英雄様は愛されたい

結人

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俺の両腕にはまだ魔導具がついている。

行動制限と魔法の制限がかかった魔導具があの日からついているが、それ以外の制限は無い。城の外には出られないが城の中なら自由に動き回れる。監視もない。体力の回復のためにも少しずつ運動量を増やしていこうと言われ、俺は毎朝、昼、夕の1時間ほど散歩がてらに城の中を探索している。



謁見室で皇帝から何がしたいかと問われ俺はすぐには返事ができなかった。
伯爵家の四男だった俺が生きていくには文官になるか騎士になるかしかなかった。騎士になり戦い方を学び、国のために人々の為になるならと出来ることを精一杯続けてきた。
それはやりたいから続けてきたわけではなかった。
作戦を考えるのは楽しかったが生き残るため仲間を守るため家族友人たちを守るためにしてきたこと。

俺は本当は何がしたいのだろうか…。




散歩から戻ると部屋にはロキがいた。
奈落から助け出された後、ずっと俺の治療にあたってくれた少年ロキは今でも俺の様子を見に顔を出してくれる。

「城内を歩いてきたんですか?」
「あぁ、1時間ほど歩き回っても息が切れなくなった。少しずつ体力が戻ってきてる。走り込みをしてもいいかロキに確認しようと思っていたんだ」

俺の脈を取り体調確認していくロキに聞くと呆れた顔をされ、ため息をつかれた。どうやら時期尚早だったらしい。

「いや…まぁ、無理をしなければ構いません。ただ負荷のかかる事はまだしないでください。あなたは死にかけたんです。自覚してくださいね!」

「ありがとう!1時間では回れる範囲が限られていたんだ。食事が届く時間やロキが来ることを考えると時間がなくてな!走って回れるとなればもう少し範囲を広げられる!」

ライスドリュー城内はとても広く迷路のようになっていて子供の頃に戻ったようで見て回るだけで楽しかった。
庭園の門の奥まで進みたかったが時間が足りず何度も引き返していたが今度からは奥まで探索ができそうだ。

「ロキは若いのに手際がいいよな?いつからこの仕事で働いているんだ?」

採血後ロキがカルテを記入している姿を見てあまりに手慣れた様子にふと疑問が浮かんだ。15、6歳に見えるロキは手慣れた様子で俺の処置をしてくれている。何十年とこなしてきたかのようなベテランの動きだ。ずっと違和感を感じていた。

「…私の年齢は100歳を超えています。正確に言うと134歳です。もういい加減、自分の歳を数えるのをやめようかと思っていますよ」
「ひゃ…百…歳?」
「エルフの中では生まれたてと言われるくらい若造ですがあなた達人間に比べたら長生きしてますよ?」

エルフ特有の長い耳ではないロキを見ると信じられないがロキがそんな冗談を言うとは思えない。

「私は人間とのハーフなのでエルフ特有の耳はついていません。人間の父が亡くなり1人で彷徨っている所をアレクサンドロス陛下に拾われました。その頃の陛下はまだ皇太子で自分には敵が多いから絶対に裏切らないと誓うなら拾ってやると…」

俺は無意識にロキの耳を凝視していたのだろう。恥ずかしそうに耳を触りながら話してくれた。

「医者だった父の仕事の手伝いを昔からしていたのもあって医療には元々詳しかったので殿下に何がしたいか聞かれ医療を極めたいと答えました。少しでも父との思い出を残しておきたかったので…そして殿下の力になると誓いました」

ロキは俺のほうを見ると優しく微笑む。

「陛下に問われて何がしたいのか…悩んでるんでしょう?ジークは今まで精一杯頑張ってきたんですからゆっくり見つければいいと思いますよ。貴方が嬉しく感じた時、心から望んだ時に自ずとやりたいことは見つけられると思います。ジークが幸せを感じられる何かが見つかることを祈っています」


ロキに握られた両手は温かく、その温かさは心にまで広がった。




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