96 / 111
春冬の中位国 篇
極冬王の無慈悲な枷と異世界の姫の想い
しおりを挟む
あの刻。
自らの死を選ぶ事で、氷華の種の毒素から逃れた冬子。
冬子にはわかっていた。
極冬王が冬子の心の臓に植えた氷華の種。貴重な種。
代々の王に、生涯にたった一粒だけ存在する特別種。
それは己れの伴侶である王后を繋ぎ留める為の楔。
未来永劫に渡り、王のものとして捉え、極冬の国に留めておく為の所謂ー、“王の無慈悲な枷”。
“無慈悲な枷”と呼ばれる所以。残酷な現実。
一度でも、氷華の種を心の臓へと植えられてしまえば、実際は、極冬王の力でもってしても、二度とは取り除く事は不可能。
たった一粒の特別な氷華の種が、冬子の胸に大輪の美しい氷華の花を咲かせた時には、時すでに遅し。
その頃には、氷華の種は身体中に根を張り、やがては同化し、極冬王の唯一無二の王后として生きる事を強いられる。
それが氷華の姫としての運命。
極冬王の血と魔力によって種の毒素は抑えられた上で、極冬王の魔力を養分として美しく咲き誇る。
元は優しい王で在ったはずに極冬王。
その極冬王に、非情な行為をさせたのは、他でもない冬子自身。
極冬王のものでありながら、他の王(常春の王)を愛した事への罰。
冬子を酷く愛するが故に、悋気に湧く極冬王の最後の非情な手段。
(……王が、後悔をしていた事も知っている。王からの魔力を永劫に注がれ続けなければ、もはや生きられない事もー……愛するソウの元へは、二度とは帰れない事も知っている……だから、全てのしがらみを断ち切って、終わらせる事でしか自由にはなれない……なれないのよ、ソウ……赦してー……)
全てを悟る冬子。
死して常春の王の元へと帰る事でしか、叶わない事もある。
(……赦して、ソウ……赦して、王……)
冬子の閉ざされた黒曜石の瞳からは、美しい涙が零れ落ちる。
長い長い眠りの中。
ずっと悲しい夢を見ていた冬子。
そしてー……。
次に目醒めた時には、全ての哀しい過去も記憶も忘れ去り、真っさらな冬子へと生まれ変わる。
一度は果てた儚い生命。
最早、何も覚えていない真っさらな冬子は知らない。
あの時に、潰えた冬子の生命の燈を再び灯し、ずっと見守り続けていたのは、他でもない両国の王らだった事などは知る由もない。
ーただ、今が幸せであれば、それで良い。
自らの死を選ぶ事で、氷華の種の毒素から逃れた冬子。
冬子にはわかっていた。
極冬王が冬子の心の臓に植えた氷華の種。貴重な種。
代々の王に、生涯にたった一粒だけ存在する特別種。
それは己れの伴侶である王后を繋ぎ留める為の楔。
未来永劫に渡り、王のものとして捉え、極冬の国に留めておく為の所謂ー、“王の無慈悲な枷”。
“無慈悲な枷”と呼ばれる所以。残酷な現実。
一度でも、氷華の種を心の臓へと植えられてしまえば、実際は、極冬王の力でもってしても、二度とは取り除く事は不可能。
たった一粒の特別な氷華の種が、冬子の胸に大輪の美しい氷華の花を咲かせた時には、時すでに遅し。
その頃には、氷華の種は身体中に根を張り、やがては同化し、極冬王の唯一無二の王后として生きる事を強いられる。
それが氷華の姫としての運命。
極冬王の血と魔力によって種の毒素は抑えられた上で、極冬王の魔力を養分として美しく咲き誇る。
元は優しい王で在ったはずに極冬王。
その極冬王に、非情な行為をさせたのは、他でもない冬子自身。
極冬王のものでありながら、他の王(常春の王)を愛した事への罰。
冬子を酷く愛するが故に、悋気に湧く極冬王の最後の非情な手段。
(……王が、後悔をしていた事も知っている。王からの魔力を永劫に注がれ続けなければ、もはや生きられない事もー……愛するソウの元へは、二度とは帰れない事も知っている……だから、全てのしがらみを断ち切って、終わらせる事でしか自由にはなれない……なれないのよ、ソウ……赦してー……)
全てを悟る冬子。
死して常春の王の元へと帰る事でしか、叶わない事もある。
(……赦して、ソウ……赦して、王……)
冬子の閉ざされた黒曜石の瞳からは、美しい涙が零れ落ちる。
長い長い眠りの中。
ずっと悲しい夢を見ていた冬子。
そしてー……。
次に目醒めた時には、全ての哀しい過去も記憶も忘れ去り、真っさらな冬子へと生まれ変わる。
一度は果てた儚い生命。
最早、何も覚えていない真っさらな冬子は知らない。
あの時に、潰えた冬子の生命の燈を再び灯し、ずっと見守り続けていたのは、他でもない両国の王らだった事などは知る由もない。
ーただ、今が幸せであれば、それで良い。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
323
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる