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謁見の間に通され、皇帝の前に跪く。
顔を上げる許可が下り、初めてライスドリュー帝国の皇帝アレクサンドロスの顔を見た。
「半年で筋肉が落ちたのか?線が細くなったな」
玉座に座る男は俺を見て言う。
目の前の男の目は覚えている。奈落の底に落ちたあの瞬間俺たちを見ていた赤い瞳。あの時の崖の上に立っていた男はライスドリュー帝国の皇帝だった。
「半年間。ベッドの上で横になってるだけだったので筋肉は無くなりました。今は少しの距離を歩くだけで息が切れます」
「今の姿だとヒュペリオンの英雄とは思えないな」
「私を…ご存知なのですか?」
「…なぜ皇帝自ら、本陣ではない部隊の殲滅に動いたと思う?ヒュペリオンとの戦いで一番苦戦したのは第5部隊だ。お前たち…いやお前がいなければヒュペリオンとの戦いなど1週間あれば終わらせていた」
俺を上から見下ろす皇帝は楽しそうに話す。
「潰したと思っても突拍子もない作戦で巻き返してくるヒュペリオンが楽しくてな。誰が作戦を立ててるのかと思えばただの部隊副隊長だと言うではないか?どうしてもヒュペリオンの英雄を…お前を見たかったのだ」
英雄ジークフリードを見たかったと言う皇帝。だが今の俺は何もできないただの非力な男だ。
「期待に沿えず申し訳ありません。今は剣さえ持ち上げられないでしょう」
自分の体は戦場を走り回っていたあの頃とは全然違うものになった。あの頃の様に戻れるか分からない。
うつむき顔を床に向ける。皇帝は立ち上がり、俺の近くまで降りてきた。そして、俺の目の前に立つ。
「奈落に落ちる時お前は何かしたのか?あれだけの高さから落ちたんだ。第5部隊の連中は跡形もなく潰れているだろうと予想した。しかし死んではいたが皆の遺体は形が残っていたしお前に関しては息もあった。何をしたのか気になっていたんだ」
あの時は必死だったが何をしたのかは覚えている。なんとかして皆を助けたかった。最後まで諦めたくなかった。
「風魔法で落ちるスピードを落としました。第5部隊全員を守るために広範囲の風魔法を継続して使ったので最後まで魔力が持たず途中で切れてしまいましたが…」
「なるほど…最後まで足掻いたというわけか。お前は本当に面白いな。…してお前はここで何を望む?」
俺の顔を掴み目線を合わせてきた皇帝は問いかけてくる。
「ヒュペリオンは…どうなったのですか?」
絶対に聞きたかった事。
彼らは無事なのか?
ヒュペリオンの団員達は…民は…どうなっているのか…
「…ヒュペリオンは私が殲滅した」
「…殲滅…殲滅ですか」
体が震えた。目の前が真っ黒に染まった。
「先ほど言っただろう。お前のいないヒュペリオン軍など1週間で潰せると」
「あ…あぁ……俺のせいで…あぁぁぁぁ………」
俺は守れなかったのだ。自分の国を。民を。仲間たちを…。顔を両手で覆うと声を上げる。
勝てないにしてもどうにか出来るはずだった。
もっと早く罠だと気づいていたら。
違う作戦を先に立てていれば。
今更後悔しても遅い。
でも後悔せずにはいられなかった。
床に頭を垂れる。
これから俺はどうすればいいのか。
なぜ生き残ってしまったのだろう。
あの時、仲間たちと一緒に旅立っていれば自分の不甲斐なさを、現実を知らずにいられたのに。
涙が零れ落ちた。
「ヒュペリオンはライスドリューの属国となった。王は幽閉。ヒュペリオンの統治を今は王太子が行っている」
頭の上から聞こえてきた言葉が理解できず顔を上げると皇帝がニヤリと笑った。
「ヒュペリオンはこれから我々の監視のもとで統治していく。そしてお前はヒュペリオンには戻さない。お前がいては反乱を起こされる可能性があるからな」
「…王太子殿下はご無事なのですか?」
「最小限の犠牲で終わらせたつもりだ。一般人にも手を出してないしヒュペリオン王は降伏を選択した。お前がいなければもっと早く終わらせるつもりだったんだ」
力が抜けた。
ヒュペリオンは残っている。
守りたかった場所が…人々が…
「もう一度問おう。お前はこれから何をする」
俺を見下ろす皇帝が真っ直ぐ俺に向かって問いかけてくる。俺に何がしたいのかと…
顔を上げる許可が下り、初めてライスドリュー帝国の皇帝アレクサンドロスの顔を見た。
「半年で筋肉が落ちたのか?線が細くなったな」
玉座に座る男は俺を見て言う。
目の前の男の目は覚えている。奈落の底に落ちたあの瞬間俺たちを見ていた赤い瞳。あの時の崖の上に立っていた男はライスドリュー帝国の皇帝だった。
「半年間。ベッドの上で横になってるだけだったので筋肉は無くなりました。今は少しの距離を歩くだけで息が切れます」
「今の姿だとヒュペリオンの英雄とは思えないな」
「私を…ご存知なのですか?」
「…なぜ皇帝自ら、本陣ではない部隊の殲滅に動いたと思う?ヒュペリオンとの戦いで一番苦戦したのは第5部隊だ。お前たち…いやお前がいなければヒュペリオンとの戦いなど1週間あれば終わらせていた」
俺を上から見下ろす皇帝は楽しそうに話す。
「潰したと思っても突拍子もない作戦で巻き返してくるヒュペリオンが楽しくてな。誰が作戦を立ててるのかと思えばただの部隊副隊長だと言うではないか?どうしてもヒュペリオンの英雄を…お前を見たかったのだ」
英雄ジークフリードを見たかったと言う皇帝。だが今の俺は何もできないただの非力な男だ。
「期待に沿えず申し訳ありません。今は剣さえ持ち上げられないでしょう」
自分の体は戦場を走り回っていたあの頃とは全然違うものになった。あの頃の様に戻れるか分からない。
うつむき顔を床に向ける。皇帝は立ち上がり、俺の近くまで降りてきた。そして、俺の目の前に立つ。
「奈落に落ちる時お前は何かしたのか?あれだけの高さから落ちたんだ。第5部隊の連中は跡形もなく潰れているだろうと予想した。しかし死んではいたが皆の遺体は形が残っていたしお前に関しては息もあった。何をしたのか気になっていたんだ」
あの時は必死だったが何をしたのかは覚えている。なんとかして皆を助けたかった。最後まで諦めたくなかった。
「風魔法で落ちるスピードを落としました。第5部隊全員を守るために広範囲の風魔法を継続して使ったので最後まで魔力が持たず途中で切れてしまいましたが…」
「なるほど…最後まで足掻いたというわけか。お前は本当に面白いな。…してお前はここで何を望む?」
俺の顔を掴み目線を合わせてきた皇帝は問いかけてくる。
「ヒュペリオンは…どうなったのですか?」
絶対に聞きたかった事。
彼らは無事なのか?
ヒュペリオンの団員達は…民は…どうなっているのか…
「…ヒュペリオンは私が殲滅した」
「…殲滅…殲滅ですか」
体が震えた。目の前が真っ黒に染まった。
「先ほど言っただろう。お前のいないヒュペリオン軍など1週間で潰せると」
「あ…あぁ……俺のせいで…あぁぁぁぁ………」
俺は守れなかったのだ。自分の国を。民を。仲間たちを…。顔を両手で覆うと声を上げる。
勝てないにしてもどうにか出来るはずだった。
もっと早く罠だと気づいていたら。
違う作戦を先に立てていれば。
今更後悔しても遅い。
でも後悔せずにはいられなかった。
床に頭を垂れる。
これから俺はどうすればいいのか。
なぜ生き残ってしまったのだろう。
あの時、仲間たちと一緒に旅立っていれば自分の不甲斐なさを、現実を知らずにいられたのに。
涙が零れ落ちた。
「ヒュペリオンはライスドリューの属国となった。王は幽閉。ヒュペリオンの統治を今は王太子が行っている」
頭の上から聞こえてきた言葉が理解できず顔を上げると皇帝がニヤリと笑った。
「ヒュペリオンはこれから我々の監視のもとで統治していく。そしてお前はヒュペリオンには戻さない。お前がいては反乱を起こされる可能性があるからな」
「…王太子殿下はご無事なのですか?」
「最小限の犠牲で終わらせたつもりだ。一般人にも手を出してないしヒュペリオン王は降伏を選択した。お前がいなければもっと早く終わらせるつもりだったんだ」
力が抜けた。
ヒュペリオンは残っている。
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「もう一度問おう。お前はこれから何をする」
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