5 / 21
5
しおりを挟む
夕方の陽が沈む前に俺は城内を走っている。
ロキから許可をもらい、走り込みと称し目的の場所まで向かう。気になっていた場所は綺麗に整えられた庭園の奥にある門だった。塀で囲まれたその場所の奥には大きな木が頭を出していた。
「鍵がかかってたらアウトだな」
まだ塀を飛び越えられるほど身体は戻っていない。
恐る恐る取っ手に手をかけると、扉は思いのほか簡単に開いた。森の中に足を踏み入れると空気が変わった。
ピリピリと肌を突き刺す空気が侵入を拒んでいるのかとも思えたが、その先の好奇心が勝った。
引き寄せられるように進むと生い茂った木々たちが立ちはだかった。枝をかき分けて進んだ先にいたのは大きな竜だった。寝床に丸まって眠っている竜に近づいてみる。
「すごい…初めて見た…。ライスドリューではドラゴンを飼っているのか?」
静かに近づいたつもりだったが、竜は俺の存在に気づき目を開けた。目の前にある大きな赤い瞳が俺を映し出した。
ググ…ゥ゙…
喉を鳴らし俺から目をそらさない竜に、もう一歩近づいてみる。
「お前はここで飼われているのか?俺…はじめて竜を見たんだ。お前…カッコイイな。名前はなんて言うんだ?」
竜が動かないのをいいことに、もう一歩近づき竜の肌を撫でてみる。鱗があり少しザラザラしている。頬擦りすると鱗が冷たくて気持ちいい。
隣に座りもたれかかると竜は尾を巻きつけてきた。
「俺を受け入れてくれるのか?嬉しいなぁ…」
鱗は冷たくて気持ちいいのに鱗がついていない部分は温かい。巻きついた尾が布団代わりになり眠気が襲ってくる。
「お前の布団は最高だな。鱗の枕も尾っぽの布団も寝るには最高級品だ。俺はこの国から出られないらしいからずっとお前と一緒にいるってのもいいかもしれないなぁ…」
ウトウトしていると竜は自分の腹の隙間に俺を移動させ、尾で包みこんでくる。俺の事…子供だと思ってる?でも…とても温かい。抱きしめられるのって嬉しいものだな。
「なぁ、ドラゴン。俺は仲間たちを死なせてしまったんだ。さっさとあきらめていれば彼らは死なずに済んだかもしれない。俺は何を思ってあんなに必死になって戦っていたんだろうな…。俺のしてきたことは無駄だったみたいで…。今のヒュペリオンは…みんな幸せに暮らしてるのかな?」
尾の先が俺の頭に触れる。
頭を撫でられているみたいに。
「慰めてくれてるのか?ありがとう…」
頭に触れる尾を抱きしめる。
夜…目を閉じるといつも死んだ仲間たちが夢に出てきていた。責めてくるわけではないが俺をジッと見てくる仲間たちが怖かった。…だがこの日は誰も出てこない。
ただただ静かに眠ることができた。
その日から俺は夜になるとドラゴンの巣に通った。
昼間はどこかに出かけてるのかドラゴンは巣にいなかった。俺は夕食が終わった後ドラゴンの巣に向かい、ドラゴンの横で眠り、朝食の前に部屋に戻る生活を繰り返す。
「なぁ…お前昼間は何してるんだ?いつ来ても昼間はどこかに出かけてるよな?ライスドリューがドラゴンを保有しているって話は聞いたことがなかったから戦で使われているわけではなさそうだし…。ただのペットには貴重すぎる…。しかもここは人が入ってきてる形跡が無いんだよ。誰かに飼われているなら餌付けされているはず…野生で住み着いているにしては人に慣れているのがおかしいんだよなぁ」
ググぅ…グ…ゥ゙…
喉を鳴らし俺の頬に鼻を擦り寄せてきたドラゴンは早く寝ろと言わんばかりに俺の体に尾を巻きつけ腹の間に移動させた。温かい尾の布団が俺に被さり尾の先が頭を撫でる。
「お前とずっと一緒に暮らせたら…幸せだろうな。毎日、夜に何も考えず何も気にせずにお前の腹の上で寝られたら…幸せだろうな」
目の前にあるドラゴンの尾を抱き、いつものように眠る。
遠い意識の向こうでドラゴンが俺を守るように抱きしめてくれたのが分かった。
ロキから許可をもらい、走り込みと称し目的の場所まで向かう。気になっていた場所は綺麗に整えられた庭園の奥にある門だった。塀で囲まれたその場所の奥には大きな木が頭を出していた。
「鍵がかかってたらアウトだな」
まだ塀を飛び越えられるほど身体は戻っていない。
恐る恐る取っ手に手をかけると、扉は思いのほか簡単に開いた。森の中に足を踏み入れると空気が変わった。
ピリピリと肌を突き刺す空気が侵入を拒んでいるのかとも思えたが、その先の好奇心が勝った。
引き寄せられるように進むと生い茂った木々たちが立ちはだかった。枝をかき分けて進んだ先にいたのは大きな竜だった。寝床に丸まって眠っている竜に近づいてみる。
「すごい…初めて見た…。ライスドリューではドラゴンを飼っているのか?」
静かに近づいたつもりだったが、竜は俺の存在に気づき目を開けた。目の前にある大きな赤い瞳が俺を映し出した。
ググ…ゥ゙…
喉を鳴らし俺から目をそらさない竜に、もう一歩近づいてみる。
「お前はここで飼われているのか?俺…はじめて竜を見たんだ。お前…カッコイイな。名前はなんて言うんだ?」
竜が動かないのをいいことに、もう一歩近づき竜の肌を撫でてみる。鱗があり少しザラザラしている。頬擦りすると鱗が冷たくて気持ちいい。
隣に座りもたれかかると竜は尾を巻きつけてきた。
「俺を受け入れてくれるのか?嬉しいなぁ…」
鱗は冷たくて気持ちいいのに鱗がついていない部分は温かい。巻きついた尾が布団代わりになり眠気が襲ってくる。
「お前の布団は最高だな。鱗の枕も尾っぽの布団も寝るには最高級品だ。俺はこの国から出られないらしいからずっとお前と一緒にいるってのもいいかもしれないなぁ…」
ウトウトしていると竜は自分の腹の隙間に俺を移動させ、尾で包みこんでくる。俺の事…子供だと思ってる?でも…とても温かい。抱きしめられるのって嬉しいものだな。
「なぁ、ドラゴン。俺は仲間たちを死なせてしまったんだ。さっさとあきらめていれば彼らは死なずに済んだかもしれない。俺は何を思ってあんなに必死になって戦っていたんだろうな…。俺のしてきたことは無駄だったみたいで…。今のヒュペリオンは…みんな幸せに暮らしてるのかな?」
尾の先が俺の頭に触れる。
頭を撫でられているみたいに。
「慰めてくれてるのか?ありがとう…」
頭に触れる尾を抱きしめる。
夜…目を閉じるといつも死んだ仲間たちが夢に出てきていた。責めてくるわけではないが俺をジッと見てくる仲間たちが怖かった。…だがこの日は誰も出てこない。
ただただ静かに眠ることができた。
その日から俺は夜になるとドラゴンの巣に通った。
昼間はどこかに出かけてるのかドラゴンは巣にいなかった。俺は夕食が終わった後ドラゴンの巣に向かい、ドラゴンの横で眠り、朝食の前に部屋に戻る生活を繰り返す。
「なぁ…お前昼間は何してるんだ?いつ来ても昼間はどこかに出かけてるよな?ライスドリューがドラゴンを保有しているって話は聞いたことがなかったから戦で使われているわけではなさそうだし…。ただのペットには貴重すぎる…。しかもここは人が入ってきてる形跡が無いんだよ。誰かに飼われているなら餌付けされているはず…野生で住み着いているにしては人に慣れているのがおかしいんだよなぁ」
ググぅ…グ…ゥ゙…
喉を鳴らし俺の頬に鼻を擦り寄せてきたドラゴンは早く寝ろと言わんばかりに俺の体に尾を巻きつけ腹の間に移動させた。温かい尾の布団が俺に被さり尾の先が頭を撫でる。
「お前とずっと一緒に暮らせたら…幸せだろうな。毎日、夜に何も考えず何も気にせずにお前の腹の上で寝られたら…幸せだろうな」
目の前にあるドラゴンの尾を抱き、いつものように眠る。
遠い意識の向こうでドラゴンが俺を守るように抱きしめてくれたのが分かった。
20
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました
ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。
タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。
「大人扱いしていい?」〜純情当主、執務室で策士な従兄の『相性確認』にハメられる〜
中山(ほ)
BL
「ルイン、少し口開けてみて」
仕事終わりの静かな執務室。
差し入れの食事と、ポーションの瓶。
信頼していた従兄のトロンに誘われるまま、
ルインは「大人の相性確認」を始めることになる。
【完結】《BL》溺愛しないで下さい!僕はあなたの弟殿下ではありません!
白雨 音
BL
早くに両親を亡くし、孤児院で育ったテオは、勉強が好きだった為、修道院に入った。
現在二十歳、修道士となり、修道院で静かに暮らしていたが、
ある時、強制的に、第三王子クリストフの影武者にされてしまう。
クリストフは、テオに全てを丸投げし、「世界を見て来る!」と旅に出てしまった。
正体がバレたら、処刑されるかもしれない…必死でクリストフを演じるテオ。
そんなテオに、何かと構って来る、兄殿下の王太子ランベール。
どうやら、兄殿下と弟殿下は、密な関係の様で…??
BL異世界恋愛:短編(全24話) ※魔法要素ありません。※一部18禁(☆印です)
《完結しました》
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
天上の果実
曙なつき
BL
大きな果実の実が頭に当たったことにより、記憶を失った婚約者のルシス。
目を覚ました彼に、私はこう言った。
「愛しい人。あなたと私は愛し合っていました。来年には式を挙げる予定なのですよ」
それは少しの真実と多くの嘘を織り交ぜた言葉だった。
ルシスは私を嫌い、厭うていた。
記憶を無くした少年と、彼を囲いこむ王子の物語です。
※なお、ルシスの兄と弟の物語も併せて掲載します。完結まで予約済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる