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公爵家・過去編
11.公爵家の実情と夫妻の別れ・前
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その後はどうなったかといえば。
貴族が貴族たる時代。だからこそ、身分の格差は埋まらない。
名家の嫡子と孤児の歌姫とでは、どう足掻いても釣り合わない。同じ舞台には立てない。それぐらいは容易に察しがつくが、深い恋情に囚われる若い2人には、この先に待ち受ける厳しさよりも、今この時を「共にいることが大事」との想いが大きかった。
若さと初恋のゆえの愚行。
当然、認められることのないダリウスとキャロライン夫妻。泣く泣く別れを余儀なくされる。
惚れた腫れたで世の中を渡って行けるに越したことはない。現実はダリウスとキャロライン夫妻が想う以上に厳しい。
◇
一見、優雅に見える煌びやかな貴族社会。
だが、現実は違う。
憧れの世界とはいえ辛辣な世界。明と暗が入り乱れ、一歩その中へと入れば、権力に浅ましい者達の足の引っ張りあい。不動の地位と権力を盾に、上手く立ち回れる者だけが優雅に渡り歩くことが出来る。
これまでキャロラインが持て囃されてきたのは、「類い稀な美貌」と辺境伯お抱えの「稀代の歌姫」だからこそ。
実際のところは人柄云々よりは、身分がものを言う貴族社会。
卑しい生まれの者は貴族の愛妾にはなれても正妻にはなれない。名家になればなるほど、正妻に求められるのは確かな血統と品位と知性。孤児の出のキャロラインには到底無理な話。
美しい歌姫キャロラインに密かに愛妾の取り引き持ち掛ける不埒な輩はいても、婚姻を申し込む者はいない。心から求めてくれる誠実な者もいない。
だが、グラント公爵家の嫡子ダリウスだけが不埒な輩とは違い、心から歌姫キャロラインを求め、真の愛情を捧げる。
「このような私を心よりを求めてくれたのは、後にも先にもダリウス様だけです」
そう告げた歌姫キャロライン。それは嬉しい真実。だから、自然と心はダリウスへと向けられ、深く傾倒する。
案外、歌姫キャロラインにも初めて訪れた真の恋かもしれない。
◇
現実は無情。
元が孤児のキャロラインでは、グラント公爵家の奥方として歓迎されることはない。それを当代グラント公爵夫人ハリエッタからハッキリと告げられるキャロライン。
グラント公爵夫人ハリエッタの書斎にて、歓迎を受けるどころか苦言を呈されている。
「キャロライン嬢……ダリウスの側から離れて欲しいの。あの子の為と旦那様の為にも貴女には此処にいてもらっては困るのよ」
躊躇いもなく、目の前で不安気な様子のキャロラインへと通告するグラント公爵夫人ハリエッタ。
哀しいかな。
既に二人が別れる道は決まってしまっていたのかもしれない。
一方の嫡子ダリウスも父ダグラスから叱責を受けている。
「若いからこその気の迷いだ。今回だけは赦してやる。目を覚ませ、ダリウス。おまえには名家に生まれた者としての義務と責務がある。卑しい出の歌姫とのまやかしの恋に現つを抜かす暇があるなら、グラント公爵家の嫡子としての己の技量をより磨け」
当代グラント公爵ダグラスほどの権力者なら、歌姫キャロラインの身元ぐらいは当に調べがついている。
「父上に何と言われようとも私は愛する妻と別れるつもりはありません。それをご承知おきください」
無謀にも反抗してみせるダリウス。
父と息子は膠着状態が続く。
ダリウスの妻となったはずのキャロラインも、あくまでも客人としての扱い。晩餐の席にも呼ばれることはなく、客間での孤食を余儀なくされる日々が続く。
次第に心が疲弊するキャロライン。
「それでもダリウス様といられるのなら……それだけで幸せなはずなのに……」
それでも健気な妻キャロラインは、決して夫ダリウスには不満を零さない。さらに優しい彼女は、自分のせいで争う父と息子の姿に居た堪れず、心を痛める。
人知れず、涙を零す。
貴族が貴族たる時代。だからこそ、身分の格差は埋まらない。
名家の嫡子と孤児の歌姫とでは、どう足掻いても釣り合わない。同じ舞台には立てない。それぐらいは容易に察しがつくが、深い恋情に囚われる若い2人には、この先に待ち受ける厳しさよりも、今この時を「共にいることが大事」との想いが大きかった。
若さと初恋のゆえの愚行。
当然、認められることのないダリウスとキャロライン夫妻。泣く泣く別れを余儀なくされる。
惚れた腫れたで世の中を渡って行けるに越したことはない。現実はダリウスとキャロライン夫妻が想う以上に厳しい。
◇
一見、優雅に見える煌びやかな貴族社会。
だが、現実は違う。
憧れの世界とはいえ辛辣な世界。明と暗が入り乱れ、一歩その中へと入れば、権力に浅ましい者達の足の引っ張りあい。不動の地位と権力を盾に、上手く立ち回れる者だけが優雅に渡り歩くことが出来る。
これまでキャロラインが持て囃されてきたのは、「類い稀な美貌」と辺境伯お抱えの「稀代の歌姫」だからこそ。
実際のところは人柄云々よりは、身分がものを言う貴族社会。
卑しい生まれの者は貴族の愛妾にはなれても正妻にはなれない。名家になればなるほど、正妻に求められるのは確かな血統と品位と知性。孤児の出のキャロラインには到底無理な話。
美しい歌姫キャロラインに密かに愛妾の取り引き持ち掛ける不埒な輩はいても、婚姻を申し込む者はいない。心から求めてくれる誠実な者もいない。
だが、グラント公爵家の嫡子ダリウスだけが不埒な輩とは違い、心から歌姫キャロラインを求め、真の愛情を捧げる。
「このような私を心よりを求めてくれたのは、後にも先にもダリウス様だけです」
そう告げた歌姫キャロライン。それは嬉しい真実。だから、自然と心はダリウスへと向けられ、深く傾倒する。
案外、歌姫キャロラインにも初めて訪れた真の恋かもしれない。
◇
現実は無情。
元が孤児のキャロラインでは、グラント公爵家の奥方として歓迎されることはない。それを当代グラント公爵夫人ハリエッタからハッキリと告げられるキャロライン。
グラント公爵夫人ハリエッタの書斎にて、歓迎を受けるどころか苦言を呈されている。
「キャロライン嬢……ダリウスの側から離れて欲しいの。あの子の為と旦那様の為にも貴女には此処にいてもらっては困るのよ」
躊躇いもなく、目の前で不安気な様子のキャロラインへと通告するグラント公爵夫人ハリエッタ。
哀しいかな。
既に二人が別れる道は決まってしまっていたのかもしれない。
一方の嫡子ダリウスも父ダグラスから叱責を受けている。
「若いからこその気の迷いだ。今回だけは赦してやる。目を覚ませ、ダリウス。おまえには名家に生まれた者としての義務と責務がある。卑しい出の歌姫とのまやかしの恋に現つを抜かす暇があるなら、グラント公爵家の嫡子としての己の技量をより磨け」
当代グラント公爵ダグラスほどの権力者なら、歌姫キャロラインの身元ぐらいは当に調べがついている。
「父上に何と言われようとも私は愛する妻と別れるつもりはありません。それをご承知おきください」
無謀にも反抗してみせるダリウス。
父と息子は膠着状態が続く。
ダリウスの妻となったはずのキャロラインも、あくまでも客人としての扱い。晩餐の席にも呼ばれることはなく、客間での孤食を余儀なくされる日々が続く。
次第に心が疲弊するキャロライン。
「それでもダリウス様といられるのなら……それだけで幸せなはずなのに……」
それでも健気な妻キャロラインは、決して夫ダリウスには不満を零さない。さらに優しい彼女は、自分のせいで争う父と息子の姿に居た堪れず、心を痛める。
人知れず、涙を零す。
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