英雄様は愛されたい

結人

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夕方の陽が沈む前に俺は城内を走っている。

ロキから許可をもらい、走り込みと称し目的の場所まで向かう。気になっていた場所は綺麗に整えられた庭園の奥にある門だった。塀で囲まれたその場所の奥には大きな木が頭を出していた。

「鍵がかかってたらアウトだな」

まだ塀を飛び越えられるほど身体は戻っていない。
恐る恐る取っ手に手をかけると、扉は思いのほか簡単に開いた。森の中に足を踏み入れると空気が変わった。
ピリピリと肌を突き刺す空気が侵入を拒んでいるのかとも思えたが、その先の好奇心が勝った。

引き寄せられるように進むと生い茂った木々たちが立ちはだかった。枝をかき分けて進んだ先にいたのは大きな竜だった。寝床に丸まって眠っている竜に近づいてみる。

「すごい…初めて見た…。ライスドリューではドラゴンを飼っているのか?」

静かに近づいたつもりだったが、竜は俺の存在に気づき目を開けた。目の前にある大きな赤い瞳が俺を映し出した。

ググ…ゥ゙…

喉を鳴らし俺から目をそらさない竜に、もう一歩近づいてみる。

「お前はここで飼われているのか?俺…はじめて竜を見たんだ。お前…カッコイイな。名前はなんて言うんだ?」

竜が動かないのをいいことに、もう一歩近づき竜の肌を撫でてみる。鱗があり少しザラザラしている。頬擦りすると鱗が冷たくて気持ちいい。
隣に座りもたれかかると竜は尾を巻きつけてきた。

「俺を受け入れてくれるのか?嬉しいなぁ…」

鱗は冷たくて気持ちいいのに鱗がついていない部分は温かい。巻きついた尾が布団代わりになり眠気が襲ってくる。

「お前の布団は最高だな。鱗の枕も尾っぽの布団も寝るには最高級品だ。俺はこの国から出られないらしいからずっとお前と一緒にいるってのもいいかもしれないなぁ…」

ウトウトしていると竜は自分の腹の隙間に俺を移動させ、尾で包みこんでくる。俺の事…子供だと思ってる?でも…とても温かい。抱きしめられるのって嬉しいものだな。

「なぁ、ドラゴン。俺は仲間たちを死なせてしまったんだ。さっさとあきらめていれば彼らは死なずに済んだかもしれない。俺は何を思ってあんなに必死になって戦っていたんだろうな…。俺のしてきたことは無駄だったみたいで…。今のヒュペリオンは…みんな幸せに暮らしてるのかな?」

尾の先が俺の頭に触れる。
頭を撫でられているみたいに。

「慰めてくれてるのか?ありがとう…」

頭に触れる尾を抱きしめる。
夜…目を閉じるといつも死んだ仲間たちが夢に出てきていた。責めてくるわけではないが俺をジッと見てくる仲間たちが怖かった。…だがこの日は誰も出てこない。

ただただ静かに眠ることができた。




その日から俺は夜になるとドラゴンの巣に通った。

昼間はどこかに出かけてるのかドラゴンは巣にいなかった。俺は夕食が終わった後ドラゴンの巣に向かい、ドラゴンの横で眠り、朝食の前に部屋に戻る生活を繰り返す。

「なぁ…お前昼間は何してるんだ?いつ来ても昼間はどこかに出かけてるよな?ライスドリューがドラゴンを保有しているって話は聞いたことがなかったから戦で使われているわけではなさそうだし…。ただのペットには貴重すぎる…。しかもここは人が入ってきてる形跡が無いんだよ。誰かに飼われているなら餌付けされているはず…野生で住み着いているにしては人に慣れているのがおかしいんだよなぁ」

ググぅ…グ…ゥ゙…

喉を鳴らし俺の頬に鼻を擦り寄せてきたドラゴンは早く寝ろと言わんばかりに俺の体に尾を巻きつけ腹の間に移動させた。温かい尾の布団が俺に被さり尾の先が頭を撫でる。

「お前とずっと一緒に暮らせたら…幸せだろうな。毎日、夜に何も考えず何も気にせずにお前の腹の上で寝られたら…幸せだろうな」

目の前にあるドラゴンの尾を抱き、いつものように眠る。
遠い意識の向こうでドラゴンが俺を守るように抱きしめてくれたのが分かった。




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