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常春の国 篇

離れの宮・一の后と懐刀と二の后・前

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双翼そうよくのリョクにより、無惨むざんにも手首をり落とされ、常春とこはるの王からはかえりみられることもなく、それにもかかわらず、いちきさきの心は、哀しみよりも怒りが湧く。

さすがは、気位の高いいちきさき

このおなごには、超絶ちょうぜつした美しさと魔力をほこ常春とこはるの王の元から去る事は考えられず、理不尽りふじんに扱われる事に憤慨ふんがいすら覚える始末しまつ


いちきさきには、初めてとぎに召された事が、昨日さくじつの事のように思い出され、常春とこはるの王から穿うがたれた魔羅まらの刺激と快楽は、いちきさきの身も心もとろけさす程に、今でもあらぬところを熱くさせる。

ゆえに、一度でも常春とこはるの王のとぎたまわった者は、最早もはやその快楽からはのはれらない。

「いつかはー」と云う想いが頭をかすめ、〈はなれのみや〉からの退宮たいぐうはあり得ない。

それに加え、〈はなれのみや〉のきさきとしての立場にいれば、喰うには困らず、衣食住いしょくじゅうは保証され、とぎの為に美しく着飾ることも許される。

いちきさきも例に漏れず、常春とこはるの王の訪れを待ちびながら、常に美しさに磨きを掛けている。

更に、入宮にゅうぐうさいには、全てのきさきらのめたるところ剃毛ていもうされ、王の魔羅まらを受け入れ易く処理される。ーしかし、そうした努力もむなしく、常春とこはるの王からとぎされたのはただの一度。

「……ああっ、わらわのあらぬところは、王の魔羅まらを欲しては欲情に熱くなるー……ああっ、王よ……!  わらわを荒ぶる魔羅まらで激しく、激しく突き上げて欲しい……! あっ、あっ、いくっ、いく……あっ、あああっ……!」

常春とこはるの王と目合まぐわう己れを想い、いちきさきの寝所からは、夜毎に自慰じいふけおなごあえぎ声が響く。

淫欲いんよくに支配されるいちきさきは、卑猥ひわいがたを手に、剃毛ていもうされた蜜壺みつつぼへと差し入れ、ぐちゅりぐちゅりと幾度も挿入を繰り返す。

ついで豊かな乳房ちぶさは、己れの片方の手でみしだき、愛撫あいぶし、常春とこはるの王を想い自慰じいふけっては、恍惚こうこつとする。

天蓋てんがいまくが閉じられた薄暗い寝台の中、ぬちゅぬちゅと自慰じいの音を響かせ、「あああっ……!」とついぞ果てるいちきさき

一人寂ひとりさみしく、自慰じいふけあわれなきさき

日々、全ての寵愛ちょうあいを一身に受ける冬子とは、天と地ほどの差。常春とこはるの王の冬子への寵愛ちょうあいは絶大。


そしていちきさきには、これから悲劇が待ち受ける。

もはや処罰しょばつとき

しばり上げたいちきさきを軽々とかつ双翼そうよくのリョク。めた相貌そうぼうには、にやりと黒い笑みが浮かぶ。

「……なぁ、ハル。けがらわしいこのおなごをあっさりとるよりはー……どうせなら、きさきの本気を見せてもらおうよ!」

「おまえの性格なら、そう来ると思っていたよ、リョク。きさきが憎いおなごを前にして、どう動くかー……それを見定めるのも一興いっきょうわれ双翼そうよくに願うなら、それなりの本気を見せてもらおうかー」

片割かたわれのリョクの提案をいさめるどころか同調するハル。

元は非情な常春とこはるの王から生み出された美しい“懐刀ふところがたな”の双翼そいよくのハルとリョク。主君しゅくんの気質そのままを受け継ぎ、無慈悲むじひそのもの。

人をあやめる事すら、残酷ざんこくなまでにたのしげに動く。それが常春とこはるの王の“懐刀ふところがたな”。

そのからわら、骨がきしむほどに縛り上げられたいちきさきは、苦悶くもんの表情を浮かべながらも、異世界の姫への憎悪を微塵みじんも隠そうとはしない。

当然ながら双翼そうよくのハルとリョクは、常春とこはるの王の大切な異世界の姫に、あだなす者全ては排除はいじょする。敵意をいだく者にも容赦はしない。その全てに、相応そうおうむくいを受けさせる。

いちきさきに憎しみをいだきさきにも、そうした報復ほうふくの機会があっても良いと考える双翼そうよくの二人。

そして双翼そうよくのハルとリョクは、迷うことなくきさきの寝所へと降り立つ。

そうした二人を前に、まるで待ち構えていたかのように、静かにたたずきさき。突然の訪問者二人にも驚くことなく、さらりと告げる。

「まぁ! わたくしへのご褒美ほうびですか! ふふっ、嬉しいことー……!」

満面の笑みで、嬉々ききとして告げるきさき

その美しい手には、およそ不似合ふにあいな猛毒もうどくとおぼしき小瓶こびんたずさえ、盲目もうもくの瞳で真っ向から二人を見遣みやる。

「ふふっ、やはりねー……素晴らしいよ、きさき……!」

双翼そうよくのリョクは「実に愉快ゆかいー!」とばかりに告げる。

「……きさき、おまえは最高だよ! あーっはっはっはっ! ああっ、愉快ゆかい……実に愉快ゆかいだよ!」

おもむろに手をたたき、笑い転げる双翼そうよくのリョク。やはりいさめるハルがいる。










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