで王太子妃バーバラの父としても申し分のないように、シエンナ王国でも新たな爵位と領地を賜る。

 両国にそれぞれ爵位を持つ彼は、のちに外交官としても大活躍。

 こうして周囲の後押しと王太子スティーヴンの重い愛情に支えられ、無事にシエンナ王家への輿入れを決めるヘイスティング侯爵令嬢バーバラがいる。


 ◇


 王太子妃バーバラとなった今、彼女は生まれながらの生粋の貴族。おかげで貴族の教養も作法も完璧。

 舞踏も武闘もかなりの域。

 土壇場にも強く、社交も上手い。

 他国からの輿入れでも動じない王太子妃バーバラ。王太子スティーヴンからの寵愛も底なし。

 いつの間にか皆からは敬愛されるように。


 他の問題も片付けた王太子妃バーバラ。

 どの国の社交界にも1人や2人はいる嫌味で高慢ちきな令嬢。彼女達の数々の嫌がらせを上手くかわし、逆にやり込めた王太子妃バーバラ。

「アンジェラお姉様……こういうのは最初が肝心ですのよ。相手にナメられたら終わりですわ。私を攻撃する令嬢がいれば全て返り討ちにして差し上げますわ」

「バーバラちゃんは逞しいね。でも、女の子なんだから無理はしないでね? 私はバーバラちゃんを姉として誇りに思っているよ。同じ王太子妃として共に頑張ろうね」

「もちろんですわ、アンジェラお姉様!」

 きゃあ! と共に抱き合う2人。

 やっぱり仲が良い。


 その後。

 王太子妃バーバラへと嫌がらせをしていた令嬢達の攻撃はピタリと止む。武闘も嗜む王太子妃バーバラが自分で返り討ちにしたおかげ? それもある。

 だが、やはりこのお方が密かに動いている。

 王太子スティーヴンは、今では病むほどに愛する妃バーバラをコケにした者達を赦さない。

 愚かな令嬢を生み出したは家紋は社交界から追放なり、憂き目を見ている。

「だから言っただろう? スティーヴンは私より遥かにダークだ」

 さらりと告げる王太子フェリクス。彼も大概黒い。
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